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既定路線の外にいるものを肯定し、柔軟な発想で社会をアップデート 15歳で起業した山内氏が意思決定の際に大事にしていることとは

普段何気なく受け取っているレシート、それが何かの価値になるとしたら⸻
そんな構想を実現したのが、2018年6月にリリースされ、直後から大きな話題を呼んだ、レシート買取アプリの「ONE(ワン、以下ONE)」だ。レシートを撮影するだけで、最大10円がキャッシュバックされる。同アプリはリリース初日で8.5万ダウンロードを記録。その後、ダウンロード数は2021年9月に200万、2022年1月に300万、2022年5月には400万を超えた。毎日の買い物がより楽しくお得になるアプリへと進化している。

運営するのは2016年5月26日に設立されたWED株式会社(旧・ウォルト株式会社)。同社を15歳で創業したという山内 奏人(やまうち・そうと)氏。「10代の天才プログラマー」「高校生起業家」と注目を集め、Forbes30 Under30にも選ばれた彼が見据える世界とは。

会社員経験がないからこそできる柔軟な発想で「あたりまえを超える」

これまでのキャリアと、起業のきっかけを教えてください。

15歳だった2016年に起業、高校2年生だった2018年にONEをリリースしました。ONEの順調さにフォーカスいただくことが多いですが、実はONEのリリースまでは、試行錯誤を繰り返し、ビットコイン交換サービス、日本円送金サービス、決済アプリとプロダクトを三つほどクローズしています。資金は数億円調達させていただいていたものの、社員雇用もしていなかったので、スケールする事業をつくることに集中した10代でした。株主の皆さんが投資してくださったのはぼくの未来。であれば、早くそこに見合う成長をし、恩返しをしなければと考えていました。

ONEはリリースから4年弱経ちますが、2022年には累計3億枚に到達。2021年後半はテレビでの露出が増えたこともあり、一気にダウンロード数やレシート登録枚数が増えました。

アプリはエンプティな体験を心がけており、様々な方にお使いいただけるよう設計しています。クライアントはFMCG(Fast Moving Consumer Goods/日用消費財)業界の企業が多く、集めたデータをマーケティング等に活用いただいています。これまではブランドやチャネルを跨いでユーザーの購買行動を把握することはできませんでしたが、ONEによって自社ユーザーが競合他社の商品をどう購入しているか調査できるようになっています。レシートデータの文字化には、読み取り精度を高めるアルゴリズムを組んでいます。

東京都の選挙済証票も買取をされてましたね。

はい、コロナウイルスのワクチン接種証明書も集めていました。実はすべてのプロジェクトが事業なわけではなく、ぼく自身が「多くの人が選挙に行ってほしい」「多くの人がワクチン接種を進めてくれたら」といった想いベースで行っているものもあります。

起業されて以降、特に印象深かったことは?

やはりONEのリリースが最も衝撃的でした。”Redemption”というか、報われた気持ちと言いますか、やろうと思っていたことができた瞬間でした。

ぼくはずっと、資本なきエンジニアは無力だと思ってきました。そして資本も正しく投下されなければ腐っていってしまう。だからこそきちんと使われるサービスをつくり、そこに投資していかなければならないと考えてきました。ONEは朝6時にリリースし、1時間ごとに数字も追っていました。毎分、毎秒の立ち上がり方が他のものと比べてセンセーショナルで、その伸びを見て手応えを感じられました。

現在運用しているサービスはONEと売り上げ管理ソフトウェアのZeroです。ぼくはデータでサービスの価値を見定めるようにしており、フェーズごとにKPIも変えています。今後も、どのように使われているサービスかをデータで測りながら、改善や継続判断をしていきたいと考えています。

社名を2回変更されておりますね。

はい、創業時はウォルト、そして2017年10月ワンファイナンシャルからWEDへ社名変更しています。WEDは、「デザインとテクノロジー」や「体験とビジネス」の結合を意味する Weddingに因むほか、Wednesday(水曜日)の語源である北欧神話における狂気の主・知識の神オーディン(Óðinn)にあやかり、「知恵に対して誰よりも貪欲に、狂気とも言えるレベルで身につけていきたい」としています。

資金調達は順調な印象ですが、これまでいかがでしたか?

シード期にはEast Venturesや複数のエンジェル投資家の方にご助力いただきました。2017年に約1億円のプレシリーズA。2019年にシリーズA、2021年にシリーズB、2022年1月にシリーズCと、概ね1年ごとのペースで調達をさせていただいています。

組織風土、採用について伺えますか?

最も大切にしているのは「あたりまえを超える」というフィロソフィーです。

そのためにも、WEDはクリエイティブジャングルであってほしいと考えています。起業家にはタイプが二つあると思っていて。社会人経験を積んできた方々と、ぼくのような学生時代からそのままビジネスを開始してきた人間との、2種類。後者は、既存のルール上というより自分の発想ベースで事業をしようという理念な分、発想が柔軟です。そういった背景がある我々ならではかもしれませんが、事業を発想、構築していくにあたって、弊社ではBTC(Business x Technology x Creative)という考え方を元に議論の場での役割分担を行っています。ぼく自身はBusiness Creativeを担当していて、異なる視点を持った他の2名と3人で作戦会議をしています。

