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【7/7-7/13】注目のスタートアップニュース・資金調達情報

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2023年7月7日から2023年7月13日に発表されたスタートアップニュース、資金調達情報のうちJP Startups(ジャパスタ)が注目する案件をピックアップしてお届けいたします。

編集部コメント

今週はAI関連のスタートアップによる資金調達が多かった印象だ。AIやWeb3.0領域でプロダクト開発を行う80&CompanyはプレシリーズAで5,000万円を調達。AI活用でECサイトなどに掲載する商品写真の作成時間を大幅に削減可能な「フォトグラファーAI」を開発するNectAIは、プレシードで資金調達を実施した。

今回はその中でも、大規模言語モデルを活用したワークフロー自動化サービス「Promptflow」を開発するCarnotと「信頼できるAI」の実現に挑むCitadel AIをピックアップ。記事内でサービス内容も含めて解説する。そのほか、超小型・超軽量の月面探査車を開発するダイモンと化学産業特化型のバーティカルSaaSを手がけるSotasを取り上げる。

また、スタートアップニュースは3件。グローバル・ブレインとSMBCグループによる新ファンド設立の話題や、起業家向けのプログラムに関する情報をお届けする。

スタートアップニュース

グローバル・ブレインとSMBCグループが、300億円の「SMBC-GBグロースファンド」を設立(2023年7月11日発表)

Credit : 同社プレスリリース

メルカリやラクスルなどへの投資実績を持つグローバル・ブレイン株式会社は、株式会社三井住友銀行とSMBCベンチャーキャピタル・マネジメント株式会社と共同で300億円のグロースファンド「SMBC-GBグロースファンド」を設立すると発表した。同ファンドは、国内の有望スタートアップに対する出資機能を強化すべく設立したという。

日本では、数多くのスタートアップが立ち上がっている一方で、時価総額1,000億円を超えるユニコーン企業が欧米に比べて少ないという現状がある。さらに昨今、世界でスタートアップ不況が発生し、資金調達環境が悪化している。日本貿易振興機構の『ビジネス短信(2023年1月)』によれば、米国における2022年のVC投資総額は前年比37.1%減となり、IPOは前年比72%の落ち込みとなっているとの報告もある。

一方、グローバル・ブレインによれば、国内のVC投資金額は2022年以降も大きな減少は起きておらず、欧米のスタートアップ市場とは異なる動向を見せているという。同社はこの状況を日本がユニコーン企業を生み出すチャンスと捉え、投資を積極化していきたい考えだ。「SMBC-GBグロースファンド」の設立によって今後、スタートアップへの数十億円規模の投資を行うことで、日本発のユニコーン企業誕生に向けて引き続き支援を行っていくと表明している。元リリースはこちら

グローバルVC Antlerの日本法人が、起業支援プログラム「Antler Cohort Program」日本版の第2期を開催。参加者の選考を開始(2023年7月11日発表)

Credit : 同社プレスリリース

シンガポールに本社を置き、アーリーステージに特化したグローバルなベンチャーキャピタルを運営するAntlerの日本法人 Antler株式会社は、起業支援プログラム「Antler Cohort Program」日本版の第2期開催を発表した。同プログラムは2023年10月2日(月)~12月8日(金)の日程で行う予定で、すでに参加者の選考を開始したという。

「Antler Cohort Program」は、創業メンバー探しや事業アイデアのブラッシュアップなど、起業前のフェーズからサポートが受けられる約10週間のプログラムだ。期間中、Antler Japanのオフィスでプログラムにフルタイムで参加できることが条件となり、参加者を決定する選考では、「内発的動機:モチベーションと行動力」「グリット:やり抜く力、生き残る力」「優れた能力:スキルと経験、洞察力」が求められる。

選考を通過すると、金銭的補助を受けながら、チームづくりや事業アイデアの磨きこみ、経験豊富なアドバイザーによるメンタリングなど、スタートアップ立ち上げに必要な支援を集中的に受けることが可能。プログラム修了時には、事業プレゼンテーションの機会もあり、採択されれば2,000万円の創業資金を獲得することができる。2023年1月に開催された同プログラムの第1期では、30を超える創業チームが形成され、2社が創業資金を手にした。

今後、同社は7月19日(水)に書類選考不要の第1次面接会「Fast選考会(対面)」を行い、8月2日(水)には日本版第1期生によるAntler Info SessionならびにFast選考会を開催。応募の一次締め切りはすでに終了しており、最終締め切りは8月10日(木)となる。同プログラムの公式ページはこちら。元リリースはこちら

