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「教育は、学習者のために行うもの」 本質を捉えた事業で人の可能性を広げ、より良い社会の実現を目指すスタディプラス 廣瀬 高志氏

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「教育とは、学習者のために行うもの」
「教育は、一人ひとりの学習者の学習が達成されるための手段」

こうした教育の本質を捉えた思想を軸として、学習管理プラットフォーム「Studyplus」を提供しているスタディプラス株式会社。特に10代の学生をターゲットとした教育事業はビジネスモデル構築の難しさがあることから、理想やあるべき姿を常に見据えて、その軸からブレることなく事業を行うことはかなり険しい道となる。しかし、同社は売り上げがほとんど出ていなかった時期も含めて10年以上にわたり、自社の想いと考え方を見失うことなく事業を続け、現在では累計ユーザー数が800万人を超えるサービスへと成長している。

今回、スタディプラス社が事業にかける想いと売り上げが立たなかった苦しい時期の乗り越え方について詳しく話を伺うべく、代表取締役の廣瀬 高志(ひろせ・たかし)氏を取材した。

スタディプラスが展開する二つのビジネスモデルとは

まずは改めて、貴社の事業内容とビジネスモデルについて教えてください。

弊社は高校生を中心とした学習者向けの学習管理プラットフォーム「Studyplus」と、塾や学校の先生が生徒の学習状況を把握し、オンラインで学習支援することができるプラットフォーム「Studyplus for School」を開発・運営しています。

Studyplusには学習者が自ら勉強内容を記録する機能のほか、学習時間をグラフで確認できる機能や参考書などの使用しているあらゆる教材の管理機能、SNS機能をつけています。今では日本の大学受験生の二人に一人が利用しており、累計会員数は800万人を超えました。本サービスは、学習者向けに一部機能を有料で提供していますが、基本的には無料で使っていただくことができます。その代わり、Studyplusを「受験生」という特徴的なターゲット層が集まる広告メディアとして大学や塾・予備校に活用いただき、マーケティングソリューションを提供することで、マネタイズを行っています。

credit: スタディプラス株式会社

一方、Studyplus for Schoolは、塾や予備校、学校などの教育機関向けSaaSです。生徒がStudyplusでつけた学習記録を先生が閲覧することができ、「いいね」やコメントのオンラインコミュニケーション機能を通じて学習支援を行うことができます。モチベーションの向上や成績向上につなげるツールとして、全国で1,700校以上の教育機関に導入いただいており、特に2022年度からは大手予備校の河合塾でも活用されています。

credit: スタディプラス株式会社

現在の教育環境の特徴についても、教えていただけますか?

学習者を取り巻く環境で言えば、10代の中高生は十数年前と比べ、ほとんどの方がスマートフォンを持つようになり、学習アプリを使って勉強することが当たり前になりました。また、塾や予備校などでは映像授業が大きく普及し、デジタル教材を使う事例もかなり増えています。そして、学校では各校で取り組み内容にばらつきがあるものの、全体的な流れとしてはデジタルデバイスを導入し、学習で活用していくことが推奨されています。教育業界において、デジタル化が少しずつ進みつつあると言えると思います。

そうした環境を踏まえ、Studyplusが多くのユーザーに支持されているポイントはどこにあると思いますか?

プロダクトのコンセプトが他社サービスとは大きく異なる点がポイントであるように思います。そもそも、他社ではデジタル教材などの「コンテンツ」を中心軸に据えて展開しているところが多く、弊社のように「学習管理プラットフォーム」として、学習記録をつけられるサービスを提供している企業はほとんどいないんです。どの教材を何時間、何ページ勉強したのかという記録をつけ、それをSNS機能で勉強仲間とシェアします。Studyplusが実現している、お互いにモチベーションを高めあうことのできるこういった仕組みは、類似サービスがほぼないと思っています。

競合他社がほとんどいないのは、どうしてでしょう?

