2023年9月1日から2023年9月8日に発表されたスタートアップニュース、資金調達情報のうち、JP Startups(ジャパスタ)が注目する案件をピックアップしてお届けいたします。
編集部コメント
資金調達に関するプレスリリースの配信が比較的多かった今週。全体としては物流領域のDX推進に挑むスタートアップや、金融・会計まわりのテック系スタートアップ、フードロスや持続可能な農業に挑むスタートアップ、AI関連スタートアップの資金調達が目立った。今回はその中でも、AIと金融、フードロス、農業に焦点を当て、LLMソフトウェアの開発を行うSpiral.AI、AIによる複雑な運用計画の自動最適化ソリューションを手がけるALGO ARTIS、「かくれフードロス」の解決に挑むASTRA FOOD PLANと農業DXに取り組むAGRI SMILE、金融サービステックのモニクルを取り上げる。
スタートアップニュースは3件。独立系VCのmintが創業準備中・創業期の起業家向けに無料オフィス支援プログラム「FLAP」を開催し、その第22期の募集がスタートしている。また、女性起業家に特化した起業家育成コースの開催や防災・気候テックスタートアップのカンファレンス開催情報をお届けする。
スタートアップニュース
独立系VCのmint、創業準備中・創業期の起業家向け無料オフィス支援プログラム「FLAP」の募集を開始(2023年9月5日発表)
プレシード・シード期に特化した独立系VCのmintが、創業準備中・創業期の起業家を対象とした無料オフィス支援プログラム「FLAP」の第22期における参加者の募集を開始した。同プログラムは最大9社を採択予定。採択された場合、渋谷の「Plug and Play Shibuya powered by 東急不動産」を活用したプランか、mintの保有するコワーキング・オフィス「GUILD SHIBUYA」でリモート登記を行うプランを選び、どちらも6ヶ月間は無料で利用できる。
「FLAP」は、2018年8月よりスタート。これまでに97社の起業家や起業準備中の人材がmintの運営するコミュニティに参加しており、VCやエンジェル投資家からの資金調達ならびにM&Aの実績があるという。また、mintからも15社に対して出資を行っている。オフィスまわりの支援を無料で受けられるだけでなく、mintのつながりを活かした起業家や各分野の専門家、先輩経営者とのネットワーキングも可能。また、mintからのメンタリングを受けられるほか、希望者にはmintによる最大5,000万円の出資検討機会も獲得できる。
プログラム募集概要は以下の通り。元リリースはこちら。
募集概要
- オフィスHP
① Plug and Play Shibuya powered by 東急不動産:https://pnp-tokyu.net
② GUILD SHIBUYA:https://www.tokyu-fudosan-hd.co.jp/news/pdf/1608 - 入居期間:2023年10月1日~2024年3月31日
- 応募条件
1. 会社を設立して6ヶ月以内、または6ヶ月以内に会社設立を予定している
2. IT関連のスタートアップ
3. 「FLAP」コミュニティに積極的に関われること - 募集期間:2023年9月5日~2023年9月15日
- 応募フォーム:https://forms.gle/55xX6N51egu11B2D7
シリコンバレーの知見を活かした、女性特化の起業家育成コース「Amelias Summit」を東京で10月に開催(2023年9月5日発表)
日本の女性起業家を支援する一般社団法人Women’s Startup Lab Impact Foundation Japanの日本活動団体「Amelias(アメリアス)」は、経済産業省の起業家等の海外派遣事業「J-StarX」に参画し、国内プログラムとして「Amelias Summit」を2023年10月7日から9日にかけて東京で開催予定だと発表した。これにともない、全国からの参加者受付を開始。第二次締め切りは9月13日(水)まで、オンライン視聴の応募は10月7日(金)まで受け付けている。
「Amelias Summit」は2022年にスタートし、今年で2回目の開催。団体代表のAri Horie(堀江 愛利)は2013年にアメリカ・シリコンバレーで女性に特化したアクセラレーター「 Women’s Startup Lab (ウィメンズ スタートアップ ラボ)」を創業し、世界中の女性起業家を育成してきた人物。堀江氏が蓄積してきた知見とグローバルなネットワークを活用した独自プログラムをもとに、サミットが企画されているという。
プログラム内容は、アメリカの現役起業家によるセッションのほか、チームワークや戦略実行の効率化、AIを取り入れたマーケティングの生産性を高めるセッションなど、大きく三つのワークショップが提供される予定。少人数を基本とした議論やアイデア出しと最終日のメンターセッションによって、起業家が直面する課題と向き合い、具体的な解決策の検討まで進むよう設計されている。
応募概要は以下の通り。元リリースはこちら。
応募概要
- 応募対象者:年齢不問、性別は性自認が女性の方。すでに起業しており、事業のスケールを志す方やスタートアップを経営している方。
- 応募締め切り:第二次締め切り 9月13日(水)、オンライン視聴 10月7日(金)
