EN

JP STARTUPSJP STARTUPS日本発スタートアップを紹介、応援するメディア

The web magazine that introduces and supports Japanese startups

日本のスタートアップエコシステムをさらにグローバルへ!「Slush Tokyo」を仕掛けたアンティ氏が、次なる「Takeoff Tokyo」へかける思い

Share:

2010年以降に何らかの形でスタートアップに関与していた人であれば名前を聞いたことが、あるいは直接参加したことがあるであろう「Slush」。元々はフィンランドで開催されていたスタートアップカンファレンスであるが、2017年には東京でも「Slush Tokyo」が行われた(もちろん筆者も当時現地参加している)。

新型コロナウイルスも5類へと移行し、いよいよオフラインイベントが再興しようという2023年だが、この6月に、なんと、この「Slush Tokyo」の仕掛け人が新たなイベント「Takeoff Tokyo」を開催するという。「Slush Tokyo」との違いはなんなのか、日本に期待しているポイントはどこなのか。アンティ・ソンニネン氏ご本人に話を伺った。

2010年代、日本におけるスタートアップブーム火付け役となった「Slush Tokyo」

Credit:Takeoff Tokyo

アンティさん、よろしくお願いします。まずは簡単にこれまでのご経歴を伺えますか。

アンティです。私はフィンランド出身で、2007年に東京大学への留学生として初来日した後、2013年には、ゲーム「アングリーバード」の提供元である「Rovio Entertainment」のカントリーマネジャーを務めました。

スタートアップカンファレンスである「Slush Tokyo」は、元々は私の出身地であるフィンランドで2008年に始まったものです。私自身も参加者やボランティアとして関わっており、縁があって2015年には初の日本開催のCEOを務めることになりました。

「Slush」はただのイベントではなく、「起業ってカッコいい!」と思ってもらうムーブメントと捉えていたそうですが、実際に開催されてみてその手応えはいかがでしたか。

私は2023年現時点で初来日から約10年以上経ちました。今でこそ、スタートアップはメディアでも取り上げられ、社数やそこで働く人の数も増えてきていますが、当時はまだ新しく、一部の人にしか関係がないものとして受け止められていました。

それが「Slush Tokyo」をやってみて、スタートアップの経営者や従業員以外の、投資家や大手企業の従業員にも参加してもらうことができ、スタートアップの熱量を肌で感じていただけたと思います。実際、スタートアップ関連のイベントはこの10年でかなり増え、認知がずいぶん拡大しましたね。

Slush ではなく「Takeoff Tokyo」として開催する理由

Credit:Takeoff Tokyo

今回は「Slush」シリーズではなく、「Takeoff Tokyo」という名前で新たなイベントとして企画されていますね。企画背景などをお伺いできますか。

日本のスタートアップエコシステムをもっとグローバル化したいというのが最も強い動機になります。

今から約34年前、1989年においては、世界の株式市場時価総額ランキングTOP50のうち30社は日本企業でした。一方、2023年の同ランキングに日本企業は一つもありません(※1)。日本のスタートアップへのVC投資額自体は増加してきていたり、内閣でスタートアップ大臣の任命が行われたりと、潮流はできているのに、海外で活躍できている企業はまだ少ないということになります。ムーブメントをつくるだけでは足りない、実際に日本のスタートアップを押し上げる新たな試みが必要だ、と考えました。

グローバルでユーザーが集まるサービスを生み出すには、他国で人気が出たサービスの日本ローカライズではなく、オリジナルのアイデアや、それらを生み出す土壌が必要です。それを強調するためにも、「Slush」というフィンランド生まれのイベントシリーズではなく、日本から「Takeoff」する、新たなものにしようと考えました。

※1 STARTUP DBより

今回の「Takeoff Tokyo」では、日本のスタートアップエコシステムのグローバル化に必要な3要素が織り込まれているとか。それぞれ詳細を伺えますか。

はい、次の三つです。まずは「Funding」。日本のスタートアップによる資金調達年間金額はこの10年間で10倍(※2)になりました。それでも日本の人口を鑑みれば、一人当たり調達額は、アメリカと比べるとまだまだ成長余地があります。それに向け、今回の「Takeoff Tokyo」では、投資家に英語でピッチし、海外VCからも調達ができる座組をつくっています。

