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【4/6-4/14】注目のスタートアップニュース・資金調達情報

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2023年4月6日から2023年4月14日に発表されたスタートアップニュース、資金調達情報のうちJP Startups(ジャパスタ)が注目する案件をピックアップしてお届けいたします。

編集部コメント

4月も中旬に入った今週は、非常に多くの資金調達情報やスタートアップ関連のニュースが発表された週だった。特に多かったのが医療、エンターテインメント、士業関連の領域で事業を行うスタートアップの資金調達だ。本稿では特に士業領域に焦点を当て、次世代型会計事務所「SoVa」を運営する株式会社SoVaと、煩雑な相続手続きの課題を解決するWebプラットフォーム「そうぞくドットコム」を運営する株式会社AGE technologiesをピックアップして紹介する。

また、大学発スタートアップや学生ベンチャーによる資金調達が目立ったのも今週の特徴。今回は株式会社elleThermoと株式会社New Innovationsを取り上げ、記事内で詳しく紹介していく。

そのほか、スタートアップニュースは3つの話題をお届けする。中小機構によるアクセラレーション事業の公募が開始するほか、プロトスターがスタートアップ向けのM&A支援事業をスタートさせるなど、国内のスタートアップ環境の充実に期待したいニュースが集まっている。

スタートアップニュース

中小機構がアクセラレーション事業「FASTAR」の2023年度公募を5月1日に開始予定と公表(2023年4月11日発表)

Credit : 独立行政法人中小企業基盤整備機構 プレスリリース

国の中小企業政策の中核的な実施機関として、起業・創業期から成長期、成熟期に至るまで、企業の成長ステージに合わせた幅広い支援メニューを提供する独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)。同機構は4月11日、スタートアップの成長加速化を支援するアクセラレーション事業「FASTAR」を2023年度も実施し、第9期の支援先企業の公募を5月1日(月)より開始予定だと発表した。

「FASTAR」は将来的なIPOやM&Aなどを視野に入れながら、ユニコーン企業や地域の有力ベンチャー企業への成長を目指すシードスタートアップ向けのアクセラレーション事業。同事業の中では中小機構のリソースを用い、メンタリングやナレッジ提供、実証実験などのパートナー探索、PoCのサポート、VCや大企業とのマッチングとピッチ機会の提供など、幅広い支援を行う。これまでに計8回の実施実績があり、医療、バイオテクノロジー、ヘルスケア、メカ・ロボティクス、AIなどの分野で90社を採択。参加企業は累計およそ60億円の資金調達を完了している。

公募する企業の要件や具体的な手続きなどについては、5月1日に中小機構のプレスリリースで発表予定。元リリースはこちら

イグニション・ポイント ベンチャーパートナーズ、イオンモールとのCVC「Life Design Fund」を4月下旬に設立(2023年4月11日発表)

Credit : 同社プレスリリース

イグニション・ポイント ベンチャーパートナーズ株式会社(以下、IGP-VP)は、イオンモール株式会社と共同でコーポレートベンチャーキャピタル「Life Design Fund」を4月下旬に設立すると発表した。

2021年設立のIGP-VPは、新規事業の創出支援やコンサルティングを行うイグニション・ポイントグループでVC部門を担う。今回のCVCは、地域とともに「暮らしの未来」をつくるLife Design Developerを目指すイオンモールと事業シナジーのあるスタートアップの支援や連携を行うことを目的に設立。イオンモールはパートナー企業とともに、近年多様化・複雑化する社会課題への対応力を強化していくという。IGP-VPはスタートアップの発掘から投資判断、経営支援、IPO支援など、CVC運営の全工程に携わる予定。CVCでイオンモールとスタートアップの共創事業の実現を目指すことにより、次世代社会に対して新たな価値の創出を目指す考えを表明している。元リリースはこちら

Life Design Fund 概要

ファンド名:Life Design Fund 投資事業有限責任組合
設立予定日:2023年4月下旬
運用期間 :10年
運営規模 :30億円
運営会社 :イグニション・ポイント ベンチャーパートナーズ株式会社
投資方針 :

