飲食店や小売店、医療機関の現場では、パートやアルバイトなど働き手のシフト管理を未だに紙やExcelなどで管理しているところも少なくない。従来のシフト管理方法では、シフト希望の回収からシフトの作成、共有までに膨大な作業時間を必要とし、スタッフ配置の最適化には限界もあった。
そのような課題の解決に挑み、多様な働き方が実現できる世界を目指してシフト管理システム「らくしふ」を開発・運営するのが株式会社クロスビットの小久保 孝咲(こくぼ・こうさく)氏だ。今回、小久保氏にインタビューを実施。見据えている事業展開や、そのために採用したい人物など、さまざまな話を伺った。
また、社風に話が及ぶと、オフィスにいた3名の社員の方も急遽インタビューに参加。非常に仲の良い会社であることもうかがえた。さまざまな観点からクロスビットを深掘りしたインタビュー記事をお届けする。
現場の使いやすさにこだわったシフト管理システム「らくしふ」
まず、クロスビットの事業内容を教えてください。
小久保:弊社は飲食店や医療機関、小売業など、業種を問わずさまざまな現場での使いやすさに徹底的にこだわった「らくしふ」というシステムを開発・運営しています。これはいわゆるシフト管理システムです。シフトの作成・管理業務において、こういったシステムは現場目線で開発されていないために使いづらく、導入したものの結局お蔵入りしてしまったという話を聞くことがままあります。「らくしふ」はそういった現場の声や課題にしっかりと耳を傾けながら、一つひとつの機能を現場のオペレーションに合うよう最適化して、総合的に見たときに最も使いやすいサービスとして選んでいただけるよう開発を進めていきました。
飲食店での導入も多いとのことですが、コロナ禍の時期はやはり貴社も影響を受けたのでしょうか。
小久保:そこまで大きな影響は受けませんでした。もちろん、新型コロナウイルスが出てきた当初は弊社の事業の行く末を心配しましたが、私たちのお客様にとっては、「らくしふ」がすでにインフラのような存在になっているようでした。また、弊社としても企業の現場の方と継続的なコミュニケーションをとっていたため、ほとんどのケースで解約に至ることはなくて。ただ、やはり飲食店の新規契約数は落ち込んでしまったため、本当はもう少し先のタイミングで実施しようと思っていた他業界への展開や、プロダクトラインナップの拡張を前倒しして進めていきました。
他業界の展開については、具体的にどのような業界にアプローチされたのでしょうか。
小久保:飲食業界と同様にシフト管理の手間に悩まれている小売業や病院、介護施設などに対して、訴求を強化していきました。その時点ですでにプロダクトがしっかりできていたこともあり、コロナ禍を経ても、戦略の変更で事業を粛々と伸ばしていくことができました。
目指すのは「全ての働く人に優しい社会」の実現
今後、貴社はどのような事業展開を描いているのでしょうか。
小久保:僕らが最終的に目指すのは、弊社のミッションにもある「全ての働く人に優しい社会」の実現です。そのような世界観を実現する一歩目として始めたのが「らくしふ」で、企業側のシフト管理の工数削減と効率化をお手伝いしています。中長期の構想としては「らくしふ」を起点に一つのプラットフォームとして進化させていくことで、結果として働き手がより自由度高く多様な働き方ができ、労働の経済的価値を最大化した社会を実現できるようになると考えています。
もう少し具体的に言えば、企業側がその週や月で欲しい人手のニーズと働き手側の就業可能時間をうまくマッチングさせる仕組みや、忙しい曜日・時間帯は時給を需給バランスによって変動させる仕組みを構想しているんです。このような仕組みが実現できれば、週1日3時間だけカフェで働くという働き方も可能になりますし、隙間時間でさまざまな店舗や企業の仕事を掛け持ちしながら、欲しい額を稼ぐといった新しい働き方もできると思います。そういった世界をつくることで、多様な方に仕事をするという選択肢が生まれ、ひいては日本の労働力不足や日本経済の停滞といった課題解決にも貢献できると考えています。そして、今すぐではありませんが、いずれは僕らの考える世界観を海外でも広げていけたらと思っています。
1兆円規模のスタートアップを目指して
貴社として今後ジョインしてほしい人物像などがあれば、ぜひ教えてください。