やはり弊社が学習管理プラットフォームを最も早く実現し、サービスを拡大してきたという、先行者優位性の部分が大きいのではないでしょうか。多くの方に「学習管理といえばStudyplus」と第一想起していただけているのは、この分野で事業を行う上で大きなメリットだと思います。

「教育とは、学習者のために行うもの」という本質に気づいたきっかけ

教育は効果が出てくるまでに長い時間のかかるものだからこそ、教育に関わる事業を行う上では、事業への想いが大切になってくるように思います。そのあたりについても、日ごろの考えなどを教えていただけますか。

私たちが事業を行う上でベースとしているのは、「教育とは、学習者のために行うものである」という考え方です。教育は、一人ひとりの学習が達成されるために行われるべきで、決して教育を施す側の自己満足で終わっていいものではありません。いくらすばらしい授業を行ったとしても、その授業を聞いていた生徒が誰一人として学ぶものがなかったのであれば意味がない。教育はあくまでも、学習者が学ぶべきことを学び、一人ひとりの学習が達成されるための手段なのです。

こうした考え方や想いは、創業当時から変わらずに弊社の軸として抱いているもので、サービスやシステムを構築する上でも大切にしています。

なぜ、そのような考え方を持つに至ったのですか?

私が高校や予備校で感じた違和感が大きな原体験となっています。高校生のとき、授業中に自習をしてはいけないと言われていたのですが、私としてはそれはとても変なことであるように感じたんです。授業を受けるという手段と、科目を学ぶという目的が逆転していないか。その科目で学ぶべきことを自分で身につけられるのであれば、それでいいのではないかと思いました。

また、浪人生として通っていた予備校では当時、大教室で一斉に一方通行の授業を行うことが普通でした。しかし、予備校が生徒たちに提供したい価値は、大学への合格のはずです。志望校に受からせるためには、ただ授業を提供するだけでなく、生徒のメンタルケアなど、ほかにもできるサポートがあるように感じました。

そういった経験がもととなり、弊社の事業運営の根幹をなす考え方が出来上がったのだと思います。

普段から自分に与えられている教育の仕組みに対して違和感を抱ける10代は、とても少ないように感じるのですが、廣瀬さんはどうして塾や学校の教育が主従逆転していると思えたのでしょうか。

性格的なものかもしれません。私は「そもそも」という言葉が口癖で、昔から手段と目的、物事の本質、物事の本来あるべき姿を考えることが好きだったんです。

そうした10代の時期に感じた違和感を原体験として、Studyplusのもととなるビジネスアイデアを形づくっていったのですね。

そうですね。大学3年生の終わりごろ、2010年の2月に大学生向けのビジネスコンテストに参加し、Studyplusの原案となるアイデアでピッチを行いました。そこで優勝できたことが起業につながっています。気づけば10年以上、教育をテーマとした事業を追求していることになりますね。

「教育は、学習者のために行うものである」という理想の姿に対して、現在の教育業界はどのような位置づけにあると思いますか?

昨今は教育機関における「先生」の役割が、「ティーチング」から「コーチング」、指導から支援という形へと変わってきているため、私たちが理想とする教育のあり方に少しずつ近づいてきていると感じます。

とはいえ、日常生活の中ではSNSなどを使ったオンラインコミュニケーションを当たり前のように使っているのに対し、教育においては、デジタルツールを活用したコミュニケーションがあまり行われていない現状があります。オンラインコミュニケーションを活用して教育者が日頃から学習者への励ましを行い、勉強へのモチベーションを維持・向上することができれば、勉強時間も増え、自然と成績も上がっていくはずです。

教育において、コミュニケーションは大きな役割を果たしており、実は教育の本質のひとつであるように思います。当社としては、そこをサポートするサービスを手がけることで、学習者が自分の可能性を広げ、より豊かに楽しく生きられる世界をつくっていきたいと考えています。

「コミュニケーションは教育の本質のひとつである」と気がついたきっかけはあるのでしょうか。

これに関しては、実はStudyplusをつくってから気づいたことなんです。Studyplusの前身となるサービスをリリースした際、ユーザーからのフィードバックとして「SNS的な要素が欲しい」「勉強している他の人たちと交流を持ちたい」という声をいただき、それが教育におけるコミュニケーションの重要さに気づくきっかけとなりました。

創業から6年間、売り上げがほとんど出ない時期を越えて

教育事業は社会的な意義は大きいものの、マネタイズが難しいというジレンマがあるように思います。貴社は創業から今日まで、マネタイズは順調に行えましたか?

