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zig-zagな者同士が集って作る、世界をつなぐ越境ECシステム「WorldShopping BIZ」

買い物をオンラインでするのが当たり前になってきた昨今。海外サイトで欲しい商品を見つけても「買えなかった」体験はないだろうか?海外へのEC販売は「越境EC」と呼ばれ、国内ECとは異なり様々なハードルが存在する。

もっと自由に簡単に、“国境を越えて” 欲しい人が欲しいモノを買える、売りたい人が売りたいモノを売れる。「世界中の欲しいに応える、世界中に想いも届ける」サービスで「世界中のワクワクを当たり前に」⸻
そんなミッションを掲げる株式会社ジグザグ(以下zig-zag)は、越境ECを最短1日で実現できる「WorldShopping BIZ」を提供している。

新型コロナウイルスの影響もあり、ますます利用が加速するECだが、WorldShopping BIZはいつ頃から構想があり、どのように生まれたのか。代表の仲里一義(なかざと・かずよし)氏にお話を伺った。 

ファーストキャリアから同じ課題を追いかけて

これまでのキャリアと起業のきっかけをお伺いできますか。

私は41歳で今の会社を起業し、今年48歳になりました。スタートアップ起業家の中では歳が上の方かと思います。会社員の経験が長く、1社目はOOH(屋外広告)、空間グラフィックの会社、2社目はWebマーケティングのオプトで働いていました。3社目では韓国資本の国際物流の会社で日本法人の代表取締役に就任。その後、zig-zagを起業した形となります。

大学卒業後からずっとスタートアップにいますが、いきなり起業しようとは思っていなかったんです。ただ「社長がいいな、楽しそうだな」と思ったのは、お金持ちになりたいといった動機ではなくて、社員の皆さんが楽しそうに働いている中で、社長が一番楽しそうだったんですね。みんながワイワイしているのをニコニコ眺める社長という画。社長が嬉しく感じていたのは、楽しんでもらえる「場を作り上げた」ということなんです。私もその喜びを感じたいと思いました。

いいなと思うだけでなく、実際に自分で起業したいと思ったのはオプトにいた頃です。ただ、その道筋がまだ見えませんでした。インターネット業界という道は見えていましたが、起業したからといっていきなりヤフークラスになれるわけではない。ではどういう事業が必要とされるのか。抑えるべきポイントは、 「グローバル」「データ価値を生むもの」「あったらいいなではなく無いと困るもの」の三つではないかと思いました。

それが、越境ECだと思われたのでしょうか?

オプト在籍時から、日本のECサイトに海外からのアクセスがあったことには気づいていました。翻訳技術が進み、情報の垣根はどんどん低くなり、国境を超えてECサイトへアクセスできて欲しいものが見つかっても、買えない人たちがいます。その原因は「言語」「決済」「物流」の壁があること。要は売り手側に課題があるので機会損失が起こっていたんですね。私は当時、ECについての知見はありましたが、国際物流の知見はなかった。その時にご縁があって、外資系企業の日本法人代表取締役に就任し日本、アメリカ、韓国、ドイツ間の国際物流サービスの立ち上げを経験しました。ここは、先ほど上げた「言語」「決済」「物流」のボトルネックのうち、物流部分を解決する事業を展開していました。一方で言語と決済の課題は残されたまま。全てを解決したいと思いつつも、外資ということもあり、自分がやりたいことをできるわけではありませんでした。なので事業が軌道に乗ったタイミングで退任し、起業しようと思ったのです。

解決したい課題とは、具体的にどのようなことだったのでしょうか。

言語の課題というと商品ページなどの翻訳のことだと思いがちですが、実は、翻訳よりもカート画面から先が問題なのです。非日本語圏の方によるかな文字入力フォーム、外国を選べない住所フォームといった入力の課題がまずあります。決済でも商品代引、コンビニ決済があったりと外国人にはかなり複雑です。配送では、国内配送だと荷物にラベルを貼って、ヤマト運輸や佐川急便にお任せすれば配送されます。一方、海外配送ですと、まず英語のインボイスが必要になる。送料も国ごとに違うのでデータベースも必要。割れ物だったら梱包も変えなければいけませんし、越境で配送を行うには結構な手間がかかるのですが、これらすべてを解決しないといけないと思っていました。

現在の事業内容について、越境EC市場の可能性をまじえてお伺いできますか。

皆さん「越境EC」というと中国のT-mallやアメリカのebayのような海外のモールなどに出店して販売することを想像すると思います。しかし当社の事業領域はそこではなく、日本のECサイトにアクセスしてきている海外ユーザーへの「ウェブインバウンド対応」にフォーカスしています。

