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複雑性の高いサービス産業のDXで日本のGDP向上を目指すミツモア

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カメラマンやリフォーム業者、HP制作、税理士などの士業、日常の中から仕事まで、サービスの事業者を見つけるのに困った経験は誰にでもあるのではないだろうか。300以上のサービスの見積もりを自動化し、ぴったりな事業者の見積もりを提示してくれる見積もりプラットフォーム、それがミツモアだ。

アルゴリズムとAIを駆使して事業者にも依頼者にもベストマッチを提供し、お互いに無駄な時間や手間が減ることで、事業者はサービス提供にかけられる時間が増え、依頼者も本当にやりたいことに着手する時間が増える。受発注のわずらわしさが無くなり、生産性が上がったり余暇時間が増えたりすれば、日本のGDPは増え、人生の楽しみ方も広がる。すべての人が自分らしい人生を歩んでほしい。そんな思いではじまったミツモア。

代表取締役CEOの石川彩子(いしかわ・あやこ)氏にこれまでのお話を伺った。

複雑性の高い見積もり分野の自動化にあえて挑戦

これまでのキャリアと、起業のきっかけを教えてください。

東京大学の法学部を卒業、卒業後、ベイン・アンド・カンパニーでのコンサルタント経験を経て、ペンシルバニア大学ウォートン校MBA取得。その後、シリコンバレーのEC企業で開発管理や経営管理業務を任されていました。帰国後、2017年2月にミツモアを共同創業しています。

家庭の事情で、幼い頃から日本と中国を行き来するような生活を行っていました。当時、中国はまだ水洗トイレの整備も進んでいないような頃で、子供心に、日本というのはなんて豊かな国なのだろうと思っていました。一方、成長してくるとその様子は変わってきて、日本のGDPは中国に劣後するように。

就職してコンサルティング・ファームに入り、いざ日本の案件を手掛けるようになると、ゼロ成長に苦しんでいるクライアントが多くいらっしゃいました。一方、他国の案件はもっとポジティブなものが多い。最盛期の日本と比較すると、現在の日本はどうしてこうも消極的なのだろうと色々と調べると、労働生産性の低迷が主因なのではという結論に到達しました。まずは労働生産性の高い国の状況を見てみようと思い、留学後にシリコンバレーのスタートアップで働いてみたのですが、アメリカと日本のITのギャップにショックを受け、日本に戻ってきて起業しようと決めました。

サービス産業の見積もりの改善に取り組もうと思ったのは、DX(デジタルトランスフォーメーション)が最も進んでいない領域であると感じたからです。例えば、定型業務中心で、定価設定のある飲食であればオンライン予約などのサービスが複数存在します。一方見積もりというのは、条件が複雑かつ個別設定で、事業者によって提示金額も異なる。提示側も、受け手側も、定型化し切れないので自動化が難しい。だからこそ、そこに挑んでいる企業がいなかったわけですが、誰もが難しいと思う領域こそ改善の余地がある、そう思ってこの分野で「ミツモア」というサービスを興すことにしました。

起業して特に大変だったことをお伺いできますか。

起業すると、98%くらいは大変なことで構成されます。まず、起業にあたっても、共同創業者の柄澤史也(からさわ・ふみや、取締役CTO)がいなかったらきっと株式会社ミツモアを起業することはできなかったでしょう。私の知り合いに、「あなたが知っている中で最も優秀なエンジニアを紹介してください」と相談して、候補に挙がってきた方が柄澤でした。彼は、これまでも起業したいと思っていたけれども、一緒にやりたいと思えるほどスケールの大きいプラットフォームを目指している人に出会えていなかったそうです。描くビジョンの大きさに共感してくれ、一緒にサービス構築をしていくことになりました。

彼はヤフーで4年間働き、ヤフオクにてプロダクト開発、オフショアマネージメントに携わったのち、CTO室に異動。ヤフー全体を横断した技術支援などを担当した後、ミツモアの共同創業者兼取締役CTOとしてジョインしてくれました。今のビジネスモデルに辿り着くまで試行錯誤の連続だったのですが、2019年12月にリリースした「自動応募システム」を彼や開発チームが牽引してくれたことが大きな転機となりました。

創業当初はアメリカのThumbtack(サムタック)というサービスを参考にしながらプロダクトを構築していました。2年ほど経過すると、アーリーマジョリティまでは普及できたものの、その先の利用者拡大に限界を感じました。事業者側にヒアリングしてみると色々と課題が見えてきまして、元々広告型のビジネスモデルでやっていたため、CPA(顧客獲得単価)がよい事業者と悪い事業者がはっきり分かれてしまう状況でした。また、問い合わせがあると事業者が自身で見積もりを出すモデルになっていたため、事業者への負担が大きかったことが分かりました。これらを改善すべく、従来の応募課金モデルから成約課金モデルへの変更、見積もり作成の自動化などに対応しました。結果、登録事業者が増加したのですが、この時に大きな改善ポイントとなったのが、各事業者から依頼者への返信を自動化する「自動応募システム」。確定申告シーズンを前にして税理士への見積もり発注が殺到する時期でした。一回一回見積もりを作成すること自体も中小企業や個人事務所には大きな負担。そこで、依頼者の依頼内容に応じて見積もりを自動で作成し、カスタマイズされたメッセージと共に送るというシステムを入れたのです。これで成約率が飛躍的に上がりました。とはいえ、まだこのシステムが全サービスの7、8割ほどの適用ですし、今後適用範囲を拡大しつつ、現在の約300サービスをさらに増やしていきたいと思っています。

