2023年3月24日から2023年3月31日に発表されたスタートアップニュース、資金調達情報のうちJP Startups(ジャパスタ)が注目する案件をピックアップしてお届けいたします。
編集部コメント
年度末ということもあり、今週は資金調達を発表したスタートアップが少なめ。資金調達を行ったスタートアップは、堅調で安定感のある企業や「次世代技術」がキーワードとなった企業が多かった印象だ。
次世代技術を持つスタートアップでは、世界でも珍しい小規模の水再利用システムを開発するWOTA、においのデータプラットフォームを開発するレボーン、身体感覚の伝達を可能にする技術開発を行うH2Lなどが資金調達を実施。堅調に推移するスタートアップでは、編集部が以前より注目してきたIVRyやカケハシなど、SaaSを手がけるスタートアップの調達が目立った。
また、4月10日はグローバル課題の解決に挑む起業家を発掘・支援する世界最大級のピッチコンテスト「Extreme Tech Challenge (以下、XTC)」の日本大会が開催される。どのような企業が世界大会への切符を手にするのか、注目したいところ。大会内容の詳細などは、本稿の中で詳しく紹介する。
スタートアップニュース
SDGs×ディープテックの世界最大級ピッチコンテスト・XTC、日本大会を4月10日開催。出場企業10社が決定へ(2023年3月24日発表)
テクノロジーでグローバル課題の解決に挑む起業家を発掘・支援する世界最大級のピッチコンテスト「Extreme Tech Challenge (以下、XTC)」。同コンテストの日本大会を運営するXTC JAPAN運営委員会は、4月10日開催の「XTC JAPAN 2023」に出場する企業の決定を発表した。
今年で4回目の開催となる日本大会には、下記の10社が出場予定。日本と海外の双方で投資・事業拡大をリードする投資家や大企業を前に、各社は3分のプレゼンテーションを行う。
XTC JAPAN 2023 出場企業
Aseel Technology Corporation / bitBiome株式会社 / 株式会社セルクラウド / 株式会社Dots for / エレファンテック株式会社 / Planet DAO / 株式会社STANDAGE / 株式会社ユニバーサル・バイオサンプリング / Visnu株式会社 / ヴィタネット・ジャパン株式会社
XTCの世界大会は、これまでに100カ国から5,000社以上が参加している。大会で扱うテーマは、SDGs17の目標のうち、農業・食糧、環境・エネルギー、新素材、教育、実現技術、バイオ技術、デジタルヘルスケア、フィンテック、交通、スマートシティの10カテゴリー。日本大会でも、このカテゴリをもとに、事業計画の市場性と問題解決力を競う。優勝企業2社は、2023年9月に米国で開催予定のXTC世界大会に招待されるほか、海外スタートアップ投資で20年以上の実績を持つVC、Zoomやトレジャーデータの創業を支援したVC「IT-Farm」をメンターとして、世界企業の投資部門や協業責任者にプレゼンテーションを行うことが可能となる。
「XTC JAPAN 2023」は4月10日(月)の15時より、新丸の内ビルディング コンファレンススクエアRoom901で開催。入場チケットはPeatixより購入可能。元リリースはこちら。
資金調達情報
【シリーズB】電話業務DX SaaSを手がけるIVRy、第三者割当増資により13.1億円の資金調達を実施(2023年3月29日発表)
電話DX SaaS「IVRy(アイブリー)」を開発・提供する株式会社IVRyは、シリーズBで第三者割当増資による13.1億円の資金調達を実施した。引受先はフェムトグロース・スリー投資事業有限責任組合、Headline Asia、三菱UFJキャピタル株式会社、みずほキャピタル株式会社、SMBCベンチャーキャピタル株式会社、BRICKS FUND TOKYOの6社。今回の資金調達により、同社の累計資金調達額は17億円を超えた。
IVRyは、日本のビジネス市場で大多数を占めるスモールビジネスや中小企業を主なターゲットとして、電話業務を自動化し、フロントオフィス業務の効率化および生産性向上を実現するSaaS「IVRy」を開発・提供している。同サービスでは、顧客のニーズに応じた電話対応の分岐をノーコードで設定できる。また、マニュアルなしで使える直感的なUI/UXや資本の限られた企業にも使いやすい価格設定などが特徴。同社の発表によると、サービスの利用者は全国で5,000アカウント以上(2023年3月時点)に達しており、2022年12月時点での月次経常収益は昨年比600%と、T2D3を超えるペースで成長を遂げている。
今回調達した資金は、GPT-4やChatGPTなどのAI技術を活用したプロダクト開発、認知拡大・利用促進に向けたセールス・マーケティング・PR活動の強化、各ポジションの採用強化に活用していく予定。
さらに、資金調達の発表に合わせ、AI音声認識機能(β)とChatGPTを活用した通話音声要約機能(β)も提供を開始した。AI音声認識機能(β)では、電話をかけた人がキーパッドを押さずとも、音声を認識して自動応答を可能にする。ChatGPTを活用した通話音声要約機能は、IVRy上の通話内容や録音内容を要約して表示する機能で、企業の担当者は録音を聞かずとも、電話内容の要点を即時で確認することが可能となる。同社は電話業務の効率化を足がかりに、フロントオフィス領域のDX推進に貢献していきたい考え。元リリースはこちら。
【関連記事】
「電話」が日本の生産性向上の鍵になる。SaaSで電話業務のDXに挑むIVRy・奥西 亮賀氏インタビュー
多くの企業が煩雑さを感じながらも、電話業務は長い間アナログなまま、資金に余裕のある大手企業以外はなかなか業務効率化に至れ…