小久保:僕らは目指す世界観の実現に向けて、まだまださまざまなチャレンジを続けていかなければなりません。そういった環境で、会社と一緒に成長していきたい方は、ぜひ門を叩いていただけたら嬉しいです。現在所属している組織で何か制限がかかっていて、そこにフラストレーションを感じている成長意欲のある方にぜひ来ていただきたいです。「やりたいことがあるのに、今の環境ではできない」「自分にできる限りのことはやってみたい、挑戦したい」という方は、弊社の中で活躍しやすいと思います。
会社としていち早く目的地にたどり着きたいなら、「優秀で、『俺が』と前に出て人を引っ張りたいタイプ」の方に来てもらったほうが、会社として最速で結果を出せるかもしれません。でも、弊社は今、時間がかかってでもより遠い目的地に行きたいフェーズにある。だから、そういった短期爆速型の方よりも、社内メンバーとともにより良い化学変化を生み出してくれるような、優秀かつ内側に熱量を秘めた方に来ていただきたいと考えています。
ちなみに、どのような方が貴社にフィットするのでしょうか。
小久保:弊社は「クロスビットには職人気質の人が多い」と、よく言われます。優秀で仕事好き、周囲の評価や外からの見え方よりも、目の前のやるべきことに集中している。そんなメンバーが多いので職人気質の方はフィットするような気がします。
ただ、これらは僕だけが感じていることかもしれないので、ちょっと社内のほかのメンバーにも聞いてみますね。
ここから急遽、小久保さんのほかに、下記の3名にもインタビューに参加していただきました。
改めて、現場の方にもお集まりいただいたところで、貴社にはどんな方がいらっしゃるのでしょうか?みなさんが感じていることを教えていただけますか?
クロスビットには、困っている人や新しく入社した人に対して、手を差し伸べてくれる方が多い
目黒(広報):私はまだ入社して1ヶ月ほどなのですが、クロスビットには、各個人が自走しながらもほかのメンバーを助け合う人が多いように思います。誰かの指示が出る前に自ら考えて行動し、仕事を前に進められる方には合っていると思います。
今後入社される方には安心してほしいのですが、弊社には困っている人や新しく入社した人に対して、手を差し伸べてくださる方が多いです。例えば、私は入社したばかりのころ、社内のミーティングに参加しても、そこで何が話されているのかキャッチアップするのに苦労していたのですが、参加メンバーが一呼吸おいて「今はこういう話をしているよ」と要約や解説をしてくださいました。小さなことかもしれないのですが、そういった気遣いがとてもありがたいと感じました。このような細やかな気遣いで周りのメンバーを助けるといった事例は、社内でよく見かけるように思います。
入社直後ならではのエピソードですね。栄さんや美里さんの考える「クロスビットにフィットするメンバー」についても、ぜひお聞かせください。
栄(人事責任者):僕もまだ入社して半年ほどですが、会社から特に指示をしなくても、全メンバーがユーザーファーストで物事を考えられている点は、弊社ならではだと思います。顧客視点を重視して考えられる方は、仕事の進め方においてフィットするのではないでしょうか。
お互いに気持ちよく働ける「良い人」が多く、良い会社だなと思う
美里(デザイナー):僕は入社して7~8年経ちますが、小久保さんと同じく、「職人気質の人」という回答になると思います。弊社には、お金をもらっているから働くという消極的な態度ではなく、何か目的を達成するために仕事をしているメンバーが多いと思います。また、30名規模の会社だと誰かしら気の合わない人が出てきてもおかしくないのですが、この会社ではそれがありません。お互いに気持ちよく働ける「良い人」が多いので、いつも良い会社だなと思いながら仕事をしていますね。そういった「良い人」が多いのは、やはり採用選考で小久保さんが候補者の方をしっかり見ているからなのだろうと思っています。
記事ではなかなか伝わりきらないかもしれないのですが、ここまでのお話を聞いていると、貴社は本当に社内メンバーの仲が良い会社だと感じます。実はこの取材で、これだけたくさんの現場の方にインタビューにご参加いただいたのは初めてなんです。
小久保:「仲が良い」ということは、周囲からもよく言われる言葉です。弊社のメンバーでよくフットサル会を開くのですが、外部の方をお呼びすると、僕らの様子を見て「絶対良い会社だから」とその方の知人をリファラル採用でご紹介いただけることもあるんですよ。
栄(人事責任者):フットサル会を開催した日に、メッセージツールで「小久保さんと外部の方がリファラル採用に合意した証として握手した写真」が送られてくることがたまにあります(笑)。
プレシード期からシード期のスタートアップへ、応援メッセージをいただけますか?
