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大義と急成長の両立。世界No.1のクライメートテックへ駆け上がるアスエネが創業4年半でシリーズCを達成し、最短で時価総額1兆円を目指す理由と成長戦略 Supported by アスエネ

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2024年6月、クライメートテックのアスエネがシリーズCのファーストクローズで累計100億円超の調達を行ったことが発表された(※)。同社は2019年に創業し、そこからわずか4年半でここまでの急成長を遂げたこととなる。気候変動による環境課題が切迫してきていることもあるが、コロナ禍を経てなかなか回復しない調達市況を背にしながらも、投資家からの多大な信頼を勝ち取っていることにも注目が集まるニュースとなった。

※出典:アスエネ、シリーズCで累計101億円の資金調達

JP Startupsでは、2022年7月にも同社に取材を行ったことがある。当時も急成長企業であったがそこから約2年が経過し、今回のリリースでは「マルチプロダクトによるコンパウンド戦略」「M&A」「グローバル展開」といった要素が追加され、加速に磨きがかかっている。

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2020年10月の「脱炭素宣言」を機に、CO2削減・再生可能エネルギーがビジネスとして評価される時代が日本にもやって来た…

三井物産を経て同社の起業に至った代表の西和田氏に、今回改めて取材を行い、アスエネの現在地と目指す場所、そしてどういった組織になっていきたいかお話を伺った。

時価総額1兆円とグローバルNo.1への最短距離を目指して コンパウンドスタートアップへの舵取りと海外進出

前回取材させていただいた時点では、企業や自治体のCO2排出量見える化・削減・報告クラウドサービスの「ASUENE」を主力サービスとして注力されておられました。その後、新規事業も含めて、改めて事業の方向性について伺えますか。

改めてですが、我々は「脱炭素のワンストップ・ソリューション」を目指すコンパウンドスタートアップとして、脱炭素・ESGのマルチプロダクト展開を仕掛けています。

アスエネのサービス群
  1. ASUENE
    a. CO2排出量見える化・削減・報告クラウドサービス
    b. 気候変動コンサルティング
  2. ASUENE ESG
    a. サプライチェーン調達のためのESG評価クラウドサービス
    b. ESGコンサルティング
  3. Carbon EX(カーボンEX)
    a. カーボンクレジット排出権取引所

まず、一つ目のサービスである「ASUENE」は順調に成長し、国内での導入社数はNo.1となりましたね。

はい、CO2見える化・削減・報告クラウドサービス「ASUENE」は、シリーズB資金調達時と比較して、受注MRRベースで30倍に急成長、顧客導入社数国内No.1(※)、2024年8月時点では 9,000社を突破、提携企業数は140社を超えています。

この2年でのおもな変化をまとめると以下のようになります。

Credit:アスエネ株式会社 プレスリリース

※ 2023年7月末時点(調査実施:株式会社東京商工リサーチ)

二つ目、三つ目のサービス、「ASUENE ESG」「Carbon EX」についても伺えますか。

「ASUENE ESG」は、企業間のサプライチェーンを国際規格のESGレーティングで評価するSaaS型のビジネスモデルです。現在、被評価企業社数は10,000社を超えています。

「Carbon EX」は、SBIホールディングスと合弁で設立したカーボンクレジットの排出権取引所で、プラットフォームの登録社数は1,000社を超えており、カーボンクレジット・排出権取引所では国内No.1の登録社数の実績を有します。

私たちは、脱炭素・ESG領域でのコンパウンドスタートアップを標榜し、さらにプロダクトを増やして、カバレッジを広げて、顧客への付加価値を最大化していく方針です。

まさに急成長ですね。政策など周辺環境の変化による影響もあったのでしょうか。

CO2排出量をゼロにするためのいわゆる脱炭素を目指す動きに関しては、菅内閣における脱炭素宣言に始まり、2023年1月には金融庁より、すべての上場企業は2023年3月期以降の有価証券報告書において気候変動関連情報を開示する改正案が公表されるなど、脱炭素関連の政策の影響もありました。

カーボンニュートラルが自社にもたらすリスクやチャンスをわかりやすくするための方法として、気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)というコンソーシアムの提言に基づいたものがあります。TCFDの枠組み、またはそれと同じような方法に基づいた開示情報の質と量の充実を進めるべき、との原則が盛り込まれたんです。気候だけでなく「自然関連財務情報の開示を企業に促すもの」としてTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)も提唱され始め、この分野への関心が日々高まっています。