【シリーズB】ノンデスクワーカーの業務DXプラットフォームを開発・提供するカミナシ、約30億円の資金調達を実施(2023年3月29日発表)
工場や店舗で使われている紙の帳票をデジタル化し、ノーコードで業務アプリを構築可能な現場DXプラットフォーム「カミナシ」を開発・提供する株式会社カミナシ。同社はシリーズBで、約30億円の資金調達を実施した。今回の調達は第三者割当増資と金融機関からの融資で実施。前者では、既存投資家のCoral Capital、ALL STAR SAAS FUND、千葉道場ファンドに加え、新たにみずほキャピタルを引受先に迎えた。後者では、日本政策金融公庫やみずほ銀行などが融資元となった。これにより、同社の累計資金調達額は約44億円に達する見込み。
「カミナシ」は、工場や店舗の現場で働くスタッフが、これまでは紙で管理していたさまざまな情報のデジタル管理を実現できるツール。現場担当者がノーコードで業務アプリをつくることができ、自社の業務に合った形で作業者や管理者の業務効率化を叶えることが可能だ。導入数は全国で累計7,000カ所以上。食品やホテル、飲食、交通など、30以上の業種でDX推進に貢献している。
労働人口が減少していく日本において、ノンデスクワーカーの人手不足は今後ますます深刻化する。医療や福祉、卸売、小売など、デスクワークではない「現場」を持つ企業にとっては、いかに現場業務のDXを進めるかが喫緊の課題となっている。そのような課題の解決を目指して、カミナシは「まるごと現場DX構想」を策定。業務・人・コミュニケーションを軸に、あらゆる現場業務の効率化を実現するオールインワンサービスの構築を目指すという。
今回調達した資金は、この「まるごと現場DX構想」の実現に向けて、既存および新規プロダクトの開発に携わる人材採用と組織強化に充当する予定。2023年内には、採用や教育、シフト管理などの「人」にまつわる業務を効率化可能なプロダクトをリリースする計画だという。元リリースはこちら。
【シリーズC】高機能EVを開発・販売するEV モーターズ・ジャパン、第三者割当増資で14.5億円の追加資金調達を実施。シリーズCでの調達を終了(2023年3月27日発表)
低電力消費率、長寿命、安全を兼ね備えたバスやトラック、特殊車両などの電気自動車を開発する株式会社 EV モーターズ・ジャパンは、シリーズCで第三者割当増資による追加の資金調達を実施。14.5億円を調達した。引受先は、いよぎんキャピタル、インキュベイトファンド、NTTドコモ・ベンチャーズ、四国電力など計14社。今回で累計47.25億円の資金調達が完了し、シリーズCラウンドでの資金調達を終えた。
同社は商用の電気自動車に特化し、開発から製造、販売までを手がけている。30年以上にわたり蓄積した自社技術をもとに、独自開発したモーター制御システムで、世界でも高い水準の低電力化とバッテリーの長寿命化を実現。性能とコストの優位性をあわせもつ量産型商用EVのグローバル展開を目指している。また、自社技術を活かし、再生可能エネルギー事業やMaaS事業も展開。EV販売台数が急増する世界市場において(国際エネルギー機関 発表)、同社の今後の事業展開に期待がかかる。
今回調達した資金は、現在の受注案件に使用するほか、今後想定される大量発注案件に対応するための国内商用EV組み立て工場の建設資金、EV市場のニーズに応えるための試作車両・デモ車両開発の研究費、組織体制の強化などに充当する予定だという。同社は今後、商用EV量産体制の強化と、車両ラインナップの拡充を行い、ゼロエミッション社会の実現に向けて事業を進めていく考えだ。元リリースはこちら。
【シリーズC】薬局体験アシスタント「Musubi」などを運営するカケハシ、約18億円の追加資金調達を実施。総額94億円でシリーズCラウンドをクローズ(2023年3月29日発表)
「日本の医療体験を、しなやかに」をミッションに掲げ、薬局の働き方改革と患者満足を支援する薬局体験アシスタント「Musubi(ムスビ)」などを手がける株式会社カケハシ。同社は第三者割当増資により、およそ18億円の追加資金調達を実施した。引受先は既存投資家のDNX Ventures、Aflac Ventures LLC、千葉道場ファンドのほか、新規でプライベート・エクイティ・コインベストが参加。シリーズCラウンドは総額およそ94億円でクローズとなり、これまでに累計約149億円を調達したことになる。
カケハシは現在、薬局向けに4種類のサービスを展開し、患者と薬剤師の関係性強化や、患者が前向きに服薬できる環境の整備、薬局の経営改善などに貢献している。2017年に電子薬歴・服薬指導ツールとしてスタートした薬局体験アシスタント「Musubi」は、タブレット端末での服薬指導を可能にし、薬剤服用歴のドラフト作成をワンタッチで行えるほか、患者の健康状態や生活習慣に合わせたアドバイスも提示できる。全国の薬局で採用され、現在の市場シェアは10%にのぼる。また、関連して、薬局向けデータプラットフォーム「Musubi Insight」、患者フォローシステム「Pocket Musubi」、医薬品在庫管理・発注システム「Musubi AI在庫管理」も展開。薬局のDXを推進している。
今回調達した資金は、既存事業の成長を見据えた組織基盤の強化や、積極的な新規事業立ち上げを行うべく、人材採用や子会社の立ち上げに使用予定。今後は薬局DXの先にある医療体験そのものの進化を目指して、医薬品産業や医療産業全体へと視野を広げた取り組みに着手していくという。元リリースはこちら。
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