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東京都による女性ベンチャー成長促進事業「APT Women」が第8期生の募集をスタート(2023年7月11日発表)

東京都の女性ベンチャー成長促進事業「APT Women(Acceleration Program in Tokyo for Women)」が、7月11日(火)より第8期受講生の募集を開始した。

女性起業家を対象とした同プログラムは、スケールアップや海外展開に必要な経営知識とスキル、ネットワークを獲得可能な3ヶ月間のグループメンタリングや講義などを提供。さらに、選抜者にはシリコンバレーとシンガポールのスタートアップ関係者や施設を視察する海外プログラムの提供も行い、東京都を起点に世界で活躍する女性起業家の輩出を目指す。

同プログラムは、これまでに200社を採択。採択企業は総計約148億円の資金調達を行ったほか、600社を超える大手企業との連携や、58件以上の海外展開など、数々の実績をあげている。

第8期の開始に先立ち、選考を通過した受講生40名が登壇するキックオフイベントを9月8日(金)に開催予定。ゲストスピーカーとして、株式会社ミツモア代表の石川 彩子氏が登壇することも決定している。「APT Women」第8期生の募集概要は以下の通り。ATP Women公式サイトはこちら。元リリースはこちら

  • 応募資格:創業後10年未満(新サービスのリリース後10年未満の第二創業も含む)の中小企業者の代表の女性又は都内で起業を予定している女性
    ※社団法人、合同会社、個人事業主、NPO等も含む
    ※東京都内で事業展開している、または東京都内へ事業進出の予定がある方に限る
  • 募集期間:2023年7月11日(火)〜8月2日(水)23:59
  • 応募方法ATP Womenのサイトより申し込み(書類審査と面接あり)

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資金調達情報

【プレシード】生成AIスタートアップ Carnotが8,500万円の資金調達を実施(2023年7月12日発表)

生成AIを活用したサービス開発を行う株式会社Carnotは、プレシードラウンドで第三者割当増資により8,500万円の資金調達を実施した。HERO Impact Capitalをリード投資家として、引受先にはANRI、DEEPCORE、エンジェル投資家の池田 俊氏(Google US シニアマネージャー)、高岡 淳二氏(UsideU 代表取締役)、露木 雅氏(Macbee Planet CTO)、濱邉 将太氏(ハッカーズバー運営)、彦坂 雄一郎氏(Airbus Ventures ストラテジックアドバイザー)、馬渕 邦美氏(PwC、元 Facebook Japan 執行役員)らが参加している。

Carnotは「Create a perpetual motion machine.(永久機関をつくる)」をミッションに掲げるスタートアップ。AIで知的生産性を向上させながら、あらゆるエコシステムの永久機関化に挑戦しており、現在は大規模言語モデル(LLM)のGPT-4を用いたワークフロー自動化サービス「Promptflow」を開発している。

同サービスは、ユーザーが自身の業務内容に合わせてプロンプトモジュールを柔軟にカスタマイズでき、LLMを活用していることで、一般的なRPAツールやiPaaS(統合型クラウドサービス)よりもシンプルで簡単にワークフローを構築することができるという。また、SlackやGmailなど、ビジネスシーンでよく利用されている主要なプラットフォームとも高度なデータ連携が行えるほか、チャット形式でワークフローの作成から管理、トラブルシューティングが可能な機能も開発中で、特別な操作や専門知識がなくともワークフローを適切に作成・管理できるようになる見込みだ。

同社は、今回調達した資金をもとに、「Promptflow」の開発と大規模言語モデルの学習やチューニング、プランナーエージェントなどの研究開発、グローバルな組織体制の強化を行うという。元リリースはこちら

【シード】化学産業特化型のバーティカルSaaSを手がけるSotas、シードラウンドクローズで総額1.1億円を調達(2023年7月11日発表)

化学産業に特化した生産・在庫管理・受発注システム「Sotas工程管理」と化学産業データベース「Sotasデータベース」を開発・提供するSotasは、シードラウンドの資金調達をクローズさせ、総額で1.1億円の資金調達が完了したことを発表した。今回は引受先として新たにArchetype Venturesと株式会社デライト・ベンチャーズの運営ファンドが参加。既存投資家の株式会社サムライインキュベートの運営ファンドや日本材料技研株式会社、エンジェル投資家も引き続き引受先となっている。

