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【4/21-4/27】注目のスタートアップニュース・資金調達情報

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2023年4月21日から2023年4月27日に発表されたスタートアップニュース、資金調達情報のうちJP Startups(ジャパスタ)が注目する案件をピックアップしてお届けいたします。

編集部コメント

今週は製造業のDX、業務効率化サービス、生成AIのサービス開発、Gov Tech(ガブテック)など、幅広い分野のスタートアップから資金調達の発表があった印象。とはいえ、ゴールデンウィーク前ということもあり、発表されたプレスリリースの数自体は少な目だった。

今週の資金調達情報は、特に安定感のある企業をピックアップしてご紹介。電動マイクロモビリティのシェアリングサービスを手がける株式会社Luupは、シリーズCで総額45億円を調達。2023年7月の改正道路交通法の施行を見据え、今回の資金調達で事業のさらなる加速に期待がかかる。また、不動産業界の情報の非対称性という課題に切り込む株式会社エアドア、生殖補助医療の自動化機器を開発する株式会社アークスについても本稿の中で詳しく紹介する。両社はプレシリーズAとプレシードのため、今後の事業拡大に大いに期待したいところ。

また、今週のスタートアップニュースは、ANOBAKAとグロービス・キャピタル・パートナーズによる新ファンド組成の情報をお届けする。

スタートアップニュース

生成AI領域に特化した創業支援ファンドを、複数VC運営のANOBAKAが設立へ(2023年4月26日発表)

Credit : 同社プレスリリース

2016年より三つのファンドを運営し、インターネット関連で140社を超えるスタートアップへの投資を行ってきた株式会社ANOBAKA。同社は4月26日、生成AIを手がけるスタートアップに特化した創業支援ファンド「ANOBAKA GAI 1号投資事業有限責任組合(以下、GAIファンド。無限責任組合員はANOBAKA 3号有限責任事業組合、ANOBAKAは当該有限責任事業組合の組合員)」の設立を発表した。

生成AIの領域は、2022年11月にChatGPTがローンチされたことで、世界中で大きな盛り上がりと急速な発展を見せている。特に米国では、生成AIへの投資が増加。アプリケーションレイヤーを中心とした各領域で、生成AIに関連したスタートアップが多数生まれている現状がある。対して日本では、生成AIをテーマとしたスタートアップの勃興は緩やか。領域特化型LLM(大規模言語モデル)の生成によって、今後あらゆる事業が生成AIの影響を受けると予想される中で、ANOBAKAは国内にできるだけ早く、多くの生成AIビジネスの先進事例をつくる必要があると考え、ファンド組成に至ったという。

同社はGAIファンドを通じ、ナレッジ循環を目的としたコミュニティの組成なども行いながら、生成AIビジネスに挑む起業家を支援。日本の生成AIスタートアップ集積ファンドを目指していく考えを示す。

ファンドの出資者は、これまでANOBAKAのファンドに出資を行っていた既存投資家を中心に、事業会社や金融機関などで構成される予定。アンカーLPには株式会社CARAT HOLDENGSが参画。CARTAが運営する「CARTA Generative AI Lab」とGAIファンドが連携し、生成AIビジネスの可能性やテクノロジーリサーチを進めていくという。また、同社はマイクロソフト社の提供するスタートアップ企業支援プログラム「Microsoft for Startups」のスタートアップ支援パートナーに採択されており、GAIファンドでも同プログラムとの連携を図る予定だ。元リリースはこちら

グロービス・キャピタル・パートナーズ、7号ファンドの募集を727億円で完了。米国サンフランシスコに新拠点も開設(2023年4月25日発表)

Credit : 同社プレスリリース

1996年より約200社への投資を行い、七つのファンドを運営するグロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社(以下、GCP)は、7号ファンドの出資者募集を完了し、過去最大規模となる合計727億円のファンドを組成した。同ファンドは、GCPが6号ファンドで掲げた「First to Last」の投資方針を維持。シードからレイターステージまで、グロービス・グループの国内外のネットワークを最大限活用しながら、スタートアップへの支援を行うという。

特に7号ファンドは過去最大であることから、同社は1社あたり最大100億円規模の投資を行う考え。国内巨大産業のアップデートやグローバル展開を目指すスタートアップへの投資を積極的に実施することにより、日本の次世代産業創出に結びつくユニコーン・デカコーン企業の誕生を目指す。

また、同社はVCの付加価値を最大化するために取り組む施策の一貫として、米国・サンフランシスコに新拠点を設置。GCPの投資先企業が新設オフィスをグローバル展開拠点として活用できるようにするなど、投資先のグローバル展開支援を強化していくという。

GCPは1996年に1号ファンド(5億4000万円)を組成して以来、これまでに6個のファンドを運営。7号ファンドも合わせると、累計で1800億円を運用した実績を持つ。投資先は合計およそ200社で、直近ではビジョナル株式会社、株式会社メドレー、株式会社メルカリなど、国内でも有力な上場企業を多数輩出している。今回の新ファンド組成と米国拠点の新設で、同社が25年以上にわたり行ってきた日本の次世代企業の輩出と次世代産業の創造にさらなる弾みがつくと期待される。元リリースはこちら

資金調達情報

【プレシード】生殖補助医療の自動化機器を開発するアークス、J-KISS型新株予約権の発行で7,000万円を調達(2023年4月24日発表)

