2024年3月8日から2024年3月14日に発表されたスタートアップニュース、資金調達情報のうち、JP Startups(ジャパスタ)が注目する案件をピックアップしてお届けいたします。
編集部コメント
スタートアップの中心地が、レガシー産業のDXから、Deep Tech(ディープテック) / ソーシャルインパクトへ移りつつあると感じる昨今だが、今週は給食ITのPECOFREE、従業員の唾液を採取しゲノム解析することで最適なオプションを提示する健保向けDXのZene、レアメタルの高効率抽出を行うエマルションフローテクノロジーズ、心電図解析のカルディオインテリジェンスの4社をピックアップ。
エコシステム関連では、JP Startups(ジャパスタ)でも何度か取り上げているTakeoff Tokyoの4月開催グローバルピッチイベントと、ライフサイエンス領域スタートアップのアメリカ進出を支援するKicker AccelFitにフィーチャー。日本のインパクトスタートアップが、海外投資家やビッグプレイヤーの目に留まり、出資やM&Aにつながることを願う。
スタートアップニュース
世界を目指す起業家向けピッチイベント「Takeoff Tokyo」、4月10日〜11日に開催決定(2024年3月14日発表)
TAKEOFF株式会社は、世界を目指す起業家向けのピッチイベント・カンファレンス「Takeoff Tokyo」を、2024年4⽉10⽇(水)、11 ⽇(木)の二日間にわたり、東京ビッグサイトで開催することを発表した。
「Takeoff Tokyo」は2023年6月に東京・天王洲アイルの寺田倉庫にて初開催され、二度目の開催となる今回は、前回よりも倍以上の規模を予定。スタートアップ約50社によるピッチコンテストと、約50名の先輩起業家によるパネルディスカッションの二つのステージが設けられるほか、スタートアップやパートナー企業のブース出展が予定されている。チケットは公式ウェブサイトにて発売中。元リリースはこちら。
JP Startups(ジャパスタ)では、2023年の冬にヘルシンキ、ベルリン、パリの3都市で開催された予選ピッチイベント「Tokyo Pitch Night」をメディアとしてサポート、「Tokyo Pitch Night」の概要や会場の様子を掲載している。そのほか、前年度の「Takeoff Tokyo」の様子や、主催者であるアンティ・ソンニネン(Antti Sonninen)氏へのインタビュー記事も掲載中。
イベント概要
- 日時:2024年4月10日(水)、11日(木)10時-18時
- 会場:東京ビッグサイト 南3ホール 他
- メインイベント:
・グローバルでのビジネス展開・資金調達を見据えたアーリーステージのスタートアップ向けのピッチコンテスト
・世界で活躍する起業家・投資家などによるパネルディスカッション
・商談エリアやブース出展
・2,000人の来場者 - サイドイベント :
・Startup Pitch Training
・ハッカソン「Builders Weekend」
・Opening Party
・起業家、投資家、パートナー企業イベント等 - チケット購入方法:公式ウェブサイトにて発売中
アメリカ進出アクセラレーション・プログラム「Kicker AccelFit 」を2024年4⽉に実施、⽇本のライフサイエンス・ヘルスケア企業を⽀援(2024年3月14日発表)
アーリーステージヘルスケアVCであるKicker Ventures、ライフサイエンス領域のアメリカ進出アクセラレーターWorldUpStart、およびアメリカ市場開拓をサポートするKievit Scientificは、2024年4⽉後半から6⽉にかけて、新しいアクセラレーション・プログラム「Kicker AccelFit」 を開始することを発表した。
「Kicker AccelFit」は、⽇本のライフサイエンス・スタートアップが⽶国市場に進出する際に直⾯する多くの挑戦を克服すべく、参加企業⼀社⼀社に合わせた個別指導や、アメリカで活躍するライフサイエンス・ヘルスケア業界の専⾨家による⽇本語セミナー、実際のアメリカ市場での活動を⽀援するための実践的なセッションなどが用意される。
