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日本人起業家がインドネシアで創る「モビリティビジネス」の未来〜ライドシェアドライバー向けカー・サブスクで挑むグローバルビジネスの最前線〜

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インドネシアでは、GrabやGojekといった配車アプリが事実上の公共交通として機能している。しかし需要の急拡大に対して、ドライバーの供給が追いついていない。その根本には「金融の壁」がある。車さえあれば月収が5〜6倍になるにもかかわらず、与信審査を通過できずに夢を諦めるドライバー候補が後を絶たないのだ。この課題に真正面から挑むのが、2021年創業のmovus technologies株式会社だ。2026年5月にはシリーズBで総額42.6億円、インドネシア財閥系リース会社と総額約20億円のリース契約を結ぶなど急成長を続ける同社代表の 酒井 丈虎(さかい・たけと)に、起業の原点から独自のビジネスモデル、今後の成長戦略までを聞いた。

酒井 丈虎 / Sakai Taketo

慶應義塾大学商学部卒業後、Global Mobility Service株式会社に入社し、事業開発部門にて、日本やインドネシアにおいて金融機関やAmazon、自動車メーカーやディーラーとの提携を実現。その後、ソフトバンク株式会社の事業戦略統括部にて、Softbank Airにおける戦略策定やPL作成及び管理を行う。2021年に大学の体育会硬式野球部のチームメイトである北口と共にmovus technologies株式会社を共同創業。代表取締役CEOを務める。

「総理大臣になりたい」から「起業家になりたい」へ

酒井さんが起業を志すようになったきっかけを教えてください。大学時代からずっとそういう意識があったのですか?

実は最初は「内閣総理大臣になりたい」という、かなり漠然とした夢を持っていました(笑)。きっかけは大学時代に参加したスローガン社の就活セミナーで、代表の伊藤豊さんに「酒井さんは、どんな人に総理大臣になってほしいですか?」と聞かれたので、ソフトバンクの孫正義さんやユニクロの柳井正さんの名前を挙げたところ、「その人たちって起業家ですよね」と言われてしまいました。伊藤さんのその時の言葉が強く印象に残っていて、ゼロから事業を作れる人材になりたいという想いが一気に固まりました。

その後のスローガン社でのインターン経験も大きかったのでしょうか?当時どんな仕事をされていたのでしょうか。

スローガンでは、新卒・長期インターンの採用支援を行う事業部で働いていました。お客様のスタートアップ企業の中でもテラドローンのような、グローバルでゼロから事業を作るような会社と接する機会があって、「これからの日本にはこういうスタートアップが増えていかなければいけない」という気持ちが強くなりました。その後に入ったグローバルモビリティサービス株式会社では、フィリピン・カンボジア・インドネシア・日本でIoTデバイスを活用した低与信者向けの自動車ファイナンス事業を展開していて、インドネシアの現地立ち上げサポートに出張で行かせてもらったのですが、それがインドネシアとの最初の出会いです。

世界中の国の中でも、なぜインドネシアだったのですか?同じ東南アジアでもタイやベトナムではなく、インドネシアを選んだ理由を教えてください。

大きく二つあります。一つ目は原体験です。最初に出張で行ったとき、昼食も抜いて夜遅くまで仕事をしていたら、現地のメンバーに「だから日本人はうつ病になるんだ、もっと人生を楽しまないと」と笑いながら言われて、すごく陽気でポジティブな人たちだという印象を持ちました。でもその一方で、社会の不均衡にさらされている現実もある。そのギャップに心を動かされて、この人たちに何か価値を提供したいと強く思いました。二つ目はマクロの観点です。スタートアップとして大きくなるにはマザーマーケットの規模が重要で、中国・インドはなかなか参入しづらい。東南アジアの中で一番人口が大きいのがインドネシアで、かつ日本車のシェアが9割近く、日本語学習者数が世界2位というように、日本企業が事業を展開しやすい土壌がある。東南アジアのユニコーン企業もほぼインドネシアを主戦場にしています。これだけ条件が揃えば、インドネシア一択だと思いました。

実際にどのような流れでインドネシアでの起業が実現したのでしょうか?