日本国内には約14兆円のEC市場が存在し、国内ECサイトへの海外アクセス比率が2%~4%と想定すると2,800億~5,600億円規模の「買えていない体験=機会損失」があります。勿体無いですよね。コロナ禍以前であれば、実際に日本に訪れて買い物をして帰るショッピングツアーがよく行われていましたが、コロナ禍の今の環境であればECを使わざるを得ません。それを解決するのが弊社のWorldShopping BIZなのです。フローはとても簡単で、日本のECサイトに弊社のJavaScriptのタグを入れるとIPアドレスで海外からのアクセス時に、海外ユーザーだけに見えるWorldShoppingのカートが出現し、AliPay、銀聯、PayPal、海外版AmazonPayといった決済手段を提供するだけでなく、多言語カスタマーサポートから梱包、配送、さらに他のECで買い物しているものもまとめて発送可能など一気通貫で海外ユーザーの買い物をサポートしています。ECサイト事業者はこれをタグ1行で実装できるのです。また、EC事業者向けには専用のショップダッシュボードを提供し海外アクセスデータや購買データなど、どこの国のどの地域からアクセスがあって、どんなものが売れているのかを見える化してマーケティングにも活用いただいています。「大手の海外ECモールに出店すればよいのでは?」と思うでしょうが、それでも海外から日本のECサイトへのアクセスに対する「ウェブインバウンド」対応は必要です。すでに海外モール出店済みの企業が併用して国内サイトにWorldShopping BIZを導入されるというケースが増えてきています。

credit: zig-zag

一般的な通販事業のロジスティクスは、ストック型(先に在庫を持ち、発注があり次第発送)です。しかし我々は購買、配送代行をしているので発注があれば商品が届き、検品して再梱包して海外ユーザーに発送するというフローになっています。すなわち、在庫管理コストが大幅に削減できるのです。また、先に海外ユーザーからお金をいただくのでキャッシュフローも問題ありません。

コロナ禍になって越境EC需要はやはり高まっているのでしょうか。

はい、高まっています。特にリアル店舗を構えている事業者は、コロナ禍前だと協働を申し出てもなかなかお受けいただけませんでしたが、コロナ禍でマイナス影響を受けECを強化せざるを得ない状況ですので、多くのお問合せをいただいております。我々のサービスは海外ユーザーからサービス手数料や海外送料を頂くビジネスモデルなので、EC事業者様から見ると安い固定費で簡単に導入ができ、リスクが少ない。導入してくれるECサイトが増えれば増えるほど、海外ユーザーはショッピングの利便性が高まり越境EC全体でリピート率が上がるので、EC事業者がとにかく手軽にスタートできる設計にしています。

調達を含む資金面やプロダクト開発、オフィスなど、これまで特に苦労されたことはありましたか。

今のビジネスモデル自体はかなり昔から頭にありました。しかしながら、グロースするまで時間がかかってしまった形ですね。苦労したのはやはり資金です。起業すると決めてからは、オプト時代の恩師である海老根(えびね)さん(元オプト会長)にプレゼンして出資していただけることになりました。初期はエンジェルから資金面で支援して頂き、2016年4月に最初のプロダクトが出るまで創業から10ヶ月かかりました。その後、2016年11月にキャッシュアウトの危機を迎えています。エンジェルからの資金に加え、渋谷区の創業融資、政策金融公庫融資で調達した資金が残り数十万になったのです……キャッシュアウト5日前にVCから5,000万円の調達ができて首の皮がつながった形ですが、この時に出資してくださったモバイル・インターネットキャピタルはその後もフォロー出資のほか、ハンズオンで伴走頂いています。

次に苦労したのがプロダクトです。事業のピボットはしていないのですが、今の「WorldShopping BIZ」は実は2ndプロダクトになります。2016年4月にリリースした1stプロダクトは、ECサイトの商品データを連携してWorldShoppingドメイン上に多言語ECサイトを生成するものでした。ニーズはあったものの、導入企業側の開発ハードルもあり導入社数が伸び悩みましてつらかったことを覚えています。この危機を救ってくれたのが、当時まだ業務委託で働いていた現CTO今西です。私が「データ連携しないでこんな風にオーダー入る仕組み作れないかな?」と伝えると、数日後にMVP(Minimum Viable Product)を出してきてくれて。これが2017年の年初めくらいです。2ndプロダクトのローンチが2017年8月なので、それまで自分達が作るものが絶対に売れると信じ続けながら乗り切りました。実際に売れて何よりでしたが(笑)。途中でコンサルティングや受託開発をして乗り切ろうと考えたこともあったのですが、プロダクトに確信を抱いていたので、ひたすら開発に注力しました。実際、2017年8月に今のプロダクトをリリースしてから、タグ1行で導入できる手軽さで一気にショップ数が拡大し流通額が上がり始めました。

