2023年2月10日から2023年2月16日に発表されたスタートアップニュース、資金調達情報のうち、JP Startups(ジャパスタ)が注目する案件をピックアップしてお届けいたします。
編集部コメント
先週より本コーナーでは、資金調達情報に加えてファンド設立やアクセラレータなど、スタートアップに関連した注目ニュースをまとめてお届けしています。
スタートアップニュースでは、独立系VC・KUSABIのシード向けアクセラレーションプログラム始動を取り上げました。シードからシリーズAへの移行時に発生しやすかった課題を取り除けるような独自カリキュラムが用意されており、今後同プログラムの支援する企業がどのような展開を見せるのか期待したいところです。
また、資金調達ニュースでは、今週は堅調に推移するスタートアップが多かった印象。特に建設業や環境、医療、IoTのセキュリティ分野では、課題やニーズの多い部分にテクノロジーを活用したスタートアップが集まっており、本稿の中で詳しく取り上げます。
スタートアップニュース
独立系VCのKUSABI、創業前~シードのスタートアップ向けアクセラレーションプログラム「KUSABI α」を開始(2023年2月15日発表)
シード・アーリーステージのリード投資を主な対象とする独立系ベンチャーキャピタルのKUSABIが2月15日、創業前やシードフェーズのスタートアップに特化した、最長18ヶ月のアクセラレーションプログラム「KUSABI α(アルファ)」の開始と第1期生の募集を発表した。
同プログラムの採択企業は、原則として1社につき2,000万円の出資を受けられる。また、担当キャピタリストによる週次メンタリングと資金調達支援も受けられるほか、毎月1回のセミナー受講や独自コミュニティへの参加、茅場町駅から徒歩1分のアクセラ専用シェアオフィスの利用などが可能となる。
KUSABI代表パートナーの永井 研行氏によれば、「KUSABI α」は独自に定義した「創業からシリーズAまでに達成すべきマイルストーン」を、具体的なアクションプランに落とし込んだ座学と実践のカリキュラムを用意しているという。また、同期生や同窓生、キャピタリストとのつながりをもとに、創業時の問題解決がスムーズに行えるようなコミュニティ醸成にも力を入れていく方針だ。
同プログラムは、すでに株式会社WAND、株式会社ケミカルベース、株式会社シンシア、株式会社アークスの4社が第0期生として活動中。応募は通年で受付し、書類選考や面接を経て、プログラムへの参加時期を年4回(1月、4月、7月、10月)設けるという。元リリースはこちら。
資金調達情報
【シード】分散型IDによるIoTのデータインフラソリューションを手がけるCollaboGate、2.3億円の資金調達を実施(2023年2月15日発表)
分散型ID技術の推進とIoT事業のデータインフラソリューションの提供を行なうCollaboGate Japan 株式会社は、J-KISS型新株予約権の発行により、累計2.3億円の資金調達を実施した。引受先は伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、DNX Ventures、株式会社ラック。
分散型IDとは、従来の巨大IT企業などに依存した中央集権型のID管理ではなく、サービス利用者が自らの意思でIDを管理できるようにする仕組みのことを指す。同社は近年世界でニーズの高まるIoTセキュリティに対して、分散型ID技術をベースに、IoT機器とクラウド間で安全かつ検証可能なE2EE(エンドツーエンド暗号化)のデータ流通を可能にするソリューション「NodeX(ノード・クロス)」を開発・提供している。同サービスはデータインフラの構築を最短1日で実現でき、コストも約80%の削減が可能とのこと(CollaboGate Japan調べ)。すでに東芝テック株式会社などとの共同プロジェクトや、インテルなどとの共同開発と販促活動を進めているという。
同社はWebの国際標準化団体であるW3C(World Wide Web Consortium)と DIF(Decentralized Identity Foundation)にも加盟し、分散型ID標準化の推進にも携わっている。今後は調達した資金をもとに、グローバルで技術者や事業開発人材の採用を強化する考えだ。元リリースはこちら。
【シリーズA】風力発電機のメンテナンスロボットを開発するLEBO ROBOTICS、第三者割当増資で3億円の資金調達を実施(2023年2月15日発表)
風力発電機メンテナンスロボットの開発と、ロボットを活用したスマートメンテナンスサービスを提供するLEBO ROBOTICS株式会社は、第三者割当増資によって3億円の資金調達を実施した。引受先はAbies Ventures Fund I, L.P.、三井住友海上キャピタル株式会社、KDDI株式会社ほか。
現在、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した世界的なエネルギー危機により、世界各国で再生可能エネルギーに注目が集まり、転換が急がれている。IEAによれば、世界の再生可能エネルギーの容量は2027年までに2,400GW分(中国の持つ電力容量に相当)も増加するとの予測もある。特に風力発電機は、欧米で大量に設置が進んでいる。一方で、メンテナンスに際しては、危険な高所で点検・補修を行えるエンジニア人材が不足。風力発電機の世界的なメンテナンスコストの高騰と、安定的な発電へのリスク上昇が課題となっており、欧米においてはロボットによるメンテナンスが注目されている現状があった。
同社はそのような課題に対し、風力発電機のブレード(羽の部分)を、地上からの遠隔操作によって半自動でメンテナンス可能なロボットを開発。ロボットはスキャナとカメラを搭載しており、ブレードの形状や状態を把握し、研磨やパテ塗布、塗装などの作業を適切にこなすことが可能となっている。
今回の資金調達を経て、同社はメンテナンスロボットの商用化に向けて、国内市場と海外市場の開拓を行いながら、2024年の全自動モデル投入に向けてさらなる開発を進めていくという。元リリースはこちら。