二つ目は「Talent」。日本は、観光都市としては世界トップクラスの人気(※3)を誇り、多くの外国人がやってくる国になっています。一方でタレントランキングをみると、年々順位が下がってきている。(※4)つまり観光で訪れるには良いが、働く環境としてはあまり評価してもらえていないということになります。イノベーティブで優秀な人材はアメリカのシリコンバレーのスタートアップやGAFAMに集中してしまっている。世界トップクラスの人材に日本で働くことへの憧れを持ってもらうことが日本からも百兆円企業をつくるときに必要です。今回のイベントもその点を意識した設計をしています。

三つ目は「Ambition」。未来を牽引する世代により多くの機会と責任を与えることは、上記二点のような大きな変革を起こすためには不可欠だと考えています。現状、各国の働き世代を対象にとったアンケート(※5)によると、日本人の若者は「将来への希望はあまりない」と回答している一方、自国のために役立ちたいという気持ちは強いことがわかります。日本の若者にも、未来に希望を持って意欲的に事業を推進するポテンシャルがあるということです。そういった人材をさらに輩出するため、様々なバックグラウンドの人に参加してもらえるような仕掛けをしています。

※2 一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会より
※3 日本経済新聞・NIKKEI ASIAより
※4 共同通信記事より
※5 内閣府・特集 今を生きる若者の意識~国際比較からみえてくるもの~より

アンティさんは日本のどういったところへ期待してくださっているのでしょう。

世界の中で、ここまで安全で便利で、社会インフラが整備されている国はほとんどありません。インフラがすでに強いのなら、あとはイノベーションに向けてマインドセットを変えるだけなんだと思うんです。

私の出身国であるフィンランドは、建国から約100年。子供のころは、自国に対してスタートアップに強い国であるというアイデンティティはそこまでありませんでしたが、「ノキア」「アングリーバード」「スーパーセル」「Slush」と、スタートアップエコシステムが出来上がっていく成功事例を見てきたことで、希望を抱くメンタリティが備わったのだと思います。日本はすでにサポートシステムは充実してきました。あとは、グローバルスタートアップのロールモデルが増えていけば、環境は大きく変わると信じています。

日本にも「Preferred Networks」「スマートニュース」「SmartHR」のようなユニコーン(※6)や、上場を果たした「freee」「Money Forward」「メルカリ」などのプレイヤーがいますが、そこはどうご覧になりましたか。

時価総額が高いスタートアップが登場していること自体はとてもすばらしいです。一方、こういったスタートアップの海外での認知や売上比率が高いかというと、まだ日本がベースになっています。GAFAMのようにグローバルでマーケットシェアが高いプレイヤーになっていくと、日本のスタートアップエコシステムもグローバル化したといえるのだと思います。

※6 CB Insightより

やはり英語がボトルネックなのでしょうか。それとも文化的背景でしょうか。

個人意見になりますが、上場前のロードショーを英語で行い、海外機関投資家を入れられるかというより、企業文化がグローバルであるかの方が影響が大きいと思います。

数年前に、日本のスタートアップが海外出張へ行く時に同行したことがあったのですが、当時は同時通訳を連れていくのが主流でした。一方、私がアングリーバードで働いていたころは、会議に英語圏の人が入ってきたら自然と英語に切り替えて意見交換をしていました。英会話を行う、誰かにアウトソースするという発想ではなく、あくまでビジネスを進める上でのコミュニケーションであることを重視することが大事だと考えます。

特にWeb3に携わるZ世代のプレイヤーは、その傾向を強く感じますね。

そうですね。新しいものへの抵抗感が少ない若手世代はそういった環境に馴染んでいきやすいことに加え、Web3やAIは技術もビジネスも変遷が早いので、英語で情報を仕入れないと潮流についていくのが難しい。翻訳記事を待っていたら、その分後手に回ることになります。意欲的なプレイヤーが多く、個人的にも強く期待している領域ですね。