対象となる企業は、アメリカ進出に興味を持つ医療機器、創薬、診断、デジタルヘルス、アグリ、フード関連のスタートアップから大企業まで。参加費は一社あたり3,500ドル(複数人参加可能)、応募の締め切り日は3⽉29⽇(金)となっている 。オンラインでの説明会やプログラム詳細については公式サイトより確認。元リリースはこちら。
資金調達情報
【シリーズA】学生向けフードデリバリーアプリ「PECOFREE」、総額1.7億円のシリーズA資金調達を実施(2024年3月8日発表)
「学校」と「給⾷会社」をマッチングする⾷のプラットフォーム、学⽣向けフードデリバリーアプリ「PECOFREE(ペコフリー)」を運営する株式会社PECOFREEが、シリーズAラウンドで第三者割当増資により総額1.7億円の資⾦調達を実施した。引受先は、三井住友海上キャピタル株式会社をリードインベスターとして、三菱UFJキャピタル株式会社、 NES株式会社、株式会社ちゅうぎんキャピタルパートナーズ、フューチャーベンチャーキャピタル株式会社(ほうわ創業・事業承継支援ファンド)、大分VCサクセスファンド6号投資事業有限責任組合。
PECOFREEは、企業向けオフィスランチ、幼稚園給食また中学校給食、高校食堂、および社員食堂など、産業給食の製造及び販売に従事してきた代表の川浪氏が2021年に設立。これまでの経験を通じて発見した学校の食事に関連する多くの課題を解決すべく、学校×給食会社×ITを組み合わせた新しい食のソリューションを提供することを目指す。「PECOFREE」は2021年4月のサービス開始以来、約3年間で学校、学童保育、企業を含む500施設以上に導入が決定しており、保護者の弁当づくりの負担軽減や生徒の昼食難民問題などの課題解決に貢献している。
今回調達した資金は、PECOFREEのシステム開発やマーケティング、人材採用に充て、今後も児童・生徒・学生と保護者、また学校・学童施設が抱える食事に対する課題を解決すべく、更なる事業拡大を目指していきたい考え。元リリースはこちら。
【シリーズB】レアメタルリサイクルベンチャーのエマルションフローテクノロジーズ、13.5億円の資金調達を実施(2024年3月8日発表)
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)発のレアメタルリサイクルベンチャーである株式会社エマルションフローテクノロジーズ(以下、EFT)は、Value Chain Innovation Fund(運営者:Spiral Innovation Partners株式会社)をリード投資家として、既存投資家6社に新規投資家7社を迎えた計13社を割当先とする第三者割当増資を実施するとともに、日本政策金融公庫からの3億円の融資により、シリーズBラウンドにて合計13.5億円を調達したことを発表した。これにより、累計調達額は約20億円に達した。
シリーズBラウンドの第三者割当増資引受先
- Valuechain Innovation Fund投資事業有限責任組合(運営者:Spiral Innovation Partners株式会社) ※
- 本田技研工業株式会社
- リアルテックファンド4号投資事業有限責任組合
- SMBCベンチャーキャピタル7号投資事業有限責任組合
- 三菱UFJキャピタル8号投資事業有限責任組合
- ニッセイ・キャピタルサステナビリティ課題解決ファンド1号投資事業有限責任組合 ※
- 株式会社MOL PLUS ※
- 静岡キャピタル9号投資事業有限責任組合 ※
- みずほ成長支援第5号投資事業有限責任組合 ※
- 未来創造投資事業有限責任組合 ※
- NCBベンチャー投資事業有限責任組合 ※
- OCP2号投資事業有限責任組合
- KDDI Green Partners投資事業有限責任組合(運営者:SBIインベストメント株式会社)
※ 新規株主7社