Credit : 同社プレスリリース

AIやロボット技術を活用し、生殖補助医療の一部工程の自動化や、質・成功率の向上を目指すプロダクトを開発する株式会社アークスは、J-KISS型新株予約権の発行により、プレシードラウンドで7,000万円の資金調達を実施した。引受先は株式会社ディープコアと株式会社みらい創造機構の2社。

生殖補助医療とは、「体外受精・胚移植」「顕微授精」「凍結胚・融解移植」など、人の手を高度に介在させた不妊治療を指す。厚生労働省の資料によれば、日本では2020年に6万人超、割合にして約14人に1人が生殖補助医療によって誕生しているとのデータがある。生殖補助医療は、2022年4月より一部の適用外を除き、基本的な治療については保険適用となった。今後、治療を受ける人が増える可能性は高い。その一方で、生殖補助医療に携わる医療技術者の「胚培養士」が全国的に不足している現状がある。胚培養士は顕微授精などにおいて、高度な専門技術を用いながら、卵子と精子を受精させて胚をつくる工程を担うため、人材不足は治療の質の維持や成功率の向上に大きく影響する。

アークスはこのような課題に対し、AIやロボット技術を活用した生殖補助医療向けのプロダクト開発を行う。現在はコア技術の確立に向け、研究開発や事業開発を進めているという。今回調達した資金は、大学との共同研究や医療機関と協力したデータ収集、AIやロボティクスをコアとした自社内での技術開発を加速させるために使用する予定。将来的には、胚培養士の高度な判断を支援するAI支援システムと培養室作業を自動化可能なプロダクト開発につなげたい考え。元リリースはこちら

【プレシリーズA】オンライン賃貸プラットフォームを運営するエアドア、J-KISS型新株予約権で総額1.5億円の資金調達を実施(2023年4月25日発表)

Credit : 同社プレスリリース

オンライン賃貸プラットフォーム「airdoor(エアドア)」を運営する株式会社エアドアは、株式会社ディープコアをリード投資家として、DNX Ventures、HAKOBUNEを引受先とするJ-KISS型新株予約権の発行により、総額1.5億円の資金調達を実施した。

エアドアが挑むのは、不動産賃貸において業界が長年抱えている構造的な課題だ。従来の賃貸の仕組みでは、物件の管理会社と仲介会社の使用するシステムが異なるために、エンドユーザーには最新の物件情報が行き渡らないという情報の非対称性が発生していた。この仕組みは「おとり物件(存在しない物件、または存在していても取引対象とならない物件)」の温床にもなり、現在でも業界の構造上、成約物件の情報を即時で取り下げることができておらず、物件を探すエンドユーザーに不利益が生じている状況がある。

エアドアはこのような課題の解決を目指し、オンライン賃貸プラットフォーム「airdoor」を運営する。同プラットフォームは管理会社のシステムとデータを直接連携。物件の管理会社のみが情報の掲載を行えるようにすることで、エンドユーザーは現在本当に入居者募集が行われている物件情報のみを手に入れることができるほか、賃貸情報サイトで起こりやすい「同じ物件の情報が多数掲載されている」という状況も発生しないプラットフォームを実現している。また、物件探しから内見、契約までをオンライン中心で行うことにより、仲介手数料が最大無料になるといったユーザーメリットの高いサービスを構築している。

同社は今回調達した資金をもとに、airdoorの取り扱い物件数拡大に向けた管理会社との提携やカスタマーサポートの強化、システム開発の推進を行うという。元リリースはこちら

【シリーズC】電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」を運営するLuup、総額45億円を調達(2023年4月25日発表)

Credit : 同社プレスリリース

電動キックボードや電動アシスト自転車など、電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP(ループ)」を手がける株式会社Luupは、第三者割当増資で約38億円、デッドファイナンスおよびリースで約7億円を調達し、シリーズCで計45億円の資金調達を実施した。第三者割当増資では、既存投資家にANRIとSMBCベンチャーキャピタル、森トラストなど7社が参加。また、新規投資家として三井不動産のCVCである31VENTURESや三菱UFJ信託銀行、GMOインターネットグループなど8社が参画し、合計15社からの出資を受けた。今回の調達により、同社は累計約91億円を調達したことになる。

スマートフォンのアプリで気軽に電動自転車や電動キックボードを借りることのできる「LUUP」は、街中にあるポートの多さと、基本料金が50円で1分あたりの利用料金は15円(税込)のという手頃さから、短距離移動での使いやすさに強みを持つサービス。現在は東京、大阪、京都、横浜、宇都宮、神戸の6都市で3,000カ所を超えるポートを展開しており、同社代表の岡井氏は「今後は地方都市への進出もさらに強化したい」と語っている。

ビジネス環境にも追い風が吹く。2023年7月1日には改正道路交通法が施行予定。LUUPの得意とする電動キックボードも「特定小型現電動機付自転車」として、最高速度が時速20km以下かつ16歳以上の利用であれば、免許不要で車道や自転車専用通行帯の走行が可能となる。同社は改正道路交通法の施行を受け、今回調達した資金を活用し、安全対策の強化や交通ルールの啓発に力を入れるほか、ポートの拡大や車両・アプリの改善を行っていくという。元リリースはこちら