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日本のモメンタムを上げよ⸻信頼される人こそが報われるキャリアのインフラを目指すYOUTRUSTの挑戦

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履歴書だけではない、自分の本当の魅力でもっと勝負したい。
カルチャーの合うメンバーが多いところで、気持ちよく仕事をしたい。
就職、転職活動経験がある人ならば、そんな風に思ったことはあるのではないだろうか。

初対面の面接官に履歴書とわずかな時間の面接で審査されるのがこれまでの日本の就職、転職の始め方。そんな状況を変えたいという思いで立ち上がった新しいキャリアサービスがある。それが、「ユートラ」の愛称でも親しまれている、信頼でつながるキャリアSNS「YOUTRUST」だ。
友人とのつながりをもとに、副業や転職のオファーが来たり、仕事の情報収集をすることができたり、これまでの人脈が生かされて仕事につながっていく。

YOUTRUSTはどのように生まれ、そしてこれからの日本の働き方にどう変革をもたらそうとしているのか。代表取締役CEOの岩崎由夏(いわさき・ゆか)氏にお話を伺った。

自分について自分が決めたことの中で、起業が一番楽しい

これまでのキャリアと、起業のきっかけを教えてください。

元々は関西の出身です。大阪大学の理学部化学科を卒業した後、就職のタイミングで上京しました。新卒でDeNAに入社し、一通りの採用業務と経営企画を経験し、最後の1年半は当時子会社だったペロリに出向させていただきました。この出向がきっかけでスタートアップに関心を持つようになり、実は、スタートアップへの転職を考えて転職活動を開始していたのですが、そこで課題を感じた結果、自分が転職するのではなく、転職体験を改善するサービスを起業する道を選ぶことになったのです。

日本では、転職市場においては、お金のある企業やポストに人が流れるように設計されています。企業の採用ページにアクセスしようにもまずその企業に知名度がなければならないし、人材エージェントに相談すれば成約フィーの高い、すなわち、年収が高いポストから優先的に紹介されてしまう構造になっています。私は採用業務担当でもありましたので、そういった業界の仕組みについては理解をしていたし、実際に人材紹介のサービスも利用していた一方で、この構造については疑問を感じていました。もっと本人の人生にとってフェアなキャリア設計が可能なのではないかと。

実際に自分が転職活動をするにあたって、まずは情報を集めたり、一緒に働きたいと思ってくださっている方がどれくらいいるのかを知りたくて、今まで関わってきた会社や友人に自分に転職意欲があることを知らせたいと考えました。しかし、これが意外と難しかったんです。YOUTRUSTでは「転職」や「副業」について「全く考えていない」「良い案件があれば」「いますぐ転職・副業したい」といったステータスを選び、それをYOUTRUSTでつながっている友人に公開することができます。もちろん同僚には非公開です。想像通り、ユーザーの皆さんからは好評で「ステータスを変更したらすぐ連絡がきたり、うちにこないかと言っていただけるのはとても嬉しい」という声が寄せられています。今までは、転職するとなったら職務経歴書と履歴書を更新し、何度も面接してというステップを踏まなければならなかったのが、まずは話をしてみて、相性が良さそうであれば業務委託から始めて、とカジュアルに進められるのはとても楽なんですよね。ユーザーは、個人も、仕事を依頼する法人側も、人材流動性が高いIT業界が中心。リクルートやサイバーエージェントなどのメガべンチャーやスタートアップなどが多いです。日本でも全体的に人材流動性は高まってきていますし、全員が人生で一度は転職するような時代が来れば、このサービスは間違いなくキャリアのインフラになると感じています。

起業して特に大変だったことを伺えますか?

大変なことばかりではあるのですが、スタートアップを始めてみて気がついたのは、私はハードシングスが嫌いではないということです。むしろ楽しんでいるところがあるかもしれません。実は日記をつけていて、その日記を見れば過去に何が起こって、その時どう感じていたか見返すことができるのですが、思い返してみるとどれもこれも楽しかったなと。今まで生きてきて自分が決めたことの中でも、起業が一番楽しい。仲間がいて、ユーザーさんがいて、徐々に業界が変わっていって。私がやろうとしていることは、誰の人生においても必要なはずなのに今までは大変だったことが、たった1クリックで変わる世界。変化を起こせている実感を日々感じ、生きている!と思うのです。

事業方針の転換などはありました。私たちはプチピボット、と呼んでいます。元々は転職で一般的に使われるようなサイトを作る予定でした。その構想をあちこちに持っていって意見をもらおうとすると、転職はさておき副業をしたいのだけれど、いい案件はないかと聞かれることの方が圧倒的に多かったんです。周囲の状況を聞いてみると、実際に副業のニーズは強く、しかも副業から転職につながる事例も多かったので副業も対象にすることにしました。

労働人口が減っていき、うっすらと不幸が全員を覆っていく日本。どうすれば日本が元気になるのか考えると、資本主義の国である以上はやはり経済成長が一つの鍵になるはずです。であれば、アメリカや中国のように新興企業が一大勢力になるように、日本においてもスタートアップを牽引したい。私たちにできることは、スタートアップに向けた人材流動性を上げることです。今すぐ転職したい人を転職させることも重要ですが、今までも行われてきたことで、すでに多くのプレイヤーも存在します。私たちがやるのは、転職潜在層の意欲を可視化し、日々キャリアについて考える文化を日本に浸透させ、ひいては日本の経済活性化を促すというとても大きなミッションなのです。

自分達がやろうとしているのは日本経済を揺るがすこと

2021年には、岩崎さんの前職であるDeNA代表の南場智子氏が率いるデライト・ベンチャーズ(以下、デライト)をリードとしてシリーズBの資金調達をされていらっしゃいますが、南場さんとは前職の頃からよくお話をされていたのでしょうか?