同社の手がける「Sotas工程管理」は2022年11月のリリースで、機能のブラッシュアップを行いながら、導入拡大を進めている。また、もう一つのサービスである「Sotasデータベース」は2022年12月にリリースし、2023年6月時点での導入社数は1,000社を超えた。同サービスは、プラスチック成型加工企業の情報を細やかに掲載することで、製造工場を探している商社・メーカーとプラスチック成形加工企業とのマッチングを促すものとなっている。

同社は今回調達した資金をもとに、国内の新拠点を設置し、「Sotas工程管理」の導入先拡大を目指したい考えだ。また、「Sotasデータベース」については大幅な機能アップデートを実施予定。さらには現行プロダクトと連携可能な新プロダクトの開発も行う考えで、エンジニアを中心に、セールスなどの人材採用も強化していくという。元リリースはこちら

【プレシリーズA】月面探査車「YAOKI」を開発するダイモン、総額1.4億円の資金調達を実施(2023年7月13日発表)

Credit : 同社プレスリリース

月面探査車「YAOKI」を開発する株式会社ダイモンは、プレシリーズAラウンドで総額1.4億円の資金調達を行った。今回の調達はエクイティファイナンスと融資により実施。エクイティファイナンスでは、株式会社ケップルキャピタルが運営するファンド・ケップルDX1号 投資事業有限責任組合が引受先となり、融資は複数の金融機関が行っているという。

ダイモンは、重量がわずか500gという超小型・超軽量の月面探査車を開発。安価で高頻度に利用できる月面実験プラットフォームとしてサービス提供を行い、国際的な月面開発への貢献を目指している。

世界の宇宙開発では、月面基地の建設などが計画されている。月の開発を進めるためには、月面探査とさまざまな要素技術の月面実証が必要不可欠だが、現在は月への輸送コストが1kgあたり約1億円と高額になり、実験失敗時の損失リスクも膨大になっている。同社は「YAOKI」によりそのような課題を解決し、月面での実証実験の加速に貢献する。今後はまず、2023年秋以降に米Intuitive Machines社の月着陸船Nova-CにYAOKIを乗せ、地球からのリモート操作による月面走行と月表面の接写画像データ取得などを行う予定。また、2024年以降に米Astrobotic Technology社とのプロジェクトも控えているという。これらの月面ミッションに向けて、同社は今回調達した資金を活用しながら、さらなる技術開発を加速させる考え。元リリースはこちら

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【シリーズA】開発・学習段階AIの自動耐性テスト製品などを手がけるCitadel AIが5.2億円の資金調達を完了(2023年7月12日発表)

Credit : 同社プレスリリース

信頼できるAI実現のための独自ソリューションを提供するCitadel AIが、シリーズAで第三者割当増資により総額5.2億円の資金調達を実施した。引受先は、東京大学協創プラットフォーム開発株式会社、Coral Capital、ANRI株式会社、サントリーホールディングス株式会社、三菱UFJキャピタル株式会社ならびにそのファンド。

2022年末より大きな話題を集めている生成AI。急速な発展を遂げる中で、AIによる誤った出力やセキュリティ・バイアスなどの課題が明らかになってきており、世界各国はAIの信頼性に対する懸念から法規制などの議論を進めている現状がある。特にEUは各国のそのような動きに先駆けて、AI規制法案(EU AI Act)を採択。人間の生命や安全・尊厳にかかわるハイリスクAIに対して、リスク管理プロセスの確保やユーザーの情報開示、技術的な適合検査などの規制を行うことになる。また、日本でもAI戦略会議が発足し、議論を進めている。

同社はそのような環境に対し、開発・学習段階のAIの自動耐性テストを行う「Citadel Lens(シタデル・レンズ)」、運用段階の自動モニタリングを行う「Citadel Radar(シタデル・レーダー」)という、2種類の製品を提供。開発中のAIに潜むリスクを自動で瞬時に検出し、その原因を人間に分かりやすい形で可視化する。

開発には、元Google BrainやトヨタなどでハイリスクAIシステムの設計と運用などを担ってきた世界のエンジニアが結集。同社製品は、国際的な規格開発とその認証分野で世界をリードするBSI(英国規格協会)にも採用されており、今後は医療機器や自動車、与信審査等の分野におけるハイリスクAIに対して、技術検証や法的適合性を検証するツールとして海外でも広く使用されていくと考えられる。

今回調達した資金は、同社の主力製品の対象を生成AIなどの最新AIへと拡充し、各国の法制度やISO標準に対する適合性テスト機能の搭載を進め、グローバル市場への事業展開をさらに加速させるために活用していくという。元リリースはこちら