小久保:プレシード期やシード期の起業家は、周りの人からいろいろなことを言われる時期ですよね。ときには、「事業、変えたら?」と厳しく言われることもあると思います。その言葉に従って事業を見直すのもありですが、もし、自分たちの手がける事業から遠い場所にいる方の発言だった場合、自分たちを信じてそのまま事業をやっていけばいいのではないかと思います。当事者だからこそ、見えているものがあるはずです。その経験や知見、感覚を信じて、前に進んでいけば、次のステージが見えてくるように思います。
最後に、読者へメッセージをお願いいたします!
小久保:この記事を読んでいるということは、読者の方はきっと、スタートアップというカテゴリーにかなり興味を持っている状態なんだと思います。ご本人の中でスタートアップにときめく何かがふつふつと沸き起こっているからこそ、こういった記事を読んでいるのだと思うので、一度スタートアップに転職するという選択を真剣に考えてみてはいかがでしょうか。栄さんはどう思います?
「想像もしていなかった未来」にたどり着きたいのなら、スタートアップを選ぶべき
栄(人事責任者):僕は「想像もしていなかった未来」にたどり着きたいのなら、スタートアップを選ぶべきだと思っています。スタートアップは予想外のできごとがたくさん起こる環境だからこそ、想定していなかった未来にたどり着く確率は高い。不確実で曖昧なことの中から、自分でも気づかなかった可能性を発見したいと思うのであれば、スタートアップに飛び込む価値はあるように思います。逆に言えば、キャリアを着々と積み上げていきたい方や想像している未来に行きたい方は、ストレスを感じる環境かもしれませんので、ある程度確立されたモノがある企業への転職をおすすめします。
小久保:栄さんの話を聞いていて思ったんですが、僕は基本的に「分からないこと」「できないこと」って楽しいことだと考えていて。そういった不確実な物事の量が圧倒的に多いのは、スタートアップならではの環境だと思います。僕自身、これまで分からないこと、できないことだらけの中を進んできましたし、スタートアップはどんどんフェーズが変わって、向くべき方向性もすごいスピードで変わっていきます。そういった「分からない未来」は不安かもしれませんが、楽しさも大きいものだと思うんですよね。
自分でやり方を見つけながら進んでいける人が、スタートアップに向いている
栄(人事責任者):たしかに、僕も分からないことが楽しいタイプかもしれません。僕は今年、初めて年末調整業務を担当したのですが、「これが年末調整を効率化するソフトウェアをつくりたくなる業務プロセスか!」と思いつつ、絶対にミスはできないというプレッシャーの中で社労士さんとともに業務を進めていくのが、実はかなり楽しかったんですよ。無事に年末調整が終わったときは、大きな達成感がありました。不確定要素の多いできごとであっても、自分でやり方を見つけながら進んでいける人がスタートアップに向いているのだと思います。自分が経験したことのない業務でも、「人生の中でこれを経験するチャンスに出会ったか」とニマニマしながら楽しめる方は、ぜひスタートアップへの門を叩いていただけたら!
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