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自身の原体験から描く理想の社会 – 学びたい全ての人へ再スタートのチャンスを

就職してしまうと、大人になると、学びをやめてしまう。子ども時代、学生時代に自分が好きだったことはなんだっただろう、あの頃なりたかったものはなんだろう。
そんな風に思う大人は少なくないのではないだろうか。

学びを通して、全ての人がいつでも再スタートできる世界を創ろうとしているのが、2011年10月の設立以来「大人たちがずっと学び続ける生放送コミュニティ」を提供しているSchooだ。
同社は個人向け配信以外にも、法人向けにオンライン研修を実施。2021年には「地方創生・スマートシティ推進室」を設置し、地方自治体のDX推進やデジタル人材の育成、オンライン研修も手がけているほか、高等教育機関向けのDX事業なども展開しあらゆる方面から社会人の学びを支援している。

オンラインコンテンツの普及、そして学びによるリスタートが可能な世界を信じ続けている代表取締役社長CEOの森健志郎(もり・けんしろう)氏
彼はどういった原体験をもとにSchooの起業に至ったのだろうか。

創りたい世界を実現するための手段が起業

これまでのキャリアと、起業のきっかけを教えてください。

2009年の春、リクルートコミュニケーションズに入社して住宅情報SUUMOのクリエイティブを担当しました。入社2年目の時に、ロジカルシンキングの社内研修でインターネット上の教材動画を視聴する「eラーニング」という学習システムを初めて利用しました。
その時強く心の中に残ったのは、これだけテクノロジーやクリエイティブが進化している世の中ならもっと良いものが作れるはずだ、という思いでした。衝動そのままに、次の日に会社へ退職届を提出。こうしてSchooはスタートし、現在、11期目となります。

リクルートには2年半ほど在籍しました。同社は社内起業の推進や副業が可能な会社としても有名で、そういった選択肢もありましたが、私の中にはこの事業は必ず自分でやり遂げようという強い思いがあったため、自分自身で起業することを決意しました。起業自体は目的ではなく手段だと思っていて、自分が描いた世界を体現するために会社を経営しています。そのため、根幹の思想から見直すようなピボットもしてきていませんし、今後も考えていません。起業をするからには、やりたいことをすることに意味があると考えています。

起業して特に大変だったことをお伺いできますか。

サービスを創るのにあんなに時間がかかるとは知らず、お金がとにかく足りませんでした。起業当時、私は24歳で貯金は30万円ほど。3日間飴玉だけで生活したり、ユーザーにカップ麺を郵送してもらっていたこともありました。現在は従業員が200名程いますが、当時は衣食住という人間の欲求段階の最も根源的なところを満たすことで精一杯でした。

また、今と違って、24歳という若者が大手企業を辞めてまで起業すること自体が珍しい時代。そのため、やっていることが面白いと思ってくれる人が一定数おり、手伝ってくれる人たちはたくさんいました。一方、彼らがフルコミットでジョインしてくれるとなると、お給料を払う必要がありますので資金調達に動きました。2013年7月には、シードラウンドでインキュベイトファンド、ANRIから数千万円を調達。調達した資金はエンジニア雇用に充てていました。私自身の経済状況は創業初期とそんなに状況は変わりませんでしたが、なんとか1日3食の食事を用意することができるようになった、という変化はありました(笑)。