一方、Web3領域に対して日本では規制が厳しく、海外での法人化やビジネス展開を先に手がける起業家も少なくありません。それでも、シリコンバレーの起業家の出身国が多様であるように、日本の起業家が各国で自然と活躍する環境ができればスタートアップエコシステムのグローバル化は成功したと言えるでしょう。日本から飛び出した彼らが活躍することで、彼らの出身国である日本に再び注目も集まるでしょうし、彼らが連続起業を祖国で行うという潮流ができれば、結果的に日本経済の成長に寄与しますからね。

ピッチコンテストへの応募とチケットのアーリーバードは2023年5月17日(水)まで

Credit:Takeoff Tokyo

それでは最後に改めて、イベントの概要と、意気込みをお願いいたします。

今回のイベントは、2023年6月8日と9日の2日間、寺田倉庫での開催となります。参加者は800名規模。メインの言語は英語となり、日本居住の参加者に加えて、20%程度はグローバルから渡航しての参加です。スタートアップと投資家の比率は半々くらい。VCだけでなく大手企業の新規事業担当者やCVC担当者も参加します。

ピッチコンテストについてはアーリーステージの企業が応募できるようになっていますね。

はい、1日目に予選、2日目が本選となっています。審査員が豪華なこともあり、すでに結構な数の応募がありますが、締め切り直前には駆け込みでさらに応募があると思います。
設立3年以内、英語でピッチできるチームであれば応募が可能です。2023年5月17日が締め切りになります、お待ちしています。

※ピッチコンテストへの応募にはSTARTUP PASSの購入が必要です。

ステージでのパネルディスカッションも充実しているようですね。

はい、経験豊富なスタートアップや投資家からのナレッジシェアになります。すでにウェブサイトに掲載されている方々の他にも登壇者は増える予定で、イベントの2週間前にはタイムテーブルを公開する予定です。2日とも多様なテーマのパネルディスカッションをノンストップで実施します。他には出展ブースもあり、そこではビジネスマッチングを行っていきます。

Takeoff Tokyo First Speakers On Stage

サイドイベントも実施されるとか。こちらはハッカソンですね。

6月2日から4日の3日間で、サイドイベントとして「Builders Weekend」というハッカソンも行います。実は昨年12月に、1回目として30名規模でオンライン実施をしまして、今回は2回目となります。渋谷のGOLDEN EGG(対面型)で、80名規模となります。パートナー企業数社からAPI提供があり、その技術に沿ったサービス・プロダクトのプロトタイプ開発を目指します。DAY3では最終審査を行って、受賞したチームへはスポンサー企業のサービスを特典としてつけるなどの賞品も想定しています。このサイドイベントをきっかけにエンジニア採用が進むといいなという想いもあります。

参加費は無料で、個人でもチームでも審査に通ればOKです。申し込み数が上限を超過した場合は抽選になるのでお早めに。

Builders Weekend

  • 開催日程:2023年6月2日(金)〜6月4日(日)
  • 申し込み締め切り:2023年5月26日(金)
  • 申し込みURL:https://www.buildersweekend.co/

「Takeoff Tokyo」「Builders Weekend」ともに、アフターコロナで活気あふれる機会となりそうですね!

はい、私自身も楽しみにしています。「Takeoff Tokyo」の早期割引も、ピッチ募集の締め切りと同じく、2023年5月17日まで。寺田倉庫のキャパシティを考えると1,000人近く入れられそうではありますが、開催が近くなってくると一気に申し込みが増えるので、ぜひお早めに申し込みください。

楽しみですね、ありがとうございました!

Takeoff Tokyo

  • 開催日程:2023年6月8日(木)・9日(金)
  • 開催場所: 寺田倉庫 G1-5F
  • URL: https://takeoff-tokyo.com