最初は2020年3月にインドネシアへ渡航して起業しようとしたのですが、コロナ禍でビザが下りなくなってしまい、不完全燃焼のまま帰国せざるを得ませんでした。その後は一旦ソフトバンクに入社しましたが、モヤモヤはずっと消えなかった。そんなときに大学の野球部の同期だった北口と再会して副業的に趣味領域でプロジェクトの立ち上げを複数やっていました。ただ、途中で「せっかくなら人生を賭けてスタートアップをやろう」と意気投合したんです。北口は当時グローバルスタートアップである「OYO Japan」で働いていたのですが、僕と同じく不完全燃焼を感じていた。最初は他のサービスも考えていたのですが、「どうせやるなら最初からグローバルで、自分たちが本当に情熱を持てる領域で」と考えた結果、今の事業にたどり着きました。最終的に2021年2月に法人を設立し、2022年1月から事業を本格スタートさせました。

「車の供給不足」という社会インフラの課題を解決する

具体的な事業内容を教えてください、どのような社会課題をどうやって解決しているのでしょうか?

インドネシアではGrabやGojekが公共交通機能を担っているのですが、需要は伸び続けているのにドライバーが足りていません。実際に配車アプリ側が料金を上げて需要を抑制しようとしたこともあるくらいです。でもそれは根本解決にはなっていない。ドライバーが足りない根本原因は「金融の壁」で、なりたくても車を手に入れられないドライバー候補が多数います。一般の金融機関は個人事業主のライドシェアドライバーへのローンを厳しい審査基準に基づいて落としてしまいます。そこに弊社が入り込んで、月々の支払いを続けることで、最終的に車が自分の資産になるRental to Own方式の車両サブスクリプションサービスを提供しています。

「金融機関がドライバー向けに融資しない」という構造はなぜ生まれているのですか?単純に信用がないということなのでしょうか?

両方あります。一つは与信データそのものがない、あるいは信用に値しないと判断されるケース、もう一つは個人事業主という立場による収入の不安定さです。インドネシアでは車を購入する際に約80%の人がローンを利用するのですが、そのうち審査を通過できるのは約30%〜40%というのが実情です。特に、個人事業主であるドライバー向けには通常金融機関さんは原則お見送りとしています。そのような中弊社では、独自の与信ロジックを構築することで、従来の金融機関では対応できなかった層にサービスを届けようとしています。

与信管理を自社でやるのはかなり大変だと思うんですが、具体的にどうやって焦げ付きを防いでいるのでしょう?

入口の審査だけでなく、与信管理からオペレーション全体を自社でフルセット持っていることが強みです。GPSとIoTデバイスで車の稼働状況をリアルタイムで把握していています。支払いが滞った場合には担当スタッフがお客様のご自宅を直接訪問するハイタッチのフォローも行っています。テクノロジーだけでは限界があって、人が動くことで初めて解決できることも多い。しっかりドライバーとして稼働してもらえる習慣をつけてもらうことが重要です。こういったオペレーションを一つひとつ地道に磨き込んでいることが、競合に対する参入障壁になっています。

「日本企業」であることはインドネシアでの最大の強み

日本人が、しかも若い創業者がインドネシアで事業をするのは、色々な壁がありそうですが、現地で「外国人だから」という不利を感じたことはありましたか?

正直、日本人だから大きなデメリットがあったという経験はほとんどないですね。むしろ逆で、「日本企業が運営しているから信頼できる」という評価をいただくことが多い。現地では「あなたはトヨタさんですか、ホンダさんですか、スズキさんですか」と聞かれるくらい、日本ブランドへの信頼が根付いています。日本車のシェアが9割近いというのは、日本企業がこれまで長年かけて築いてきたプレゼンスと信頼の証だと思います。採用でも「日本人が経営する会社だから働きたい」という応募が来ることがあってデメリットより明らかにメリットの方が大きいです。

インドネシアでビジネスをする上での難しさ、例えば現地のビジネス慣習や組織運営で壁にぶつかったことはどんなことでしたか?