前職では経営企画と採用を担当していましたので、名前を覚えていただいている程度に面識はありました。とはいえ、今のようにちゃんとお話しさせていただくようになったのはYOUTRUSTを起業し、調達に動くようになってからですね。デライトはリード・インベスターになる方針のファンドではないので、シリーズBの調達の時もマイナーで出資いただければという気持ちでご相談に行ったのですが、実はその時に南場さんから「あなたたちがやろうとしていることは日本経済そのものを揺るがしうるインパクトのある事業。なのにこんな低い目線で上場を目指していては駄目、もっと上を見なさい」と叱咤していただいたのです。その言葉を聞いて、ああ、私はこの人と同じ目線で仕事をしたい、この人からもっと学びたいと強く思い、シリーズBのリードを取っていただけないかとお願いし、快諾いただいたというエピソードがあります。

組織風土、採用について伺えますか?

プロダクトが目指すものとして、信頼される人が報われるキャリアを歩んでほしいという強い思いがあります。経歴や役職も大切だけれど、周囲から「一緒に働きたい」と思われる人こそが本当に優秀な人だと私たちは考えています。そういう人にこそ素敵なキャリアに恵まれてほしい、という思いでサービスをつくっていますので、これに共感してくださる方にジョインいただければ嬉しいです。

これは私自身がそうですが、自分の頭で考えて、自分の考えを持って動くことが好きな人にはとても合う風土だと思います。会社は社長の器以上には成長しないという言葉がありますが、私もそう思っていて、自分の不得意なことが得意な方に入社していただけるのは嬉しいですね。実際に売上が上がるきっかけになったのはCOO、認知が上がるようになったのはCMOの入社の影響が大きかったです。私の脳の範疇を超える人たちに入ってもらうと、会社は面白くなっていく。であれば、私よりすごい脳をたくさん集めて、フル稼働していただければ、会社はもっと成長していけるはずなのです。

採用については、リファラルと自社サービスYOUTRUSTの活用を中心に進めています。また、立ち上げ時からキャリアに対する考えをあちこちで話して発信してきていますので、そこに共感して興味を持ってくれる方も多いですね。今後は、より自社の成長を非連続で加速させてくれるような、自ら変化を生み出しチームで成果にこだわる方とご縁を紡げるように、一層注力したいと考えています。

やればやるほど自分には資産が溜まり、未来が見える

学生時代はどのように過ごされましたか?

日本の女子校の中で医学部進学率が一番高く、芸能人やモデルも輩出している学校でした。私はそんな中でも、目立っていた方だったと思います。学級委員とかではないけれど、ムードメーカーなタイプ。みんなで何かするのが好きで、気がつくと輪の中心にいることが多かったように思います。部活はバスケットボール部で、球技が得意なわけではなかったのですが、メンバーが好きで、そこにいたいという気持ちで所属していました。

充実した学生生活ではあったのですが、成績に関しては、中学受験を戦い抜いたレベルの高い集団に入ってみたら、すごい子が周りにいることに気付き、自分は伸び悩んでいました。自分にできないことができる人はたくさんいる、でも自分には自分の個性がある、という概念を明確に持ったのはこれがきっかけだったかもしれません。

大学では理学部に進学しました。勉強漬けだった日々から、ある種解放されたわけなのですが、逆にやりたいことがなくなってしまって。理学部に進んだのは化学が好きで化粧品メーカーなどへの就職を検討したからでしたが、いざ研究に携わってみると、実験をしていても「早く終わらせたい」と思ってしまって。自分はじっくり積み重ねていくよりもすぐに動いて結果を出し、モメンタムを共有できるタイプの仲間と汗をかくのが好きなのだということを自覚し、課題がどんどん課せられるようなスピード感のある企業に入社しようとDeNAに決めました。

プレシード期からシード期のスタートアップへメッセージをいただけますか?

やり続ければなんとかなる、ということですかね。私も起業するときは何も持っていませんでしたが、時間を重ねていくうちに、応援してくれる人が、仲間が、資産が増えていきます。つらいことがあると、そのタイミングを切り取って落ち込んでしまいますが、スタートアップが目指すべきミッションというのはもっと大きなもののはず。競合企業はいくら調達している、ユーザー数がいくつまでいった、とスナップショットで比較してしまいがちですが、先輩企業はそれなりに時間を積み上げてその地点に立っているのです。だったら、できるだけ早く始めて、同じだけ時間をかけたら、きっと自分たちだって同じ場所に着くんだと信じていた方が良い。せっかく大きな事に取り組むと決めたのなら、レバレッジをかけて挑戦していってほしいと思います。

最後に、これから作りたい世界観と、読者へ一言お願い致します。

私は、日本の勢い、つまりモメンタムを上げたいと思っています。日本という国で生まれたり、育ったり、過ごしたり、関わっていることが楽しいと思ってほしい。私は今、とても楽しいです。生まれる時代は選べません。生まれる国も選べません。でもその前提に捉われずに機会を平等にしたいと思うし、それを自分がやろうと思えば、人生は情熱に満ちてきます。最初、何もない自分には大したことはできないと思うかも知れません。それでも、応援してくれる人ができて、仲間ができて、サービスができて。前よりもっともっとできる、これからこんな未来もつくれるかも知れないと、見えるものが日々広がっていきます。こうやって目線が上がっていく先に未来ができるのなら、きっと皆さんにもできる。私は、そんなロールモデルになりたい。やりたいことがある人、日本を楽しくしていきたい人は、眺めている側から自分で何かやる側にぜひ来てほしいと思っています。