2023年6月9日から2023年6月15日に発表されたスタートアップニュース、資金調達情報のうちJP Startups(ジャパスタ)が注目する案件をピックアップしてお届けいたします。
編集部コメント
今週、資金調達の発表の数は少なめだったが、分野が多岐にわたり、さまざまな業界で注目すべき企業の調達が目立った。
合成生物学により植物由来の希少成分を微生物で発酵生産するファーメランタ株式会社はシードで資金調達を実施。がんや血栓症の早期発見プラットフォーム実現を目指す株式会社CYBOはシリーズAで資金調達を行なった。また、支出管理サービス「バクラク」のシリーズ累計導入社数が5,000社を突破したことを発表した株式会社LayerXは、シリーズA累計で約82億円を調達。今週はそのほかにノーコードAIプラットフォーム「FLUX AI」を開発する株式会社FLUXなど、全4社をピックアップ。各分野での革新的な取り組みや技術の発展に期待したい。
今週はそのほかに、東京都の「先端医療機器アクセラレーションプロジェクト」や経済産業省のスタートアップ支援プログラム「J-StarX・米国東海岸コース」の募集情報も紹介していく。
スタートアップニュース
東京都「先端医療機器アクセラレーションプロジェクト」、令和5年度のプロジェクト支援対象者の募集を開始(2023年6月12日発表)
東京都より運営を受託した日本コンベンションサービス株式会社は、都内に高度管理医療機器等の先端医療機器のエコシステムを構築することを目的とした「先端医療機器アクセラレーションプロジェクト(AMDAP)」の令和5年度の募集開始を発表した。
同プロジェクトは平成30年度からベンチャー・中小企業を対象に、先端医療機器に関するビジネスプランを募集するもので、採択案件に対して各分野の専門家による集中支援のほか、最も優れたビジネスプランに対しては、研究開発補助(1期あたり最長3年・上限3億円・補助率2/3以内)を最長2期まで行う。応募書類提出期間は7月24日(月)~7月28日(金)17:00必着となる。また、オンライン事業説明会「医療機器ベンチャー成功の鍵:専門家の知恵とノウハウの結集」を6月14日(水)に開催予定、特別講演や採択事業者による講演・パネルディスカッションが行われる。応募詳細はAMDAPの公式HPより確認できる。元リリースはこちら。
CIC、米国東海岸展開を目指す国内起業家・スタートアップの支援プログラム「J-StarX・米国東海岸コース」の参加者を募集(2023年6月12日発表)
CIC Instituteは、CIC Cambridge (Japan Desk)および米国ボストンのアクセラレーターであるMassChallengeと共同で、経済産業省のスタートアップ支援プログラム「J-StarX・米国東海岸コース」を提供し、日本の起業家・スタートアップの米国東海岸展開の支援を行う。今回、同コースの「CIC Japan Deskプログラム」と「MassChallengeプログラム」の2プログラムの参加企業の募集開始を発表した。
「CIC Japan Deskプログラム」はロボティクスおよびクリーンテック分野のシリーズA以降のスタートアップ、「MassChallengeプログラム」は幅広い分野のアーリーステージのスタートアップを対象する。同プログラムは、日本発のスタートアップがグローバルに成長するうえで課題となる資金不足や成功例の少なさ、海外展開先でのネットワーク不足や人材不足などといった問題を解決すべく、最大40社のスタートアップを米国ボストンへ派遣し、人的ネットワークの構築サポートや、米国でのビジネス機会の提供・支援を行うことなどを目標としている。プログラムの詳細・応募についてはCICの公式HPにて確認できる。元リリースはこちら。
資金調達情報
【シード】健康増進に有用な植物由来の希少成分を発酵生産するファーメランタ株式会社、2億円の資金調達を実施(2023年6月14日発表)
合成生物学による植物由来希少成分の製造販売や物質生産菌株の構築サービスを行うファーメランタ株式会社は、Beyond Next Ventures株式会社、Angel Bridge株式会社、Plug and Play Japan株式会社を引受先として、総額2億円の資金調達を実施した。
ファーメランタは、植物由来の有用成分を発酵生産することで次世代のサプライチェーンを構築することを通じて、人類および地球の健康増進に貢献することを目指している。植物由来の希少成分を工業的に生産するためには農業による栽培方法では限界がある中で、同社の研究チームは、2008年に初めて微生物で植物由来のアルカロイドを発酵生産することに成功。同社の技術を使うことで、微生物を利用してこれらの成分を発酵生産することができ、気候や栽培地域に依存せず、日単位で大量の成分を生産・供給することが可能になるという。
今回の資金調達は、2022年10月の設立以来、初めて行われたもので、その資金は研究拠点の整備や研究開発チームの強化、さらに実験や資材などの研究開発費に充当する予定とのこと。また、現在開発中の複数の目的化合物における生産菌株の改良を行い生産効率を向上させ、既存製品の生産コストを下回る収量の達成を目指すほか、4年後の実用化に向けた計画を進める予定とのこと。併せて、提携先との共同研究事業を通して、次世代の発酵産業への貢献を目指したい考え。元リリースはこちら。