  • 社会や地域が抱える課題の解決につながる事業の創出
  • 当社が保有、管理する不動産ストックを活用した新規事業の創出
  • 同友店が営む店舗の高度化支援
  • 商業施設運営の高度化や新たな体験価値の創造
  • 既存の枠組みを超えた次世代型施設の創出

スタートアップ支援を行うプロトスター、Exitを支援する新サービス「スタートアップM&A」を4月6日より開始(2023年4月6日発表)

Credit : 同社プレスリリース

起業家・投資家のマッチングやメディア運営などを通じてスタートアップ支援を行うプロトスターは、スタートアップを対象としたM&Aサービス「スタートアップM&A」を4月6日に開始した。

同サービスでは、国内最大級のスタートアップ支援実績を保有するプロトスターが、M&Aの全フェーズをサポート。具体的には、買い手企業とのマッチング支援、持ち株比率やアーンアウトといったM&Aにおける重要ポイントのアドバイス、企業の非財務情報とシナジー効果を適正に評価したバリュエーションの提示などを実施する。これらの支援を通じてスタートアップのM&Aへのネガティブなイメージを払拭し、スタートアップのM&Aを活性化させていきたい考えだ。

ベンチャー企業の9割超がM&AによるExitを行う米国などと異なり、日本はM&Aを視野に入れて検討を進めるスタートアップが少ない現状がある。成長後の姿としてIPOを目指すケースが多いものの、昨今は市況の悪化により、「スタートアップの冬の時代」と言われるほど資金調達は難しさが増している。2021年を境にスタートアップの著名企業への売却事例が増えつつあるが、スタートアップのM&Aはまだ伸びしろのある領域。プロトスターはこの領域の支援を開始することで、同社の既存サービスと合わせてスタートアップの入口から出口までを一気通貫で支援し、スタートアップの選択肢の拡大とイノベーション創出を目指していくという。元リリースはこちら

資金調達情報

【シード】東工大の研究をもとに次世代の発電技術を開発するelleThermo、5,000万円の資金調達を実施(2023年4月14日発表)

Credit : 同社プレスリリース

東京工業大学 准教授の松下 祥子氏の研究から開発された半導体増感型熱利用電池(Semiconductor-Sensitized Thermal Cell、 以下、STC)。この技術の社会実装を目指す株式会社elleThermo(エレサーモ)は、2023年3月にシードラウンドでJ-KISS型新型予約権の発行による5,000万円の資金調達を実施した。引受先はみらい創造二号投資事業有限責任組合。

STCは最薄0.5mmのシート構造をした次世代の電池だ。半導体の熱を刺激として高エネルギーで運動する電子の反応をもとに、電池内で発電を行う仕組みとなっている。室温以上の熱源があれば発電できるため、時間帯や天候に左右されない発電が可能。松下氏は東日本大震災で「人々が安全・安心に使うことができ、かつ経済の発展を止めない発電システムの必要性」を痛感したことから、同技術を開発。今回調達した資金は、STCの社会実装を見据えた大型化と、耐久性の検証、エンドユーザーとのユースケース開発および仮説検証に使用する予定だという。

さらに今回、資金調達の引受先であるみらい創造二号投資事業有限責任組合を運営するみらい創造機構の執行役員・高橋 遼平氏がelleThermoの取締役に就任することが発表された。高橋氏は松下氏と1年以上にわたって築いてきた関係性をもとに、同社の運営に携わっていくという。元リリースはこちら

【プレシリーズA】次世代型会計事務所「SoVa」を運営するSoVa、約2.3億円の資金調達を実施(2023年4月12日発表)

Credit : 同社プレスリリース

テクノロジーと専門家による新しい形の会計事務所「SoVa」を運営する株式会社SoVaは、2023年3月にプレシリーズAで総額およそ2.3億円の資金調達を実施した。引受先はジャフコグループ、Globe Advisors Ventures、イーストベンチャーズなど計14社(個人投資家を含む)。