シードラウンドでは、2012年当時存在していた名だたるファンドにほとんど全て当たってみて、やっと2社出資してくださったという辛い環境でした。私は起業当初から「教育のオンライン化」、「ライブ配信技術の進化」、そして「自社オリジナルコンテンツ制作の一般化」の3つが必ずやってくると提唱していました。一方、当時は投資家側にはこの未来を描いている人は少なく、初期に出資をいただいた3社だけが同じ世界を見てくれていたという状況でした。ライブ配信は、当時はニコニコ動画とUstreamくらいしか事業者がおらず、これが増えていくという所感が投資家側になかったようです。オリジナルコンテンツの一般化についても、当時はユーザーからコンテンツを集めるCGM(Consumer Generated Media)
偏重の戦略が一般的であったため、自前でコンテンツを制作する事業者は増えないだろうと言われました。2022年現在の市場では、皆様ご存知の通り、動画配信プラットフォームは増え、オリジナルコンテンツも溢れています。私は、ニコニコ動画がすごく好きで、ユーザーとしてさまざまなコンテンツを楽しんできました。事業を通してオンライン学習を進化させるということに取り組んでいますが、まず前提として、オンライン動画配信という文化自体がもっと成長し、普及するという未来を信じていました。

2015年からは、個人向けだけでなく法人向けに社員の自己啓発や研修のための事業も開始しました。元々、私が起業したきっかけはeラーニングでしたし、法人向けにも参入する予定でした。個人向け事業から開始したのは、従業員が面白いと思うコンテンツでないと普及、定着しないと考えたからです。会社のニーズを先に聞いてしまうと企業が従業員に聞いてほしいというコンテンツしか挙がってこない。しかし、従業員が本当にスキル習得などをするためには、従業員個人が見たいと思えるコンテンツを揃えて見続けてもらう必要があります。そこで、まずは個人がどういうことに関心があるのかを個人向け事業で理解し、法人向け事業にノウハウを転換していきました。法人向け事業は、IT企業や製造業での導入が多く、デジタルリテラシーやビジネススキルに関するコンテンツが人気ですね。

資金調達自体は、ファンド組成などが活発になって資金の出し手が市場に増えていったというマクロ要因と、自社の知名度や事業への理解度が上がり、投資家との対話におけるコミュニケーションコストが下がっていったというミクロ要因によって徐々に楽になっていきました。2021年夏には、シリーズDとしてBonds Investment Group、インキュベイトファンド、SMBCベンチャーキャピタル、鎌倉投信、フューチャーベンチャーキャピタル、山口キャピタルから総額約7億円を調達しました。調達資金はSchooの既存事業、そして2021年秋に開始した、大学などを始めとした高等教育機関向けDXプラットフォーム「Schoo Swing」の育成に充てていきます。

組織風土、採用について伺えますか。

ミッションは「世の中から卒業をなくす」。人は学ぶことで生きる知恵を身につけ、技術を革新させ、進化してきました。「学び」には終わりはなく、学び続けることで社会が抱えている課題の解決速度が加速します。一方で、時間や場所、コスト、モチベーションなど、「学び」の障壁となるものは私たちの身の回りに溢れている。これらの障壁を取り除くことで、すべての人が学び続けられる世界、つまり、すべての人の卒業をなくすことがSchooの使命と考えています。社名にもその思いを込めていて、学校を表す英単語”SCHOOL”の「終わりの”L”をなくす」ことでSchooとしました。

ビジョンは「インターネット学習で人類を変革する」。人は、“自分に一番向いていること”を知らないまま死んでいく。これは現代に限ったことではなく、人類が誕生してからずっと存在してきた課題です。今よりもっとたくさんの選択肢と可能性を、一人ひとりに示すこと。そしてその開花と挑戦の結果生まれる、今よりもっと豊かな人生を強く支えていくこと。弊社はインターネットでの学びを起点として、ヒトと人類を変え続けていくエンジンになることを目指しています。

採用にあたっては、やはりミッションとビジョンに共感している人に入社してほしいと思っています。共感というのは階層として2つあると思っていて、そういう未来になるといいよねという応援者としての共感。そういう未来を自らの手で創りたいという、当事者としての共感。我々は、このミッション・ビジョンを自分が成すべき未来と捉え、実現したいと思える、後者の方々とご一緒できたら嬉しいです。