【シリーズA】AI医療機器理化学機器・診断機器およびソフトウェア開発のCYBO、4億円の資金調達を実施(2023年6月14日発表)
顕微鏡検査へのAI活用で、がんや血栓症などの病気の早期発見や治療の精密化を目指す株式会社CYBOは、ジャフコおよびインキュベイトファンドを引受先として、シリーズAで4億円の資金調達を実施した。
CYBOは「細胞を深く知り、細胞を広く活用する」ことを目指して、独自開発の高速撮像や細胞解析AIなどの技術を駆使して顕微鏡検査を効率化するソリューションを開発している。顕微鏡検査はがん検診や病理診断などで広く活用されているが、専門家の手技や経験、知識に大きく依存した検査のため、効率化や精度の安定化などが課題となっていた。同社はこの課題に応えるため、検体画像を高速かつ高品質でデジタル化する技術、および画像を解析するAI技術を統合したプラットフォーム製品「SHIGI」の開発を進めてきた。さらに、血液検査などのさまざまな用途に「SHIGI」を応用する研究開発も進めている。
今回調達した資金によって、「SHIGI」をベースとしたAI医療機器の開発および事業化を推進し、2024年度中の販売開始を目指すという。また、製品開発の加速および会社の規模拡大に伴い、エンジニアや管理人材などの採用を拡大する方針。併せて、本ラウンドの投資家であるジャフコから沼田 朋子氏が社外取締役に就任したことを発表した。元リリースはこちら。
【シリーズA】支出管理サービス「バクラク」のLayerX、シリーズA累約82億円の資金調達を実施(2023年6月13日発表)
請求書処理や経費精算、法人カードを中心とした支出管理サービス「バクラク」などを提供する株式会社LayerXは、シリーズAセカンドクローズとして26.8億円の資金調達を実施したことを発表した。シリーズAセカンドクローズでは、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、三菱UFJイノベーション・パートナーズ、DIMENSION、UB Ventures、SuMi TRUSTイノベーションファンド(三井住友信託銀行とSBIインベストメントが共同で設立したCVCファンド)、みずほキャピタルを引受先としている。同社は2023年2月にシリーズAファーストクローズで約55億円の調達を実施しており、今回の調達によって、シリーズAラウンドでの累計調達額は約82億円となった。
LayerXは「すべての経済活動を、デジタル化する。」をミッションに掲げ、支出管理サービス「バクラク」シリーズを中心に、デジタルネイティブなアセットマネジメント会社を目指す合弁会社「三井物産デジタル・アセットマネジメント」、プライバシー保護技術「Anonify」で組織横断のデータ利活用を目指すPrivacyTech事業などを開発・運営している。
今回調達した資金はAI・LLMも含めたバクラクシリーズの機能追加・開発費のほか、認知度向上を目的としたマーケティング費用、人材採用などに充てる予定。また、バクラク事業の開発・セールス・マーケティングなどの展開をより一層加速させていくほか、新たな事業の創造にも取り組んでいくという。元リリースはこちら。
【シリーズB】ノーコードAIスタートアップのFLUX、44億円の資金調達を実施(2023年6月14日発表)
株式会社FLUXは、DNX Ventures、Archetype Ventures、ジャパン・コインベスト、あおぞら企業投資、Salesforce Ventures、Sony Innovation Fund、SMBC日興証券、NTTドコモ・ベンチャーズを引受先とする第三者割当増資および新株予約権付社債と、金融機関からの融資等を合わせて、シリーズBラウンドにおいて総額44億円の資金調達を実施したことを発表した。今回の調達によって、同社の累計資金調達額は56億円となった。
FLUXは「テクノロジーをカンタンに。経済価値を最大化する。」をミッションに掲げ、予測分析・自然言語処理・大規模言語モデルなどのAI技術を開発スキルや知識がなくても簡単にビジネス活用できるノーコードAIプラットフォームの「FLUX AI」を開発している。近年、大規模言語モデルや生成AIといったAI技術により急速にビジネスが変化しつつある一方で、AI技術のビジネス活用には専門知識が求められることやAIエンジニアの不足等により導入が進まないといった問題が発生している。同社はそのような問題を解決するため、AI技術の基礎研究とサービス開発に力を入れ、提供する複数のサービスは媒体社や広告主などの大手企業を中心に導入されている。
今回調達した資金によって、性能向上のための開発を進めると同時に、生成AIを活用したクリエイティブ生成やコンテンツ生成などの新機能開発にも取り組むほか、AI技術の基礎研究にも力を注ぎ、予測分析や自然言語処理、大規模言語モデルなどの領域での研究を加速するという。さらに、協業先との共同研究を通じてあらゆる可能性を追求し、革新的なサービスと価値を提供していきたい方針。元リリースはこちら。
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