2022年3月には、組織をファンクション制からユニット制に移行しており、”体験”の研究開発組織「Experience Development Unit」(以下、EDU)と、現行のプロダクトのグロースに特化した組織「Product Growth Unit」(以下、PGU)を設立しました。新規アイディエーションをミッションとする組織と既存グロースをミッションとする組織を分けた形となります。

今後の展開についてどうお考えでしょうか。

ぼくはサービスやプロダクトをつくっていくときに、ユーザーにちゃんと「誤用」してもらえるようなデザインを心がけています。「誤用」というのはネガティブに捉えられがちですが、WEDでは「あぁそう来たか」というような「発見」だと思っています。多くの人にプロダクトを届けていると、ぼくたちの思いもよらない使い方をしてくださる方がいて、それこそがプロダクトづくりの醍醐味だと思っています。そういう「誤用」を観測することで、プロダクトやサービスをアップデートしていきたいですね。

起業後は2周目の人生、迷ったら「土」を思い出して

学生時代はどのように過ごされましたか?

ぼくは起業を境に第二の人生といっても過言でないほど人生が変わったので、それ以前は前世のような感覚です。小学校高学年になったくらいのタイミングで、パソコンと出会い、プログラミングコンテストで最優秀賞をいただきました。世の中には、自分という存在の価値を出す方法は色々と存在するのだ、と実感した出来事でした。学生ながらに、とあるスタートアップの事業を手伝うなど、その頃からも事業に触れる機会が増えていきました。創業直後から自分で資金調達をし、17歳でONEをリリースしたという流れです。それ以前の人生はきっと助走期間だったのだと思います。

ぼくは、珍しいと言われることが多い人生だと思っていて。政府や企業がつくってきたルールや習慣を、多くの人は、あたりまえで則るべきセオリーだと考えるように教育されているのではと思います。ぼくはそれを破るわけではないけれど、そのあたりまえだとされている範疇の外にある発想や、そういった発想をする人を、否定することに違和感があって。ぼくはあたりまえではないことを面白いと感じるし、応援していきたいのです。ぼくにとって面白いものとは、誰かを不幸にしない形で持続可能性がある、自分なりの解釈を与えて生み出せるもの。こと経営においては、その事業をやるか、継続するかはあくまで定量的に判断しますが、それ以前の面白さを、セオリーの外にあるものを肯定していくことを、常に忘れずにいたいと思っています。

事業以外にご趣味などはありますか。

お茶、ディズニー(植物)、F1……挙げるとキリがありません。一人暮らし独身の起業家は、多趣味な方がいいかもしれません。放っておくと、一日中、会社経営のことを考えてしまいますからね。経営はギャンブルに近いものだと思っていて、休日は逆に緊張を解いてリラックスし、柔軟な思考を取り戻す時間にしたいと考えています。自分を見つめて心を落ち着ける、それこそお茶を淹れたり、茶会をしたりといったことを休日にするのはおすすめです。

先日も静岡にお茶を摘みに行きました。ぼくは高校を卒業してからずっと一人暮らしをしていますが、自宅に茶室があるほどお茶が好きです。
家具を見るのも好きなのですが、インテリアや茶会というのは、実はサービス設計に通ずるものがあると思っています。例えば、椅子というものは、そこに座るという機能だけが定められていますが、そのデザインは無限。茶会もそうで、お茶を飲むという一連の行為は決まっていますが、例えば「今日は海を感じながらお茶を楽しみましょう」という会では、たとえ茶室から海が見えなくても、海を感じられるような地域で栽培されたお茶を楽しみ、海を想うことで、海を感じることができるのです。それはやはり、茶室が究極の道具だからだと思うのです。道具の作り手は、道具の使い方を規定してはいけない。「誤用」を生み出すデザインこそが、優れたデザインだと思っています。それをどう使うかは使う人の発想に任されていく、そんなデザインをしていきたいですね。

プレシード期からシード期のスタートアップへメッセージをいただけますか。

正直あまりないのですが、強いて言えば、自分を信じることかなと思います。自分を信じることは、経営のフェーズが上がるとどんどん難しくなっていく。いろんなことを言われ続けるので、正解がわからなくなっていくのです。ガバナンス意識は常に持っておくべきですが、意思決定は自分に従うことです。

どうやって判断をすればいいかわからなくなった時、ぼくは「土」を意識するようにしています。土というのは、Soilでもなければ、Landでもない。Earthに近いかもしれないですね。地球が生まれ、大地ができて、全ての生き物が大地の上で生まれ、生きて、死んで、また土に還って行く。土に還った世代がいるから、今のぼくたちが存在している。ぼくたちが土に還っていくことで、その土の上でこれから生まれ育っていく世代がいる。そういうことを考えたら、自分が為すべきことというのは、見えてくるはずです。これは企業経営とは別に、ぼく自身の個人ミッションではありますが、経営、そして経営者の在り方として、意思決定の鍵になると思っています。

最後に、読者へ一言お願いいたします。

自分を信じることが大切であるように、起業自体も、自分を信じた結果やりたいと感じられたらやればいいのだと思います。自分が何を考えたらいいのかわからなければ、「土」の話を思い出してみてください。迷ったら、土と対話をしたり、山に行ってみてもいい。巨大な歴史ある自然の前で、人間など無力です。土は何を考えて、どんな方向に向かっているのか。その中で自分が何をしたいのか、何ができるか。土を想う時、自分はどう感じているのか。ぜひ土と対話をしてみてください。

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