資金調達は、プロダクトがない状態からスタートし、1ヶ月でエンジェルからシード調達を行いました。米国時代に知り合ったエンジェルから辿っていきました。次のラウンドでは、プラットフォームへの理解のあるベンチャーキャピタルにも参画いただいています。

組織風土、採用について伺えますか。

ミッションは「事業者の活躍をあと押しし、依頼者にぴったりの価値を届けることで日本のGDPを増やす」です。バリューは四つ。「依頼者ドリブン」「テクノロジーでシンプルに」「エンジンであれ」「積極コミュニケーション」。良いものを作る、社会のためになりたいという意識を強く持ちつつも、弊社が行っているのは営利事業なので、売上のことも考えられるという両軸のバランスが良いことを大事にしています。採用の時に聞くようにしているのは「失敗したこととリカバリーの方法」。スタートアップというのは必ずネガティブ局面がやってきますが、ネガティブな時ほど人間性が現れるもの。まず、失敗したと言えること。自分が失敗したと認めること自体大事ではありますが、そもそも失敗したことを認識していないという無自覚な人もいます。客観的に事実を把握できるか、そしてそこからどうリカバリーをしようとする方なのかをお聞きするようにしています。

グローバル展開についてはどうお考えですか。

ビジネスのフェーズとしてはまだ国内に目が向いています。欧米は既存サービスがシェアを取ってしまっているので、今後進出をするならば東南アジアでしょう。

社内のダイバーシティで言うと、ビジネス側は日本人が中心ですが、エンジニアは20人中7人が海外国籍の方々。欧米の方が多いです。海外エンジニア採用のサイトを利用しており効果が出ている印象です。

業務効率化が実現する日本の経済成長と幸福度増加

学生時代はどのように過ごされましたか。

法学部に在籍していた頃は官僚志望でした。政治や政策に関心があったものの、省庁への就職が自分の気性に合わないと感じ、新卒のタイミングでコンサルに入社しました。その後、ペンシルバニア大学のウォートン(MBA)に入学しました。一度アメリカで働いてみたいと思っており、実現するには留学で渡米するのが最もハードルが低かったというのもあります。

起業をしたことを後悔はしていませんが、つらいことが多いのでメンタルがもうちょっと強かったら良かったなとは思います。一番堪えるのは、利用者の方々からのネガティブなコメント。愛されるプロダクトを作れていないという事実が何よりつらいです。それでも、なんとかしなきゃと無我夢中で走っていくと、トンネルの先に光が見えてくるというのが起業です。まるでマラソンのようですね。

プレシード期からシード期のスタートアップへメッセージをいただけますか。

スタートアップしたいと思うのなら、とりあえずやってみたらいいと思います。日本では失敗しても死ぬことはありません。やりたかったと後悔しながら一生を終えるくらいなら、やってみて後悔した方が良いです。起業してやるべきことはたった一つで、ただただユーザーに向き合うこと、これに尽きます。今、社員は200名の規模にまできましたが、まだまだこれからのフェーズであると感じています。

人々の生活を想像もしなかった形に変える、ゲームチェンジャーこそがスタートアップです。上手くビジネスを作ってサクっと上場することを目指す人もいますが、小さくまとめる必要は全然なく、起業するからにはぜひ自分の作りたい世界観にこだわっていただけたらと思います。

最後に、これから作りたい世界観と、読者へ一言お願いいたします。

事業者と依頼者が「ミツモア」を使うことで、依頼者は自分の依頼内容にどれくらいお金がかかるのかすぐにわかり、事業者はすぐクライアントが見つかる、そういう状態を目指しています。このプラットフォームを使うことにより集客が改善され、売上が上がり、受発注をもっとしようという気持ちが高まっていき、経済活動が活性化してくれたらと思っています。

バリューの一つである「テクノロジーでシンプルに」を略して「テクシン」と呼んでいるのですが、これは事業者、依頼者だけでなく、社内でも浸透させるようにしています。日々の時間の中で、本質的ではない作業時間を取り除くことができれば、本来やりたいことであるサービスの研磨やユーザーへ向き合うということがもっとできるようになります。効率化されることで仕事が減ると怖がる人もいますが、そんなことはないのです。日々の生活がもっとより良い幸せなものになるよう、日々の業務の効率化を浸透させ、やがて日本のGDP増加へつなげていければと思っています。