SoVaは2019年9月の創業。企業の複雑なバックオフィス業務や税務・労務・登記などの役所手続きを、テクノロジーと専門家をかけ合わせたプロダクトにより効率的に支援する次世代型会計事務所「SoVa」を2021年10月より運営している。自社開発のシステムでは、100種類以上の税務・労務・登記などの手続き方法を検索やチャットボットによって調べることができるほか、手続きのタスク管理や書類作成のレクチャー、書類のダウンロードまでをワンストップで行うことが可能。すでに300社以上の利用実績があり、今後はさらに多様なニーズに対応範囲を広げるべく、調達した資金で採用・組織体制の強化とプロダクト開発を行っていくという。元リリースはこちら

【シリーズA】OMOソリューションの開発を行うNew Innovationsが第三者割当増資などにより54.1億円の資金調達を実施(2023年4月12日発表)

Credit : 同社プレスリリース

AIやクラウド、オンライン制御などのコア技術をもとに、OMOソリューションの開発を行う株式会社New Innovationsは、シリーズAで総額54.1億円の資金調達を実施した。今回はSBIインベストメント、グローバル・ブレインをはじめとする12社を引受先とした約26.3億円の第三者割当増資と、三井住友銀行、みずほ銀行、三菱UFJ銀行をはじめとする7つの金融機関からの約27.8億円の融資、リース枠の設定などによって資金を調達。これにより、創業から累計で56.5億円の調達を完了したことになる。

同社は業務の省人化・自動化によって、人がより付加価値の高い仕事に従事できる社会の実現を目指し、AIやロボティクスなどの技術を活用したソフトウェア×ハードウェアのソリューションを開発・提供している。2021年4月には自社プロダクトとして、アプリで時間と受け取り場所を指定すると完全無人・非接触でスペシャルティコーヒーを受け取ることができるAIカフェロボット「root C(ルートシー)」をリリース。企業のオフィス内や商業施設などでの設置を進めてきた。

2021年後半からは主力事業として「OMOソリューション」を展開。AIやアプリケーションレイヤーから組み込みまで幅広い制御技術を活用し、各業界で省力化・自動化を実現可能なハードウェア開発とソフトウェア構築を行い、コンサルティングから事業展開までワンストップでサービスの提供を行っている。今回調達した資金は、OMOソリューションの新規事業やAIカフェロボット「root C」のサービス拡大、人材採用などに活用する予定だという。元リリースはこちら

【シリーズB】「そうぞくドットコム」を運営するAGE technologies、総額5.9億円の資金調達を実施(2023年4月12日発表)

Credit : 同社プレスリリース

「そうぞくドットコム」のブランド名のもと、相続手続きを効率化可能な各種サービスを開発・運営する株式会社AGE technologiesは、シリーズBラウンドで総額5.9億円を調達した。今回の資金調達は第三者割当増資と融資によって実施。第三者割当増資では、KUSABI、DGベンチャーズ、Open Network Lab・ESG1号投資事業有限責任組合(通称:Earthshotファンド)、三菱UFJ信託銀行、りそなキャピタル6号投資事業組合が引受先となり、融資は日本政策金融公庫とりそな銀行が融資元となった。

同社は煩雑な相続手続きを効率化するWebプラットフォームを複数展開。不動産の名義変更手続きサービスとして「そうぞくドットコム不動産」を2020年より提供しているほか、2022年からは全国の金融機関の口座払い戻し手続きを効率化する「そうぞくドットコム預貯金」の提供を開始した。「そうぞくドットコム不動産」は2023年3月現在、累計21,000件の手続きを実施した実績を持つ。高齢者を中心に、30~80代の幅広い年代で利用されている。

不動産の相続は2024年4月より登記が義務化されるため、同サービスの市場は成長が見込まれる。そのような背景から、同社は今回調達した資金を「そうぞくドットコム」の利用者拡大を目的としたプロモーション強化と、事業者向けの相続業務支援サービスの展開、相続周辺領域の新規事業・新サービスの開発に使用する予定だという。今回の資金調達をきっかけに、既存事業領域の拡充と新規事業拡大を同時並行で加速させたい考えだ。元リリースはこちら