2023年5月26日から2023年6月1日に発表されたスタートアップニュース、資金調達情報のうちJP Startups(ジャパスタ)が注目する案件をピックアップしてお届けいたします。
編集部コメント
◆調達関連
ここ半年くらいで本当に急増していると感じる、いわゆるデスクワーカー以外の現場業務をDXするサービスがまた一つ調達。今週はほかに、児相DXサポートのAiCANや、工場廃水中の油脂を微生物で分解するMibioconをピックアップ。ソーシャルイシューへの向き合いがずいぶん増えてきたように感じる。ぜひ資金が流れるようになっていってほしい。
◆エコシステム関連
特に新興事業となるスタートアップには欠かせない知財 / IPを学べる特許庁のアクセラが公募開始。また、最近意欲的なDEEPCOREが2号で100億円超を達成。
スタートアップニュース
特許庁「知財アクセラレーションプログラム(IPAS)」、参加企業の公募を開始(2023年5月29日発表)
特許庁は、2023年5月29日(月)より、「知財アクセラレーションプログラム(IPAS)」(IPAS:IP Acceleration program for Startups)の公募を開始した。
スタートアップでは、革新的な技術やアイデアに基づく知財が主要な資産であり、競争力の源となる。しかし、スタートアップは知財に関する知識の不足やリソースの不足に直面しており、その結果、重要な知財が適切に保護・活用されず、競争力を失ってしまうという課題が存在している。
同プログラムでは事業と知財の両面でスタートアップの成長を加速させることを目的に、参加するスタートアップの課題や支援ニーズに対応したビジネス専門家と知財専門家からなる「メンタリングチーム」を組織。約5ヶ月間のメンタリングを通じて、参加スタートアップのビジネス戦略をブラッシュアップするとともに、ビジネス戦略に連動した知財戦略の構築を支援する。これにより、スタートアップが知財を戦略的に活用し、競争力を失うことなく成長を促進し、世界の競合他社と競い合って成功することを支援するという。
2023年6月7日(水)にはプログラムの内容や応募方法についての説明会を開催。説明会後は、IP BASE YouTubeチャンネルからも視聴できる。元リリースはこちら。
公募概要
応募期間:2023年5月29日(月)~2023年6月26日(月)
採択社数:20社
IP BASEウェブサイト:https://ipbase.go.jp/ipas/
AI特化型VCのDEEPCORE、2号ファンドを総額117億円でクローズ。生成系AIやロボティクスなどの先進的技術分野に投資(2023年5月31日発表)
AI特化型ベンチャーキャピタル(VC)の株式会社ディープコア(以下、DEEPCORE)は、シード・アーリーステージのAIスタートアップへの投資を目的とした2号ファンド「DEEPCORE TOKYO2号(正式名称:DEEPCORE TOKYO 2号投資事業有限責任組合)」を、総額117億円でファイナルクローズしたことを発表した。
2018年に組成した「DEEPCORE TOKYO1号」では、プレシード / シードからシリーズAを対象としたあらゆる業界・産業のスタートアップ62社に投資。DEEPCOREは、投資活動に加え、AI技術者・研究者・起業家のためのコミュニティ「KERNEL(カーネル)」の運営や、海外進出を見据えるアーリーステージのスタートアップに特化したアクセラレータープログラム「KERNEL Global Startup Camp」の運営といった支援を行っている。
2号ファンドでは、Generative AIやロボティクスなど先進的技術分野を重点投資分野とする予定で、同ファンドを通じてAI・ディープテック領域におけるイノベーションを加速させるとともに、日本および世界の産業構造や社会課題の解決に貢献するスタートアップ創出に向け、引き続き投資先企業の価値向上を支援していくという。元リリースはこちら。
都内スタートアップ支援プログラム「X-HUB TOKYO OUTBOUND PROGRAM 2023」5コースが募集開始!(2023年6月1日発表)
東京都主催・JETRO運営による都内スタートアップ支援プログラム「X-HUB TOKYO OUTBOUND PROGRAM 2023」が参加募集を開始を発表した。
同プログラムはグローバルに活躍する東京発スタートアップ企業創出のため、都内スタートアップ企業の海外展開を支援する。シリコンバレー、ニューヨーク、シンガポール、マニラ、ロンドン、ヨーロッパにおいて、各地域のエコシステムに精通しているグローバルアクセラレーターと連携し、全6コースを開催する。ブートキャンプやメンタリングに加え、ビジネスパートナーとの提携や投資家からの資金調達まで、参加企業のニーズに応じたさまざまな機会を提供するという。元リリースはこちら。
プログラム概要
募集企業数:各コース10社程度(選考あり)
