2023年10月1日で3周年を迎えたCIC Tokyoは、9月28日(木)にCIC Tokyo(虎ノ門ヒルズ)で記念パーティを開催。CIC Tokyoに入居する東京都の小池都知事からの祝辞、西村 康稔経済産業大臣によるビデオメッセージ、平 将明衆議院議員による祝辞のほか、防衛省航空幕僚監部宇宙協力オフィスがCIC Tokyoへの新たな入居を発表。宇宙利用分野に関して、民生技術の防衛分野への一層の活用を表明した。
CIC Tokyoの入居者は日本企業70%、外国企業30%という。元々の国際的な環境に加え、当日の会場へは多くの海外のゲストが訪れ、そこかしこで日本語・英語交えて会話が弾んでいた。CIC Tokyoで毎週木曜日に開催されるVenture Café Tokyo企画の「THURSDAY GATHERING」も毎回ものすごい人の量だが、この3周年パーティはいつにも増しての賑やかさであった。CIC Tokyoの運営メンバーも和やかにゲストたちと会話しており、CIC Tokyoが日常的なコミュニケーションハブとなっていることが強く感じられた。
入居者限定ピッチコンテスト
14社の最終選考を勝ち抜いたのは資源ごみ選別AIのPFU
ゲストプレゼンテーションを終え、最後のコンテンツは、初めて入居者のみに応募を限定したピッチコンテストとなった。応募があったスタートアップや大手企業の新規事業部の中からCIC Tokyoの審査を通過した14社が参加。
<ピッチイベント参加企業>
株式会社天煌堂(TENKODO inc)/ 株式会社asai / 植松千明建築事務所 / TekMonks株式会社 / Degas株式会社 / 株式会社PFU / HelloBoss / 株式会社クラウド人材バンク / Tubeless Japan株式会社 / ENEOSホールディングス株式会社 / エーアイシルク株式会社 / サステナジー株式会社 / メタジェンセラピューティクス株式会社 / 株式会社資生堂
<審査員>
- MPower Partners Fund L.P. 関 美和 氏
- DIMENSION株式会社 伊藤 紀行 氏
- 富士通ベンチャーズ株式会社 村田 和也 氏
第3位 株式会社クラウド人材バンク
事業内容:デジタル人材向けマッチングプラットフォームの提供
審査員コメント(伊藤氏)
流動性が低い部分の手当は日本市場においてとても重要。その点が評価されての受賞となった。
受賞者コメント
いわゆるVC調達をして成長するタイプの企業ではないので、場違いではないかと心配していたが、受賞できて本当に嬉しい。引き続き頑張りたい。
第2位 株式会社asai
事業内容:月経管理アプリ
審査員コメント(関氏)
当事者として、関係人口1,500万人という世界で、月経管理アプリはたくさんあるものの経血を測定するというアイデアが大変新しく、もっと民主化して重篤な症状を早期発見できるのがすばらしいなと。
受賞者コメント
実はとても緊張しており、昨夜は眠れなかった。自分以外の登壇者が素晴らしく、自信がなかったが、受賞できてよかった。これからも頑張っていきたい。
審査員特別賞 メタジェンセラピューティクス株式会社
事業内容:最先端のマイクロバイオームサイエンス
審査員コメント(関氏)
潰瘍性大腸炎の対応は必要。
受賞者コメント
この場を与えてくれたCIC Tokyoの皆さんに感謝。自身は札幌在住だが、東京やケンブリッジなど、世界各地にCICというHomeがあるからビジネスがとても進めやすい。サポートも充実しておりCICに活かされているといっても過言ではない。
第1位 株式会社PFU
事業内容:社内の新規事業として資源ゴミAI自動選別システムを手掛ける
審査員コメント(村田氏)
受賞おめでとう。(ちょうどAward発表のタイミングで受賞者が帰られてしまっていたが)それだけ多忙であることはすばらしい。ゴミ分別の労働力不足は切実な課題であり、コスト削減の観点からも良いサービス。審査員の中で最高得点となった。
※優勝商品としてCICオフィスクレジット50万円相当を授与
日本中のイノベーターが集まる”Home”になったCIC Tokyo
ここからはCIC創業者のTim氏にお話を伺います。CIC Tokyo3周年おめでとうございます。オープンからここまで、どんなことがありましたか。当初予想と比べていかがでしたか。