2015年6月に会社を設立したものの、2017年12月末まで、先輩のオフィスを間借りしていて、そこから荷物も海外へ発送していました。なのでショップ数が拡大するにつれ間借りしているのにオフィスに商品がたくさん届いて(笑)。倉庫代わりに使っていたユニットバスにも収まらなくなり、オフィスの大部分をうちの荷物が占有しはじめたところで間借りを諦めて、2018年1月にオフィス移転しました(笑)。

ホームページでは「自立(自律)人材の集合体」という組織風土を謳われておりますが、それを掲げることになった背景をお伺いできますか。

オプトの創業者である鉢嶺(はちみね)さんの影響を受けています。性別も国も関係ない、多種多様な考えを持ち、エッジの効いたメンバー1人ひとりが切磋琢磨し、お互いをリスペクトして個人の成長が組織の成長につながる⸻そんな組織にしたいという想いがあります。私は、そういったメンバーがイキイキできる場所を用意しようと思ったのです。そして、そのような優秀なメンバーたちが起業せずになぜ弊社に残ってくれているのかというと、私たちのzig-zagな部分が、ガッチャンコしているからだと思っています。ホームページにも記載がありますが、zig-zagというのは実は日本語ではなく、フランス語。グローバル・ダイバーシティの象徴です。これを知った時、社名をzig-zagにしようと思いました。

今後のグローバル展開をどのようにお考えでしょうか。

日本から世界へ、を推進したいと思っていますが、実は我々はすでにグローバルと繋がっているのですよね。あとは、物流拠点を海外展開したり対応言語を変えていけば日本から世界だけではなく、世界から世界に広がります。今のビジネスモデルの横展開になりますので。また横展開するだけでなく、他のサービスを作ることも考えています。グローバル展開はとてもポテンシャルがあって、例えば、北半球と南半球の季節ギャップを利用して、SDGs観点から季節外れの在庫を海外で販売するということもできます。そういった購入代行以外の事業も考えていますよ。

スタートアップ入社がきっかけで飛び込んでいったインターネットの世界

学生時代はどういう方でしたか。

私は沖縄県出身で、中学まで沖縄にいました。野球をやるために上京して高校生活はずっと野球漬けの毎日。ただ、野球についてはここで燃え尽きてしまい、大学はバイト漬けの毎日でした。比較的自立した性格をしていることもあり、何かを決めて進んでいこうというマインドは強い方だったのかもしれません。

子どもの頃からの夢と就活の軸。いくつもの運命の出会い

子どもの頃は「野球選手」でした。高校では、「甲子園に行くこと」。野球が強い高校でしたので、当時のチームメイトは実際に巨人軍へ入団しました。就活では、衣・食・住のうち、特に関心のつよかった「住」を重点的に探しました。実は、学生のうちに宅建資格を取っていたんです。大手不動産、住宅メーカー、建材メーカーからも内定をいただいていたものの、たまたまリクルートブックで見つけた広告代理店が魅力的で。大手企業の内定を辞退してオックスプランニング(現・クラウドポイント)という企業に就職しました。ここに入社しなかったら、大手企業に行って、ずっと会社員をしていたかもしれませんね。私はこの会社の内定者バイトで営業インターンも経験したのですが、実は、後にサイバーエージェントを起業することになる藤田さんも、学生インターンで営業していてその後の活躍に刺激を受けました。こうしてみると、私の軌跡は、結構運命的なのかもしれません。29歳のとき、当時まだ未上場だったオプトの鉢嶺さんとも出会いがあり、インターネット業界に飛び込む決断をしました。

シード期のスタートアップに向けて応援メッセージをいただけますか。

キャッシュアウトしそうだったあの頃にはもう戻りたくはないですけどね(笑)。
正直、当時の資金調達環境はイケイケの雰囲気だったので、シード期の資金調達を甘く見ていたところもあったわけで、いけるかなぁと思っていたら全然決まらずいけなかったんですね。そんな中でどれだけ自分を信じきれるか、作りたいものをイメージしきれるか、にかかっていると思っています。そこに迷いがあるならやめた方がいい。だって、他の人の人生を巻き込んでしまうでしょう。リアルな話、一緒にイベントに出ていたスタートアップ企業が半年後、1年後にサービスを停止したり場合によっては会社をクローズしたりする世界です。理由は人だったりプロダクトがイケてなかったり、お金が無くなったりハードシングスだらけなわけです。信じてやり切る強い意思と、あとは「鈍感力」ですかね。どうにかなる、どうにかするという気持ちが必要です。

最後に、読者へ向けて一言お願いします。

日本は、スタートアップ・エコシステムの育成がまだまだ未熟だと感じています。日本発の企業がこれから増加し成長していくには、さまざまなステークホルダーの登場、連携が不可欠です。そしてゲームチェンジャーはやはりスタートアップになることが多く、それを取り巻く大企業の理解ももちろん必要になります。多くの人が挑戦できる環境をぜひ後押ししてほしいと感じています。

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