グローバル展開についてはどうお考えですか。

国内市場だけでも一定の市場規模が存在し、展開国を日本単体に絞ったとしても時価総額1,000~2,000億円を作れるのが日本の特徴です。一方、我々の会社のミッション自体は人類すべてに適用されるものであると考えています。中でも、現在力を入れている高等教育機関のDXはこれからの時代にあわせて世界中でオンラインコンテンツ化が加速している領域。ハーバード大学やスタンフォード大学といったアメリカの超有名大学を始め、多くの教育機関が、世界中の人がアクセスできる形で講座を公開し始めています。世界の環境を見ながら、ニーズに合わせてグローバル対応もしていきたいと考えています。

自身の原体験を通して抱く、再スタート可能な社会への展望

学生時代はどのように過ごされましたか。

本当にどこにでもいる学生でした。高校では硬式野球をやっていて、大学では友達と飲んだり、ゼミに行ったり。専攻は経営学でしたが、指定校推薦で受かるところに行っただけなのでそもそも経営に興味があったわけではないんです。意識の高い学生さんはすごいなと。

そのため、就職活動でもいわゆるバイトリーダーやサークル幹部をしましたという定番のアピールネタは特になくて。就活の軸自体は「社会に対して大きいことをしたい」というものでした。例えば発展途上国に電力を販売できる仕組みなど、規模の大きな取り組みに憧れて7大総合商社をすべて受けましたが、ご縁はありませんでした。年功序列の業種で若いうちに大きなことをさせてもらうことは難しそうだと感じ、クリエイティブの世界に興味をもちました。学歴で入社後の昇進がある程度見えているというキャリア形成ではなく、自分の腕さえあればどこまででも突き抜けられる業界に入りたい、と考えていました。入社後は楽しかったものの、起業に至っているということは、結局は会社の枠組みに囚われずに自分で物事を決めて進めるやり方が性に合っていたということなのかもしれませんね。

休日の過ごし方、リフレッシュ方法は?

草野球ですね!週に1回2時間程度やっています。実はこれ、どこかのチームに所属しているというわけではなく、自分のnoteで「草野球のチームを作りたいのでメンバーを募集します」と書いたところ100名近く応募がありまして。現在は最終的に10名程度までに絞ってチーム化し、草野球を楽しんでいます。

プレシード期からシード期のスタートアップへメッセージをいただけますか。

ここで何か僕が言ったとして、鵜呑みにする必要はない、ということこそがメッセージかもしれません。他の人の意見を聞かないと不安だと感じる人は、おそらくそもそも起業家になること自体が向いていないでしょう。成果も責任もすべて負い、自分の力を試すのがこの仕事。誰かの成功パターンをなぞる必要もなければ、失敗パターンを回避する必要もない。痛手を負うことは誰もが避けようとしますが、目の前に地雷があるとわかっていても、地雷を踏んで痛手を負いながらでも突き進んで最短距離を走り抜けるという方法だってあるんです。事業をしたくてたまらない人は、きっと恐れる暇もなく成長への最善策を取ろうとするはず。失敗や誰かの意見を恐れずに、自分のやりたいことを信じてみてはいかがでしょうか。

最後に、これから作りたい世界観と、読者へ一言お願いいたします。

就職活動や起業までのプロセスを通じて、私自身が一貫して考えていることは「人間とは誰しも過去を持っている」ということです。最近は親ガチャという言葉もありますが、国籍、家庭環境、学歴、社歴、そして遺伝子配列ですら、過去の物事というのは大きく制約になり、今の社会では残念ながら不可逆なものが多くあります。本当に何かをしたいと思ったら何度でも挑戦できる社会であってほしいし、そういう環境を創りたいとずっと思っています。そしてその人がいる場所が、首都圏でも、地方でも、日本でない国であっても、その人が学生でも、社会人でも、思いに優劣はないですから、学びたい全ての人にSchooを通して再スタートのチャンスを与えていきたい。同じ価値観を持つ方のジョインを、ぜひお待ちしています。

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