【シリーズA】製薬・医療業界向けメッセージングプラットフォームを提供するフラジェリン、シリーズAで約3.5億円を調達。社名変更へ(2023年2月10日発表)
製薬・医療業界向けのメッセージングプラットフォーム「Shaperon(シャペロン)」を提供する株式会社フラジェリンが、シリーズAの1stクローズでALL STAR SAAS FUND、Cygames Capitalを引受先とする第三者割当増資を実施し、総額約3.5億円の資金調達を完了した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、病院への訪問規制がかかった結果、製薬・医療業界では営業活動のデジタル化が進んだ。今後も同業界は対面でのプロモーション活動に全面回帰することはないと予想され、製薬会社等は医療機関への情報提供をリモートで行う環境が継続すると考えられる。そのような背景をもとに、同社は製薬・医療業界向けのメッセージングプラットフォーム「Shaperon」を開発・提供。同サービスは高度なセキュリティとプライバシー保護を担保しながらも、自社でアドレスを保有していない医師に対してプロモーションが行えるなど、デジタルプロモーションの効率化とリスク管理の強化が実現できるツールとなっている。
今回調達した資金は、プロダクト開発と新規事業の立ち上げ、組織体制の強化を目的とした人件費に充てるという。また、事業活動と採用活動における競争力向上を目的として、2月10日より社名を変更。今後は「株式会社シャペロン」として、事業活動を行っていくと発表した。元リリースはこちら。
【シリーズA】建設用3Dプリンタを開発するPolyuseが、第三者割当増資で総額7.1億円を調達(2023年2月15日発表)
建設用3Dプリンタの自社開発を行なう株式会社Polyuseは、既存投資家のCoral Capital、池森ベンチャーサポート、吉村建設工業に加え、新規でユニバーサルマテリアルズインキュベーター、SBIインベストメント、Emellience Patnersを引受先とした第三者割当増資により7.1億円の資金調達を実施した。
建設業界は高齢化が進み、慢性的な人手不足を抱えている。一方で、全国では建設から50年以上が経つ道路橋やトンネル、下水道などの割合が加速度的に増えており、2040年にはほとんどの社会インフラで3割以上が建設後50年以上が経過する建造物になるとの試算もある(出展:国土交通省 社会資本の老朽化対策情報ポータルサイト『インフラメンテナンス情報』)。今後、社会インフラの建造ニーズが高まる中で、建設業界の人材不足や資材高騰は喫緊の課題となっている。
Polyuseはそのような課題に対応すべく、建設用3Dプリンタの研究開発を進めている。すでに国土交通省の公共工事の中で同社の技術を活用、実証を進めており、2022年は全国で30件ほどの3Dプリンタ施工を実施した。
同社は今後、調達した資金をもとに、建設用3Dプリンタの精度・品質の向上と印刷方法の多角化を目指し、研究開発を進めていく意向を示している。また、同社の蓄積する施工データを施工管理や施工計画で活用可能なプラットフォームの構築など、新たなプロダクト展開も検討。さらに、研究開発拠点などの施設整備や人材採用も強化するという。元リリースはこちら。
【シリーズA】脱炭素経営支援のソリューション提供を行うゼロボードが、合計24.4億円の資金調達を完了(2023年2月15日発表)
脱炭素経営に欠かせないGHG(温室効果ガス)の排出量算定、開示、削減を支援するソリューション「zeroboard」を提供する株式会社ゼロボードは、シリーズAで第三者割当増資による資金調達を実施。ファーストクローズおよびセカンドクローズの合計調達額が24.4億円に達したことを公表した。今回のラウンドでは、Keyrock Capital Managementをリード投資家に迎え、DNX Venturesやインクルージョン・ジャパン、ジャフコ グループ、株式会社三菱UFJ銀行、関西電力株式会社など、総計18社が引受先となっている。引き続きサードクローズも予定しており、シリーズAでの合計調達額は約25億円となる見込みだ。
ゼロボードは、GHG排出量をクラウドで算定・可視化できるサービス「zeroboard」を運営している。同サービスでは、サプライチェーン全体や製品別、サービス別のGHG排出量を見える化できるほか、ステークホルダーへのデータ連携、各種環境法令に対応したアウトプットも可能。また、GHG排出の現状把握を行うだけでなく、削減に向けた実績管理の支援や、パートナー企業との協業による国内外のカーボンクレジット提供、各社の脱炭素課題に沿ったファイナンスや原材料調達支援なども行っている。
今回調達した資金は、「zeroboard」の機能開発の加速化や、カスタマーサクセスなど専門人材の採用強化、海外展開などに活用するという。代表の渡慶次 道隆氏は、経済産業省の「サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリント算定・検証等に関する検討会」で委員に選出されており、今後は同社が蓄積した知見を社会にも還元しながら、グローバルな脱炭素経営パートナーを目指していきたい考え。元リリースはこちら。
【関連記事】
社会ニーズと創業者特性を活かしてたどり着いたCO2排出量可視化事業
「CO2が見えると、クリーンな未来が見えてくる」…… ”SDGs”や”ESG”という言葉は頻繁にメディアにも登場するよう…
注目記事
新着記事
防災テックスタートアップカンファレンス2024、注目の登壇者決定
大義と急成長の両立。世界No.1のクライメートテックへ駆け上がるアスエネが創業4年半でシリーズCを達成し、最短で時価総額1兆円を目指す理由と成長戦略 Supported by アスエネ
日本のスタートアップ環境に本当に必要なものとは?スタートアップスタジオ協会・佐々木喜徳氏と考える
Antler Cohort Programで急成長の5社が集結!日本初となる「Antler Japan DEMO DAY 2024」の模様をお届け
世界を目指す学生が集結!Takeoff Tokyo 2024 VOLUNTEER TRAINING DAYの模様をお届け