そんな中、「ASUENE」はおもに企業とそのサプライチェーンの中で、どこでどれくらいのCO2排出が行われたかを算定、見える化するという役割を担っています。特に弊社は、製造業、建設業に強く、業界に特化したサービスも展開しています。
グローバルにおいても、CO2排出量算定に関する規制や報告のフレームワークは非常に複雑で変化が早い状況にある中、その規格に対応する形で報告業務のサポートをすることができるのです。

アスエネは実際にグローバルでも展開されてますね。

はい、すでにシンガポール、アメリカに100%現地法人を設立しています。

まずAPACですが、シンガポール拠点でのパートナーシップは30社以上となり、「ASUENE」のプレゼンスは非常に高まってきています。アジアは日本と時差がほぼないためオンライン会議への影響も少なく、実際に現地に行く場合でもフライト時間が短いため、業務がとても進めやすいです。今はシンガポール拠点のみですが、同じ理由からオーストラリアもいいなと思っています。

アジアは新興国が集まっていることもあり、かなり大きな市場ですが脱炭素の取り組みも非常に活発です。世界の最大人口を有するアジアNo.1が取れれば、自ずとグローバルNo.1が見えてきます。

アメリカにも拠点を持たれましたが、進出の決め手は?

国としてのアメリカの市場規模は、中国とインドを除くとNo.1。ソフトウェアの利用率も非常に高い。どんな規制も対応が早いというイメージを持っている方も多いと思いますが、州ごとには進んでいる地域もありますが実は脱炭素の規制や制度整備は遅れています。そのため、競合サービスがアメリカ国内にも生まれてきてはいるもののグローバルでみると遅い。その点、日本や我々のサービス開始が早かったため、サービスの質が良くグローバルとの差もありません。むしろアスエネしかない機能も多くあるため、アメリカでも勝機があると見ています。

グローバルのシェアですと、御社は現在、どのあたりにいらっしゃるのでしょうか。

日本で1位、アジアで1位、収益ベースでグローバルで3位のポジショニングですね。規制が変わってから出てきたビジネスですが、我々は先行者利益と製造業に対する解像度の高さという2点から、グローバルでもトップレベルに位置しています。

時価総額1,000億円規模を目指すのであれば日本市場単体でも良いのですが、私たちが目指しているのは最低でも時価総額1兆円以上の企業。日本の法人のうち、時価総額1兆円規模の企業は200社程度になるのですが、その売上の30-50%は海外事業由来なんです。最速で1兆円企業、デカコーンを目指すのであれば非上場時のうちにグローバルを攻める戦略は必須だと捉えており、グローバルNo.1を目指して積極的に海外展開を進めています。既にアジアではシンガポール、マレーシア、インドネシアでも顧客の受注や導入が増加しており、さらなる拡大の施策を仕掛けていく方針です。

時価総額1兆円企業を目指すには海外進出、最速で成長するには強い経営陣が必須

昨今の厳しい外部環境で資金調達に苦戦するスタートアップも多い市況の中、大型調達にも注目が集まりましたね。

アスエネの調達履歴
  • 2019年12月:シード 7,500万円調達
  • 2021年3月:シリーズA 3億円調達
  • 2022年4月:シリーズB 21億円調達
  • 2023年:融資 25億円調達
  • 2024年:シリーズC 50億円調達
シリーズC、ファーストクローズ時点での投資先の一覧
Credit:アスエネ株式会社 プレスリリース
Credit:アスエネ株式会社 プレスリリース

6月のファーストクローズでは、上記の業界を代表する企業にご出資いただきました。半分以上は新規出資になります。また、8月発表のセカンドクローズでは、脱炭素化支援機構(JICN)、日本生命保険相互会社、JERA、Pavilion Capitalなどから出資をいただきました。特にJERA、日本生命とは出資提携として今後脱炭素・ESG領域での協業を積極的に実行していきます。今回の調達は、最速で時価総額1兆円規模に、かつグローバルNo.1という目標を掲げて、資本提携を意識して推進しました。「ASUENE」は現在、製造業がメインのクライアントになっていますので、製造業とのつながりあるいはご紹介をいただけるというポイントでも出資につながっています。

おもに投資先の対応をしてくれたのは、みずほ銀行、カーライル等を経て入社してくれたCFOの間瀬です。私とCOOの岩田の2人で事業に集中したかったこともあり、今回のラウンドは、間瀬の入社からわずか1〜2週間でバトンタッチしました。