参加費:無料(プログラム参加費と現地宿泊費は無料、渡航費およびプログラム外経費は各自負担)
使用言語:英語
参加形態:
国内プログラム⇒オンライン(一部コースは東京でのワークショップ開催あり)
現地渡航プログラム⇒リアル(一部コースは展示会参加あり)
対象企業:
東京に事業所を有するスタートアップ企業であること
創業から概ね10年以内の独立した企業であること
応募締切:各コースで異なるため、概要をご確認ください
各コース詳細・エントリーURL:https://www.x-hub-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/outbound_program
資金調達情報
【プレシリーズA】児童福祉の課題解決に取り組む株式会社AiCAN、7,000万円の資金調達を実施(2023年5月31日発表)
児童相談所をはじめとする児童福祉現場へ伴走型業務支援サービスを提供する株式会社AiCANは、ANRI株式会社が運営するANRI5号投資事業有限責任組合を引受先としたJ-KISS型新株予約権の発行により、7,000万円の資金調達を実施した。
同社は2020年3月に設立、「すべての子どもたちが安全な世界に変える」をビジョンに、自治体のDXを通して児童福祉の課題解決に取り組んでいる。子ども虐待の問題は、日本でも相談件数が年々増加しているが、職員数の不足と高度な判断を伴う対応の難しさから、現場はひっ迫しているという。そのような状況の中で、AiCANは現場の経験知と最新のテクノロジーを融合し、自治体の児童相談所や子育て支援課・母子保健課など、子ども虐待対応の最前線に立つ機関をサポートするサービス「AiCANサービス」を開発・提供している。
現在、複数の自治体にてそれぞれの課題解決に向けた実証実験を計画しており、今後さらに導入地域を広げていく予定のほか、今回の調達資金で開発体制・営業体制の強化を行い、サービスをよりユーザーに寄り添ったものにつくり込んでいくことで、事業を成長させていくという。元リリースはこちら。
【プレシリーズA】建設業界向けコミュニケーションアプリ「クラフタ」のグローバ、2.2億円の資金調達を実施(2023年5月31日発表)
建設業界向けにコミュニケーションアプリ「クラフタ」を運営する株式会社グローバは、DIMENSION、SMBCベンチャーキャピタル、ココナラスキルパートナーズ、ちゅうぎんキャピタルパートナーズ、NCBベンチャーキャピタルを引受先として、プレシリーズAラウンドで総額2.2億円の資金調達を実施した。
同社は2014年10月に設立。これまで電話やFAXが主なコミュニケーション手段だった建設業界で、職人さんたちのスマホ利用率が9割を超えたことをきっかけに、建設業界の方が誰でも無料で情報共有が可能なコミュニケーションアプリ「クラフタ」を提供している。
今回調達した資金で、建設業界全体のDX化を推進していくほか、職人不足やスケジュールのミスマッチ、紙の請求書問題などといった建設業界の非効率性を改善するために、クラフタ自体をプラットフォームとして活用していきたい考え。元リリースはこちら。
【ラウンド不明】油脂分解システム「Mibiocon」のフレンドマイクローブ、総額2億3,000万円の資金調達を実施(2023年5月31日発表)
微生物で SDGs 達成に貢献する株式会社フレンドマイクローブは、株式会社ジェネシア・ベンチャーズ、豊田合成株式会社、住友商事株式会社およびハウス食品グループイノベーション2号ファンドを引受先として、総額2億3000万円の資金調達を実施した。
同社は2017年6月に設立、「微生物を友だちに」を社名に掲げ、微生物やその酵素を用いた技術を実用化している。排水中の油脂分解システム「Mibiocon(マイビオコン)」は食品加工など 食品を取り扱っている工場から排出される廃水に含まれている油脂をターゲットとしている技術。従来は物理的に分離して産業廃棄物として処理されていた再利用性の乏しい排水中の油脂を、名古屋大学で開発された高性能油脂分解微生物群により分解することで、産業廃棄物である油性汚泥の発生を抑えることができる。大手食品会社でも活用され、油性廃棄物の削減・ 悪臭の解消・廃棄物処理コストの削減などの効果が得られている。
今回調達した資金を用いて、現在販売中の排水中の油脂分解システム「MiBiocon®- FW」の販売促進を行うとともに、さらなる性能向上のための開発をしていくという。また、排水中の油脂以外にも油脂分解微生物の適 用範囲を広げる開発を進め、グリストラップ(飲食店、工場などで排水中の油脂分を分離・貯留して排水管・下水道管に直接流さないようにする装置)や生ごみ処理機に適用するためのシステム開発を進める予定とのこと。さらに、動植物油分解に留まらず、鉱物油の分解技術の研究・開発を加速し、2年後の実用化に向け計画を進めたい意向だ。元リリースはこちら。
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