CIC Tokyoオープン時にはちょうど新型コロナウイルスの襲来がありましたし、当初は不安が多かったですね。プロジェクト自体はそれよりも前から動いていましたが、当然、新型コロナウイルスの発生を予想していなかったし、そもそも、米国でスタートした文化が日本で受け入れられるかを懸念していました。
一方でいざ始めてみれば、日本人のもともとの文化とマッチしたのか、同じ場所に集まることで連帯感が生まれて会社間の連携もうまくいきました。CIC Tokyoの入居者は日本企業70%、海外企業30%ですが、ここに集まってくる日本の起業家たちはとてもオープンマインド。活発なコミュニケーションが行われています。
また、今日もゲストで来ていただいていますが、日本の政治家、官僚、自治体などのサポートがとても手厚かったです。岸田総理大臣にもお越しいただきましたし、小池都知事もよくCIC Tokyoへいらっしゃいますよ。スタートアップ、オープンイノベーションの成長には、国民の理解が欠かせません。知名度の低い小さなスタートアップに自分の子どもが就職するといったら、保守的な親はまず反対するでしょう。政府が、スタートアップの重要性をアピールすることは、スタートアップへ人やお金などの資本を流していくために必要なのです。
スタートアップやオープンイノベーションを手がける新規事業部署が入居するシェアオフィスは数多ありますが、ここまでの熱狂を感じるのはCIC Tokyoならではのように思います。秘密はどこにあるのでしょう。
まず、ほかのシェアオフィスはビジネスの集まりで、CICはイノベーターの集まりという点が、大きな違いなのでしょう。CICの入居企業の平均入居期間は49ヶ月。約4年間です。これは四年制大学とほぼ同じ長さ。CICはイノベーターの学校であり、世界各国にあるホームステイ先のような存在なのですね。加えて目的も違う。コンビニに行くときの目的は、サンドイッチを買うこと。でも教会に行くときの目的は、パンとワインをもらうことではなくて、教会に来た仲間との交流ですよね。CICは働く空間として人が集まるのではなく、イノベーターの仲間たちと交流し、共にビジネスの成功を目指す人たちが集まる場所なのです。その違いは大きいと思います。
一方、カリキュラムが明確に定められているわけではない中、4年という長さでそのコミュニティに足を運び続けるというのは、すごいことです。ほかにも秘密がありそうですね。
それはおそらくコンテンツですね。例えば、国内で一番人気のある大学と、人気がない大学を比較したときに、建物の質自体はきっと大して変わらない。しかし、講師や生徒、カリキュラムの質が全く異なるでしょう。人が集まるにはソフトの部分が重要になります。また、親密なコミュニケーション、ならびにコミュニティを形成するにあたっては、接点を多くすることが有効です。そのためには、多くの人に何度も足を運んでもらえるイベントを定期的に企画する必要があります。
CIC Tokyoでは、毎週木曜に「THURSDAY GATHERING」というイベントを行っていますが、その企画をしているのはVenture Caféという組織。世界14箇所でイベントを企画運営する非営利団体です。必ずしもCICを拠点にしているわけではありませんが、その多くがCICと密接に紐づいています。各地域にいるVenture Caféの責任者たちは、何がうまくいったかシェアしあう会議をオンラインで毎週行っています。地球の反対側で盛り上がった企画を、その翌週に東京で試す。そして、これだけの頻度で企画をしていれば熟練も早い。だからCIC Tokyoの企画はいつも目新しくて、熱狂が続くのです。
また、CIC Tokyo独自のイベントも数多く開催されています。入居者同士のコミュニケーションを活発化するコミュニティイベントは年間100回以上、外部の方へもオープンなビジネス分野別イベントは年間200回以上開催されています。
CICにいると自然と近しい境遇の仲間と出会ったり、新しいアイディアに出会ったり、必要なコネクションを得ることができたりするんです。
11月には、毎年恒例のROCKET PITCH NIGHTが開催されますね。こちらも楽しみです。Timさんの、スタートアップやアントレプレナーシップに対する、モチベーションはどこから生まれているのでしょう。
Rocket PitchはVenture Caféのシグネチャーイベントで、今年は40組の登壇者と1,000名以上の参加者を募り開催予定なので、日本でも有数の規模のイベントになる予定です。今年はどんなアントレプレナーたちが参加するのかとても楽しみにしています。