EFTは、原子力機構が開発した革新的な溶媒抽出技術である「エマルションフロー」を活用した事業を展開するスタートアップ企業。同社のコア技術であるエマルションフローは、従来の溶媒抽出技術と比較して、低コストで高効率に高純度な元素分離を可能にする革新的な技術として、レアメタルを取り巻く社会課題の解決に寄与できると期待されている。さらに、エマルションフローを活用することで、廃棄されたリチウムイオン電池(LIB)などに含まれるコバルトやニッケル、リチウムといったレアメタルを低コストかつ低環境負荷で高純度に回収する技術を確立し、回収したレアメタルをハイテク産業に直接再利用する「水平リサイクル」の事業化を実現。そして、革新的な技術をレアメタルの分離回収だけでなく、工場排水に含まれる油分やPFAS(有機フッ素化合物)といった環境汚染物質の分離回収にも活用することで、資源循環と環境保全の両立と調和を実現する社会づくりに貢献している。
今回調達した資金によって、リチウムイオン電池のレアメタルリサイクルのための商業プラントの開発を加速するとともに、エマルションフローを普及するためのトータルサポート事業とグローバル展開の強化に取り組んでいきたい考え。元リリースはこちら。
【ラウンド不明】デジタルヘルスケア分野のスタートアップ Zene、資金調達を実施(2024年3月8日発表)
健康保険組合・一般事業者向けのゲノム解析サービス「Zene360」を提供する株式会社Zeneは、既存株主であるSpiral Capital株式会社および、今回新たにパナソニック株式会社がSBIインベストメント株式会社と共同で運営するコーポレートベンチャーキャピタルファンド(通称:パナソニックくらしビジョナリーファンド)を通じて新株発行による資金調達を行い、累計調達額が約4.01億円(デット含む)に達したことを発表した。
Zeneは、「ゲノムをより身近に、ゲノムがあたりまえの世界に」をビジョンとし、個々人の健康増進と医療の質の向上に貢献することを目指して、ゲノム解析技術を駆使したヘルスケアソリューション「Zene360」を提供。個々の遺伝子情報を詳細に分析し、健康リスクや疾患の傾向の予測を可能にしている。「Zene360」はすでに200以上の健康保険組合を中心とする法人に有料導入されており、個別化医療ヘルスケアの基盤となる社会インフラ構築に貢献している。
今回調達した資金は、経営体制の安定化、情報管理体制の強化、および営業体制の拡大に充てる方針で、特定保健指導と「Zene360」の連携やゲノム情報を活用した新規統合プラットフォームの開発に注力していくという。さらに、情報管理体制の最適化を通じて、顧客データの安全とプライバシー保護に対するコミットメントを一層強化したい考え。元リリースはこちら。
【ラウンド不明】心電図の診断支援AIを開発するカルディオインテリジェンス、資金調達を実施(2024年3月11日発表)
株式会社カルディオインテリジェンスは、このたびSamurai Incubate Fund7号投資事業有限責任組合(運営:株式会社サムライインキュベート)を引受先として、資金調達を実施したことを発表した。
カルディオインテリジェンスは「⼼臓病診療を受けられない患者さんを世界からなくす」をミッションに2019年に創業。心臓病の診断精度や診断効率の向上に貢献可能な、AIを活用した「長時間心電図解析ソフトウェア SmartRobin AI シリーズ」を展開している。不整脈の中でも心房細動は脳梗塞の主な原因とされ、長時間心電図検査などによる早期診断・治療により予防が可能な一方で、非専門医にとっては発見が難しく、心電図解析に多くの手間と時間を要するなどの課題がある中、「 SmartRobin AI シリーズ」は、心電図データをクラウド上にアップロードするだけで、24時間分の心電図波形で約5分と短時間で自動解析を行い、心房細動を特定できる。
今回調達した資金により、SmartRobin導入数拡大に伴うシステムおよび販売促進体制の強化、承認申請中のAI医療機器の新サービス構築および医療機関への展開を推進したい考え。元リリースはこちら。
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