一番大きいのは就業意識のギャップですね。インドネシアには「ティダアパアパ(なんとかなる)」という言葉があるくらい、のんびりとポジティブな国民性がある。悪い意味ではないですが、マニュアルを徹底したり、改善を積み重ねたりする文化は意識的に作っていかないと根付かない。これは今も継続的な課題です。最近はAIの活用を社内に広げていて、「AIに使われる側でなく、使う側の人間になろう」というメッセージを出すことで、メンバーの学習意欲と危機感も良い方向に動き始めています。

「知的ワイルド」な人材を世界の最前線へ

現在の組織は日本側とインドネシア側でどう役割分担しているのでしょうか? 

全体で約110名おり、インドネシア子会社に100名(現地採用)、日本本社に10名という構成です。インドネシアの100名はセールス・マーケティング・与信管理・メカニック・経理・リーガルなど、事業運営に必要なポジションを一通りカバーしています。日本本社の10名のうち、5名がビジネス職としてインドネシアに駐在し、残り5名がエンジニアとして日本からフルリモートで開発を担っています。企画・マネジメントレイヤーは日本人が担い、現地の優秀なメンバーに積極的に昇格してもらいながら、両者が連携して動いています。

どんな人がこの環境に向いていると思いますか?また、実際にこれまで採用して活躍している人にはどのような共通点があるのでしょうか?

一言で言うと知的好奇心が高く、より大きなインパクトを求めて動ける人ですね。日本の成熟した産業でスケールするのが難しくなってきた今、「グローバル×新興国×リアル産業」というフィールドはまだまだプレイヤーが少なく、インパクトを出せる余地が大きい。モビリティ業界の経験は一切問いません。優秀な方であればラーニングとアンラーニングを繰り返してキャッチアップできます。

2〜3年で一万台へ、東南アジア全域を見据えて

これからの事業展開について聞かせてください。インドネシアをより拡大するのか、他の国にも広げるのか、どういったロードマップを描いていますか?

直近2〜3年の目標として、一万台規模まで拡大することを掲げています。まずインドネシアを深く掘り下げながら、並行して東南アジア全体への水平展開を見据えています。オペレーションモデルを磨き込んだ上で、各国のローカル事情に合わせて展開していく方針です。また、インドネシア国内でも、ライドシェアドライバー向けに限らず、他の領域への拡張も視野に入れています。

インドネシアという市場の魅力を教えてください。

インドネシアは現在GDPが約1兆ドルで、ちょうど1970〜80年代の日本と同水準と言われています。今後25年で世界4位の経済大国になるという予測もある。当時の日本でソフトバンクやユニクロが生まれたように、インドネシアの経済成長と共に会社を育てることができれば、世界を代表するような企業になれる可能性があると本気で考えています。大手の日本企業もインドネシアに進出していますが、彼らは与信の高い層をターゲットにしているので、私たちのような低与信層へのアプローチは競合しません。市場が大きくなるにつれて私たちがサービスを届けられる層も拡大するはずなので、スタートアップとして入り込む余地は十分にあります。

直近で最も力を入れて解決したい課題何でしょうか?

事業家人材の採用と育成です。会社がスケールするにつれ、事業を自律的に動かせる人材の不足が明確に見えてきています。インドネシアの現地メンバーの育成と同時に、日本からもビジネス職として現地に駐在し、自ら動ける人材を一人でも多く迎えたいと思っています。知識や思考力と泥臭く現場で動けるバイタリティの両方を持っている「知的ワイルド」とも言えるような方が来てくれると会社は一気に成長が加速します。

最後に、この記事を読んでいる方で「もっと大きな挑戦がしたい」と感じている方へ、メッセージをお願いします。

「グローバルでやりたい」という気持ちがあるならインドネシアは本当におすすめです。日本との関係が深く、ビジネスをしやすい環境が整っている。一方で、課題は山積みで、解決できるプレイヤーがまだ圧倒的に足りていない。大企業でしっかりキャリアを積んできた方の経験や思考力は、新興国の現場で必ず活きます。当社には既にリクルートやラクスル、サイバーエージェント出身のメンバーがいて一緒に現場を動かしています。「もっと大きな舞台で、自分の力を試したい」と少しでも感じているなら、ぜひ話を聞きに来てください。インドネシアという成長市場で一緒に挑戦しましょう。

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