私自身、最初は戦略やビジョンはなかったんです。中学生のころから、自宅の地下でコンピュータ・ソフトウェアの開発をしていた、典型的なタイプです(笑)。
CICを始めたきっかけは、友達とオフィスをシェアしたことでした。近くに座っている知人、友人と課題を相談しあえるのはとても楽しくて、自然と入居企業が増えていきました。このビジネスに大きな可能性があると気づいたのはこれがきっかけです。とはいえ私は前に出ていくより、後ろで細かい問題を解決している方が好きで、販管費を削減したり、電子鍵を導入したりしていました。なので当初はそれほど強い思いがあった訳ではありませんでした。でもその後、まだメンバーが二人だったころのAndroid社が入居してきたり、このビジネスの面白さも感じました。振り返るとCICも成長しましたね。
自分や仲間のニーズを満たすためという当初のモチベーションから、今では世界の問題がCICから生まれたイノベーションで解決されることを願いながら、日々取り組んでいます。
スタートアップは”New”で”Cure” 次のミラクルを産むために、種まきの基盤を広げたい
スタートアップとスモールカンパニーの違いは何だと思いますか。
スタートアップとスモールカンパニーの違いですね。スモールカンパニーは、労働集約型で、規模が小さい企業。今までの課題に対し、ペインキラー(痛み止め)として作用する。一方でスタートアップは、新たな事業を展開し、新たな課題をキュア(治癒)する。
例えば、世界は今、地球温暖化などのSDGs Goalsを抱えているけれど、これを誰が解決するかというと、大手企業でもスモールカンパニーでもなく、スタートアップなのだと思っています。素早い意思決定が求められ、一気に拡大するソリューションでなければ、喫緊の課題には対処できない。これはスタートアップにしかできないことです。
次の3年では何をしていきたいですか。
この3年で、東京に蒔いた種が芽吹いたのを、このパーティを見てもわかります。この実験をさらに拡大して行うためには、より広い基盤が必要です。98%の日本のスタートアップは東京に拠点を持っているけれど、ほかの地域にもその土地特有の産業や、優秀なスタートアップは存在します。CICは、一枚のカードで世界の拠点にアクセスが可能です。日本国内のあちこちにCICがあり、自由に行き来できるようになるのが理想です。今後日本国内はもちろん、さまざまな国や地域にCICの拠点を増やしていければと思っています。また、ライフ・サイエンス、クリーン・テクノロジー、ロボティクスなど、日本が伸ばしていこうとしている産業はたくさんありますが、これらを成長させるには、自治体、官公庁、入居者、全てのケミストリーが必要です。これまでもそういったスタートアップエコシステムのプレイヤーたちは、CICの取り組みに非常に積極的で協力的でいてくださったと感じていますし、引き続きこの温かいコミュニケーションを続けていきたいと思います。
ありがとうございました。
注目記事
AIキャラクターが暮らす「第二の世界」は実現できるか。EuphoPia創業者・丹野海氏が目指す未来 Supported by HAKOBUNE
大義と急成長の両立。世界No.1のクライメートテックへ駆け上がるアスエネが創業4年半でシリーズCを達成し、最短で時価総額1兆円を目指す理由と成長戦略 Supported by アスエネ
日本のスタートアップ環境に本当に必要なものとは?スタートアップスタジオ協会・佐々木喜徳氏と考える
SmartHR、CFO交代の裏側を取材。スタートアップ経営層のサクセッションのポイントとは?
数々の挑戦と失敗を経てたどり着いた、腹を据えて向き合える事業ドメイン。メンテモ・若月佑樹氏の創業ストーリー
新着記事
AIキャラクターが暮らす「第二の世界」は実現できるか。EuphoPia創業者・丹野海氏が目指す未来 Supported by HAKOBUNE
防災テックスタートアップカンファレンス2024、注目の登壇者決定
大義と急成長の両立。世界No.1のクライメートテックへ駆け上がるアスエネが創業4年半でシリーズCを達成し、最短で時価総額1兆円を目指す理由と成長戦略 Supported by アスエネ
日本のスタートアップ環境に本当に必要なものとは?スタートアップスタジオ協会・佐々木喜徳氏と考える
Antler Cohort Programで急成長の5社が集結!日本初となる「Antler Japan DEMO DAY 2024」の模様をお届け