メディアでの反響も大きく、30以上のメディアで紹介されました。今回のシリーズC調達とCFO間瀬の話は、こちらのASUENE CEO BLOGのnoteでも深掘りしていますのでぜひお読みください。

今回の調達の目的として6つのことを挙げられていますね。まず、技術投資と非連続の成長について伺っていきたいと思います。

アスエネが掲げるシリーズC調達 6つの目的
  1. 日本の営業、開発、コンサル、グローバル事業展開の人材強化
  2. 大企業との出資提携の強化
  3. AI・LLMの技術投資
  4. M&Aによる非連続の成長
  5. アジア、アメリカなどのグローバル展開の強化(ASUENE APAC、USA)
  6. さらなる新事業の立ち上げ

もはや不可逆の技術となったAIですが、生成AI・LLMへの技術投資も今回の調達目的の一つに掲げられています。コンパウンドスタートアップとしてのさらなる急成長に向け、どう取り入れていかれるのでしょうか。

AI・LLM活用を想定している範囲としては、まずクライアントが増えるに従って増加している企業の脱炭素・ESGデータの分析などで利用していきます。社内全体の業務効率化という点ではすでにOpenAI社のChatGPT等は連携・活用していて、ソフトウェア上でのAI Chatbot、採用・広報領域ですとLinkedInでの英語発信自動化、営業領域ですと返信メールのドラフト作成等に活用しています。今後はAIラボチームを新設して、AI戦略を会社の主軸に据えていく方針です。

実は技術関連の取り組みとして、社内で定期的に特許選手権をやっています。AIを用いた特許の大会なのですが、良い案はそのまま特許申請して個人にインセンティブもつきます。あちこちで活用が想定できるので、有用な技術の見極めと導入には、今後もしっかり取り組んでいきたいですね。

M&Aについてはどうお考えですか。

Credit:アスエネ株式会社

2024年8月に、CoRocket社の気候変動・非財務データの第三者保証事業のM&Aを実施、100%グループ会社の新会社「アスエネヴェリタス株式会社」を設立しました。多くの大手企業からのニーズが高い非財務情報やGHG排出量の第三者保証・検証業務を提供することにより、企業のより正確な脱炭素経営業務をアスエネグループにてワンストップで支援できるようになりました。

今後も脱炭素の総合プロダクトとして、脱炭素・ESGのバリューチェーンをしっかり押さえていきます。国内外問わず、自社のビジネスモデルに近い領域にフォーカスしつつ、斜めにもいくようなイメージです。

前職の三井物産にてグローバルM&Aや企業統合のプロセス(PMI)の苦労や大変さは経験していますが、M&Aの基準、PMIの100日プランなどM&Aの型化・仕組み化を推進しております。

大義あるミッションに挑戦するアスエネには、個人としてマルチな経営人材に急成長できる土壌がある

これからさらに人を増やしていかれるとのことですが、現状はどうなっているのでしょうか。

現在は業務委託含めて300名程度が在籍しています。2022年時点では50名でしたから、2年弱で6倍に増えています。足元でも、正社員ベースで月10〜15名は増やしており、ものすごいスピードで組織が大きくなっています。人が増えている以上に売上が伸びていますが、定点計測しながら適切な人員を都度意思決定していきます。

年代でいくと20代後半から30代半ばくらいの方がボリュームゾーンではありますが、ペルソナを明確化して再現性のある採用を目指しています。ミドル・マネジャークラスも増強していきたいと考えています。グローバル拠点では、ローカル採用も日本人採用も両方進めており、日本拠点のメンバーがグローバルに出るチャンスもあります。日本発でグローバルNo.1を目指すために、あらゆる経験を積みやすい環境を整備しています。

どういう方と一緒に働きたいという人物像はありますか。ミッションとしては「次世代によりよい世界を。」を一貫して掲げていらっしゃいますね。

やはり、ミッション・ビジョンへの強い共感がある人、バリューやカルチャーにフィットする人。そこが合わないと、中長期で特に大変な時に一緒に走りきれないんですよね。

現在の在籍メンバーの特徴は、ミッション・ビジョンやバリューへの共感が非常に強く、目指す場所に対し大義を感じていることです。私自身も、やはり次世代の将来をよりよいものにするチャレンジをしたい、グローバルに挑戦したいという想いが強いです。

CO2排出量見える化事業者をリードする企業としての取り組みとして、今年B Corp認証(※)も取得しました。日本のCO2見える化事業者としては日本初となります。こういった動きも業界のリーディングプレイヤーとしてミッションを体現していくために必要な取り組みだと思っています。