- プログラム詳細:https://www.amelias.jp/summit2023
- 応募フォーム:https://bit.ly/AmeliasSummit
「防災テック・気候テック スタートアップカンファレンス2023」、オンライン配信で10月13日(金)に開催(2023年9月4日発表)
株式会社NTTデータ、株式会社Spectee、東京大学 未来ビジョン研究センターなど、防災・気候領域でビジネス・研究を行う企業やスタートアップが登壇する「防災テック・気候テック スタートアップカンファレンス2023」が10月13日(金)にオンラインにて開催される。
日本は世界的に見ても水害や地震、豪雪などの災害が頻発する災害大国であり、防災テックや気候テックに取り組むスタートアップが多数誕生してきた。防災に関する日本の最先端技術やノウハウは、世界においても需要が高まっている現状があり、防災テック・気候テックの国内スタートアップは盛り上がりを見せている。
今回のイベントでは、防災や気候変動対策の領域にテクノロジーでイノベーションを起こそうと挑戦しているスタートアップ5社が集結。ゲストスピーカーとしてNTTデータの中村 秀之氏、東京大学未来ビジョン研究センターの江守 正多氏が登壇予定で、災害・気候危機にスタートアップがどう向き合っていくべきなのかを議論する。
イベント概要は以下の通り。元リリースはこちら。
イベント概要
- 開催場所:オンライン(アーカイブ配信あり)
- 開催日時:2023年10月13日(金)13時~17時30分
- 料金:無料(事前登録制)
- 申し込みURL:https://resilience-tech.net/event
- イベントページ:https://resilience-tech.net/
資金調達情報
【シード】巨大言語モデルソフトウェアを開発するSpiral.AIが約8.3億円の資金調達を実施(2023年9月8日発表)
巨大言語モデル(LLM)のソフトウェア開発を行うSpiral.AI株式会社が、シードラウンドで第三者割当増資にて約8.3億円の資金調達を行った。引受先は、グローバル・ブレイン8号投資事業有限責任組合をリード投資家として、Spiral Capital Japan Fund2号投資事業有限責任組合及び既存株主であるインキュベイトファンド5号投資事業有限責任組合他複数のベンチャーキャピタルファンド、および複数の個人投資家。
日進月歩で進化を遂げるLLM。Spiral.AIは、LLMに特化した数少ないスタートアップとして、LLMの真の社会実装に向けたサービス開発・提供を行っている。具体的には、三つのサービスを開発・提供中。一つ目が「AIキャラクター」事業で、会話の正しさだけでなく、楽しさやワクワク感に焦点を当てながら、キャラクター性や個性を持ったAIと対話可能なサービス構築を目指している。二つ目が「Spiral.Bot」で、GPTをベースにカスタマイズ性の高い言語モデルプラットフォームを構築し、顧客問い合わせ応答のチャットボットなどの精度向上が実現可能となっている。三つ目が「Spiral.LLM」で、独自LLMの開発にも対応。LLMをローカルで運用できる体制をつくることで、セキュリティやコスト、回答速度、エッジ化など、さまざまなニーズに柔軟に対応することが可能。
同社は今回調達した資金をもとに、エンジニアや事業開発メンバーの採用、開発インフラの拡充を行うという。元リリースはこちら。
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【シリーズA】「かくれフードロス」問題に挑むASTRA FOOD PLANが資金調達を実施、累計2.2億円の調達額に到達(2023年9月6日発表)
独自開発の技術や装置で、未利用農作物などの「かくれフードロス」の問題に挑むASTRA FOOD PLAN株式会社は、シリーズAで資金調達を行ったと発表した。引受先は、PE&HR株式会社(埼玉りそな創業応援投資事業有限責任組合)をリード投資家に、シード期からの投資家であるIDATEN Venturesとアグリビジネス投資育成株式会社、三菱UFJキャピタル株式会社の計4社。今回の調達により、累計資金調達額は2.2億円に達した。
フードロスと言えば、一般的にはコンビニやスーパーなどで売れ残った食品の廃棄が思い浮かぶ。しかし、実は生産地で発生した規格外農作物や余剰農作物の処分、野菜の芯や皮、ヘタなどの食品ざんさもフードロスにつながっており、農林水産省によれば、これらも含めたフードロスの量は2,531万トンに及ぶという。
ASTRA FOOD PLANは、独自技術を用いて、そうした社会問題の解決を目指す。代表取締役社長 加納千裕氏の父で、同社の相談役を務める加納勉氏が約20年にわたって研究開発を行ってきた過熱水蒸気技術をもとに、食品乾燥機「過熱蒸煎機」を開発。特許も取得している同機器を使えば5~10秒で乾燥と殺菌が可能で、食品残さをアップサイクルすることができる。実際、同社は「過熱蒸煎機」を使用し、風味や栄養価の現象を抑えた高付加価値パウダー「ぐるりこ」を開発・提供。吉野家などとの実証実験を行っている。
同社は今回の資金調達をきっかけに、投資家の力を借りながら、JAグループへの機器導入や全国での循環型フードサイクル構築の実証実験を加速させたい考え。調達した資金は、機器の販売およびレンタルの拡大とビジネスモデルの確立、高付加価値パウダー「ぐるりこ」のブランディング、事業拡大に向けた採用と組織づくりの強化に使用していくという。元リリースはこちら。