プロダクトのマネタイズは、私たちもかなり苦労した部分です。創業から約6年間は売り上げがほとんど出ていませんでした。Studyplusは学習者をターゲットとしたプロダクトですから、当然ユーザー層が限られてきますし、ユーザー数もじわじわと地道な伸ばし方をしていくしかありません。ユーザー数が100万人を超える2016年までは、教育機関にいくら広告出稿の営業をしに行っても、なかなか枠が売れなくて大変でしたね。

売り上げが立たない6年間は、気持ち的にもかなり厳しいものがあったのではないでしょうか。

そうですね。出口のないトンネルを走っているような感覚でした。Studyplusをリリースした直後から、「Studyplusのおかげで勉強が続くようになりました」「成績が伸びました」といった感謝の声を多数いただくことはできており、このサービスが世の中に必要なものであることは間違いないと確信していました。でも、それを本当に事業化できるかという部分に関しては、なかなか不安が消えなくて。「ひょっとしたら、これは自分の趣味なのでは? ただのボランティアなのではないか?」と、事業の成立可能性への恐怖と闘いながら、日々サービスと向き合う時期もありました。

そうした期間をどのように乗り越えていったのでしょう?

とにかく良いプロダクトをつくる。この一点に集中しました。この時期は投資家もプロダクトやポジショニングへの評価から、売り上げが出ずともあたたかく見守り続けてくださいました。そのような投資家の存在もとてもありがたかったですね。

苦しい期間を経て、2016年以降は大学を中心に広告出稿を希望するお客様が増え、ビジネスが順調に回り始めました。そのときの喜びは、やはり格別なものがあり、教育の本質を見据えてブレずに事業を続けてきて良かったと心から思うことができました。

新卒採用もスタート。教育の本質を捉えた事業で社会を前進させたい

ここからは、貴社の社風や資金調達などについて、少しお話を伺いたいと思います。まずは社風について教えていただけますか?

ユーザーのために手がけたい取り組みを、各事業部でボトムアップで手がけていく雰囲気が強い気がします。学習者ファーストの意識は、全社で共有されているものです。

貴社では、どのような方が活躍されているのでしょうか。

自立的に考え、行動し、リーダーシップを発揮できるメンバーが活躍している印象です。今後、中途採用で入社される方に対しても、そうした自立性や行動力、常識を疑って最適解を探す思考力などを求めています。

また、実は2023年から、これまでは体制が整わなくて実施できていなかった新卒採用をスタートさせました。新卒入社される方は、将来弊社の幹部となっていただく可能性もあります。弊社の中でさまざまなことを吸収し、活躍していただけたら嬉しく思います。

資金調達においては、これまで投資家からどのような評価やフィードバックがありましたか?

これまで投資家からは、サービス内容がユーザーにしっかりと支持されているというプロダクトの強さの面を評価していただくことが多かったです。また、教育コンテンツ事業ではなく、学習管理プラットフォームとしてユニークなポジショニングが行えている点も、評価していただいているポイントだと思います。

プレシード・シード期のスタートアップに、応援メッセージをいただけますか?

プレシード・シード期のスタートアップは、会社や事業の存在理由を明確にし、それを信じ抜くことが大切だと思います。何のためにこの事業をやるのか。会社を運営することで、社会をどう変えたいのか。事業を通じて、社会にどのような貢献がしたいのか。そういった会社の存在理由や事業の社会的意義を自分自身で強く信じられるのであれば、たとえ結果が出ない日があっても、諦めずに事業を続けることができると思います。逆に言えば、自分の事業が社会に必要な理由を信じ切ることができないのなら、その事業や会社をやめたほうが良いのかもしれません。

スタートアップでは、つらい思いをする日も度々ありますが、そのような中でもすべての軸となる会社や事業への想いを、何よりも大切にしていただけたらと思います。

最後に、貴社の今後の展望を教えてください。

今日のインタビューでも何度もお話ししていますが、弊社は「学習者の支援」こそが教育の本質であると、かねてから考えてきました。その意味では、学習者の抱える課題の中で最も大きい「学習継続の困難さ」を解決するために開発したStudyplusおよびStudyplus for Schoolは、教育の「ど真ん中」をいく事業だと思っています。

両事業ともに成長のポテンシャルは大きい。今後も引き続きStudyplusおよびStudyplus for Schoolをより多くの方にご利用いただけるよう、事業拡大に向けて尽力しながら、いずれは「学習記録×コミュニケーション」をすべての学習者および教育者の新しいスタンダードにしていきたいです。そしていつか、この事業をもとに教育をより良いものへと変え、社会を今よりも前進させることができたらと考えています。