※B Corp認証:社会と環境に配慮し事業を行う企業に与えられるグローバルな認証。一定以上の高い基準を満たす必要がある

私たちが会社として伸びれば伸びるほど脱炭素問題が解決されていく。そこにこだわって事業を推進しています。今までは、明らかに困っている人がいる社会課題や環境問題などの重要課題でも、経済的メリットが少ない部分については非営利セクターが担う状況が続いてきました。しかし、最近はインパクト・スタートアップという概念が出てきています。私自身も、人類が解決すべき大きな課題にこそ大きい経済的インセンティブを設けた方がいいと考えています。なぜなら優秀な人材や複数の営利企業が存在する市場になることこそが、サステナブルな課題解決の仕組みにつながるからです。だから私たちは、ビジネスとして社会課題を解決するNo.1のプレイヤーになりたい。社会課題の解決と時価総額1兆円企業への成長を両立させてみせるという自負を、強く持っています。

コーポレートリブランディングにも取り組まれましたよね。

新たなコーポレートステートメントに「世界は本気で変えられる。」を掲げました。また、CEO BLOGを始めました。私たちが何を目指しているか、社内外の方々により伝わりやすいようにということで、社内でもかなり議論しましたね。

今年の3月にロゴも刷新しました。従来はカタカナでしたが、グローバル全てで伝わるようにと、英語にして、シンプルにマークも無くしました。

コーポレートステートメント
Credit:アスエネ株式会社 プレスリリース

ここまで西和田さんが強い思いを持っていらっしゃる背景には、次世代の環境に対する展望のほかに、何かしらの原体験があるのでしょうか。

たくさんありますが、直近はやはりCOP(国連気候変動枠組条約の締結国による会議)での経験は大きかったですかね。JCLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)の視察団として参加したのですが、世界との差、日本の政府との連携の少なさを痛感させられました。失われた30年に対しての警鐘もいろんな方が鳴らされていますが、我々は、社会課題の解決とイノベーションの両軸をけん引していくという意味でも、急成長を掲げています。メンバーにも同じ意識を持っていて欲しいので、コア・バリューにも「INTEGRITY」「OWNERSHIP」「Go Fast」の三つを掲げています。

日本発スタートアップであることのビジネス上の優位性はあるのでしょうか。

日本は製造業に強いことが優位性となります。実際、弊社でも、ソニーグループ、村田製作所といった名だたる企業にサービスをご利用いただいています。通常のバックオフィスDXツールですとアメリカのものが多いですが、我々はすでに製造業の方が使いやすいUI/UXを設計できたうえで海外にも輸出していますし、コンサルティング・スキルも非常に高いため、B向け事業領域では、グローバルNo.1を獲るチャンスが十分にあります。

最後に、アスエネへ興味を持っていらっしゃる方へメッセージをお願いします。

ミッションドリブンな会社なのはもちろんですが、アスエネではとにかく急成長ができる環境がそろっています。実際に入社した皆さんも自身で成長を実感している方が多いのはもちろん、周りの人からも成長したと言われることが多いです。

コンパウンドスタートアップは次々に新規事業を仕掛けていくので、ポジションとしても、マネジメント、新規事業立ち上げ、海外立ち上げ、M&Aによる経営人材育成など、なんでもチャンスがある。まるで総合商社と同じ育成環境、現場があります。手広くやって失敗しないのかと聞かれることもありますが、アスエネはすでに事業を四つ立ち上げていて、試行錯誤してきた経験があります。失敗も経験しており、次により早くうまくやるにはどうしたらいいか、今は新事業の12の基準ができており、新事業立ち上げのサイエンスが社内で構築されています。

そのため、育成の仕組みも整っており、初めてスタートアップで働くという方にもアスエネはおすすめです。実際、よくある丸投げの状況ではなく、スタートアップなのに本当に環境がしっかりしているというお声はよくいただきます。特に営業は、属人性を排除して再現性を上げる仕組みを整えているので、成功体験が積みやすいはずです。どの部署も定量的にKPI管理をし、日次・月次でPDCAを回していく中で、自分が何をすべきかわかりやすい状況を作っています。

最後になりますが、脱炭素領域は「大義」を目指して「急成長」ができる、非常に面白い産業です。アスエネでなくても良いので、この業界で働くことやなんらかの関与をすることに興味を持つ人が増えて欲しい。そしてその中でも、アスエネは、クライメートテックのNo.1を目指しています。急成長する業界のど真ん中での成長を望む方は、ぜひ一度お話できたらうれしいです。

ありがとうございました。