【シリーズA】AIによる運用計画の自動最適化ソリューションを提供するALGO ARTISが約6.9億円の資金調達を実施(2023年9月6日発表)
AIを活用した運用計画の自動最適化ソリューションを提供する株式会社ALGO ARTISは、シリーズAで、第三者割当増資および融資による総額およそ6.9億円の資金調達を実施した。第三者割当増資の引受先は、既存投資家の東京大学エッジキャピタルパートナーズとみやこキャピタルが参画したほか、新規でココナラスキルパートナーズ、Sony Innovation Fundほか4社が参画。融資は商工組合中央金庫、日本政策金融公庫ほか1社が実施した。これにより、同社の累計資金調達額は12.2億円に達する見込み。
ALGO ARTISは、生産や配船といった熟練の技術者の経験や知見を必要とする運用計画の策定業務に対して、独自AIにより自動最適化を行うことが可能な「Optium(オプティウム)」というソリューションを開発・提供している。同サービスを使えば、年間で数千万円~数億円レベルでの収益改善が可能なほか、GHG排出量の削減や属人化の解消も実現できる。
同社は今回調達した資金をもとに、サービスの技術基盤の強化と新規サービスの開発、人材採用を進めていくという。元リリースはこちら。
【シリーズA】持続可能な農業の実現に向け、農業DXなどを行うAGRI SMILEが約7.5億円を調達(2023年9月6日発表)
「テクノロジーによって、産地とともに農業の未来をつくる」を理念に掲げ、農業協同組合(以下、JA)との連携を強化しながら、農業DXなどに取り組む株式会社AGRI SMILE。同社は今回、シリーズAのエクステンションラウンドで第三者割当増資による約7.5億円の資金調達を行ったと発表した。引受先はジャフコV7投資事業有限責任組合、HERO Impact Capital 1号投資事業有限責任組合、サイドウェイズ1号投資事業有限責任組合、およびSMBCベンチャーキャピタル7号投資事業有限責任組合。これにより、同社のシリーズAにおける累計資金調達額は約9.2億円に達したことになる。
AGRI SMILEは、ソフトウェア技術とバイオテクノロジーによる持続可能な農業の実現に挑んでいる。同社の研究開発事業では、気候変動に伴う植物の高温・乾燥などの環境ストレスを緩和し、安定的な収量・品質の農作物を収穫することを可能にする新しい農業資材「バイオスティミュラント」の開発と現場実装に取り組んでいる。また、KAISEKI事業では、ビッグデータをもとに農場の化学肥料削減余地や土壌改良の方向性の割り出し、バイオスティミュラントを活用した改善策の実行までを手がける。さらには産直プライム事業として、消費者を産地のファンにするブランド強化支援とD2Cサイトなどを活用した販売支援を行う事業も展開している。
こうした事業は実績を上げつつあり、研究開発では25種類のバイオスティミュラント資材を開発、年間で11の特許を出願。KAISEKIでは12億個の農産物を解析したほか、産直プライムにおいては、支援開始から1年で産地の売り上げが5倍、2年後には18倍に成長した事例もあるという。同社はこれらの営業利益を積み重ね、研究開発事業への投資を加速させ、中期的にはグローバルへの展開も見据えていく考えを示している。元リリースはこちら。
【シリーズB】金融サービステックのモニクルが約13億円の資金調達を実施(2023年9月6日発表)
金融サービステックとして、くらしとお金に関するサービス・ITプロダクトを開発・提供する株式会社モニクルは、シリーズBで第三者割当増資と融資により約13億円の資金調達を行ったと発表した。第三者割当増資では、ジャフコ グループ株式会社をリード投資家として、株式会社ロッテベンチャーズ・ジャパン、中国電力株式会社、グローブアドバイザーズベンチャーズLLP、みずほキャピタル株式会社が引受先に。融資については、静岡銀行、りそな銀行、みずほ銀行、商工組合中央金庫が融資元となった。
モニクルは、2021年10月の創業。同社は、2013年設立で「LIMO」などの金融メディアを運営する株式会社ナビゲータープラットフォームと、資産運用の無料オンライン相談などが受けられる金融サービス「moneiro(マネイロ)」を運営する株式会社ワンマイルパートナーズを自社のグループ会社として束ねており、ITプロダクトの開発などを行っている。
ナビゲータープラットフォームが運営する金融メディア「LIMO」は、主要ポータルサイトやニュースキュレーションアプリに記事を配信。20~50代、特に女性読者が多く、2023年5月の月間ユニークユーザー数は1,200万人を超えたという。ワンマイルパートナーズが手がける資産運用サービス「moneiro」は、将来必要な資金が分かるWeb診断ツールやファイナンシャルアドバイザーとのオンライン相談、テーマ別オンラインセミナーなどを提供。基本的に無料で利用でき、月間4,000人以上の新規会員数を獲得している。
同社は今回調達した資金をもとに、人材採用や既存サービスの拡充、新サービスの立ち上げ、コーポレート部門の強化などを行っていくという。元リリースはこちら。
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