2023年9月22日から2023年9月28日に発表されたスタートアップニュース、資金調達情報のうち、JP Startups(ジャパスタ)が注目する案件をピックアップしてお届けいたします。
編集部コメント
先週に引き続き、ニュース量が控えめ。今週は資金調達情報のみお届けする。
JP Startups(ジャパスタ)でも注目をしている養豚DXのEco-PorkがシリーズBファーストクローズとして新たに2.2億円の資金調達を実施。そのほか、自由診療クリニック向けDXツールのB4Aなどが資金調達を行なった。
そのような中、今週は農業流通の新しいインフラをつくるkikitoriや、SaaS向けデモプラットフォーム運営のPLAINER、鉄スクラップAI解析システムを開発する東大発スタートアップのEVERSTEELをピックアップ。事業や資金調達の内容について、詳しく解説する。
資金調達情報
【シード】鉄スクラップAI解析システムを開発するEVERSTEEL、2億円の資金調達を実施(2023年9月28日発表)
AIを用いた廃棄物の品質管理により環境課題を解決する東大発クリーンテックスタートアップの株式会社EVERSTEELは、シードラウンドでDCMベンチャーズより2億円の資金調達を実施と発表した。
鉄は世界で最も多く使用されている金属でグローバルマーケットは350兆円の巨大産業だが、同時に最大の二酸化炭素排出源でもある。このような状況の中、鉄鋼業界では、石炭を燃やして鉄鉱石から鉄を作る「高炉法」から、鉄スクラップを電気で溶かしてリサイクルにより鉄を作る「電炉法」への転換期を迎えている。しかし、鉄のリサイクル原料である鉄スクラップには鉄以外の不純物や爆発物等が混入するケースがある。そのため、各鉄鋼メーカーではベテランの作業員が目視で品質チェックをしなければならず、人による判定のばらつきや見逃しが品質面・安全面から深刻な課題となっている。
EVERSTEELは、このような背景の中で、代表の田島氏が東京大学での鉄鋼材リサイクルの研究とスイス工科大学での画像解析技術の研究をもとに創業し、鉄リサイクルに特化した画像解析技術の研究開発に注力してきた。これまでに電炉最大手の東京製鐵を始め、複数の業界大手鉄鋼メーカーとの実証実験を経て、国内10社以上で実際の操業現場への導入検討が進んでいる。
現在本格運用に向けた開発を行なっているプロダクトにおいては、鉄スクラップの品質を判定するAI、危険物や非鉄金属を検出するAI、厚み・サイズ・鋼材の種類などパーツレベルで判定できるAIの開発、お客様のさまざまな工場環境に適応するためのハードウェアの開発、工場の基幹システムとの連携機能の開発、現場での使い勝手を追求したアプリケーション開発に取り組む計画だ。今回調達した資金は、プロダクト開発及びその実現に向けた組織拡大への投資を予定しているほか、事業開発、AIエンジニア、ソフトウェアエンジニア、プロダクトマネージャーなどの幅広い職種の採用を行い、鉄鋼業界での環境課題解決に向けて、より一層事業を推進したい考え。元リリースはこちら。
【プレシリーズA】農業流通業界に特化したDX事業を展開するkikitori、総額3億円の資金調達を実施(2023年9月27日発表)
クラウド型農業流通現場向けプラットフォーム「nimaru」を運営する株式会社kikitoriは、グロービス・キャピタル・パートナーズ、農林中金イノベーション投資事業有限責任組合、Valuechain Innovation Fund投資事業有限責任組合を引受先として、プレシリーズAで総額約3億円の資金調達を実施したことを発表した。
農産物流通は、食という社会の根底を支える重要なインフラである一方、多くの流通現場業務は、紙の処理や電話、FAXといったアナログ方法で行われており、非効率な流通による機会損失やフードロス、アナログな現場業務による人材の流出が深刻な課題となっている。
kikitoriは、上記のような課題を解決すべく、「農とテクノロジーを通して世界中の人々を笑顔にする」をミッションに掲げて、2019年10月より農業流通現場向けクラウド型プラットフォーム「nimaru」のサービス提供を開始。農産物流通の中でも3兆円の市場規模を持つ青果流通(野菜・果物の流通)に焦点をあて、青果物という複雑な商品を扱う流通現場のさまざまな業務を全国の流通現場に実際に入りながら地道にシステムのモデリングを行う。その結果、業界でもほとんど例がない外部事業者とのデータ連携が可能なクラウド型の汎用的サービスとして、JAや卸売市場を中心に全国の青果流通事業者及び生産者に利用されている。
同社は今回の資金調達を通して、幅広い現場ニーズに対応が可能なサービス開発に向けた開発組織の拡充や、全国の事業者へのサービス展開を加速するセールス及びカスタマーサクセス組織の強化を行っていくことで、より強固な組織体制を構築していくという。元リリースはこちら。
【ラウンド不明】SaaS向けデモプラットフォーム運営のPLAINER、資金調達を実施(2023年9月28日発表)
SaaS向けデモプラットフォームを展開するPLAINER株式会社は、サイバーエージェント・キャピタルおよびALL STAR SAAS FUND等より、資金調達を実施したことを発表した。今回の調達により、累計資金調達額は約1.7億円となった。
ソフトウェア企業の高度に分業化が進んだ組織体制において、開発したプロダクトの価値が顧客企業内で理解されるまでには社内外で多くの業務プロセスが必要であり、従来の手段では煩雑なプロセスでスピード感に欠けるうえ、顧客への説明が属人化し、質にバラツキが生じるのが課題だった。そのような状況の中、SaaS向けデモプラットフォーム「PLAINER」は、誰でもノーコード・最短10分で、実際のプロダクトを疑似体験できるコンテンツが制作可能で、各顧客接点・シーンに合わせてパーソナライズしたデモ体験を提供することで、お客様にプロダクト価値の適切な理解を促すことが可能。各プロセスを効率化・高度化を実現している。
今回調達した資金は、プロダクト開発、サービス体制の強化、新サービスの開発に充てる予定とのこと。事業の拡大を通じて、より多くの優れたソフトウェアの価値を国内に広げ、SaaS企業が世の中を変革していくための基盤となることを目指すという。元リリースはこちら。
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