2023年3月3日から2023年3月9日に発表されたスタートアップニュース、資金調達情報のうちJP Startups(ジャパスタ)が注目する案件をピックアップしてお届けいたします。
編集部コメント
3月8日に、月面ランダー・ローバーの開発運用を行うispaceが東証グロースへの上場承認が出たことを発表した。日本に本社を置く宇宙事業スタートアップとして初の上場承認事例となる。編集部でも毎週調達ニュースを見ているが、宇宙事業を営む企業のニュース数は肌感でも増えて来ていて、今週も高精細小型SAR衛星「QPS-SAR」を開発するQPS研究所が追加で10億円を調達、累計額は100億円に近くなった。
ユニークな事業での調達が多かった先週だったが、他には在宅ケア介護士マッチングサービスの「イチロウ」をピックアップ。フィンランド等の北欧ではすでに公的補助を受けながら、血縁・戸籍によらず最後まで自身が介護士ケアを受けながら自宅療養する文化があるが、日本ではまだ家族に負担がいく構成になっている。少子高齢化の進む日本でますます必要性高まる事業であり、応援していきたい。
他にはスマートシャトル・乗合サービスのNearMeをピックアップ。インバウンドの戻りを実感する最近だが、送迎需要の高まりによる事業加速が期待される。
スタートアップニュース
VCのジェネシア・ベンチャーズ、起業家向けの事業成長支援プログラム「Entrepreneurs Academy」の応募受付を開始。実践型講義を担当する講師陣を発表(2023年3月7日発表)
シード期のスタートアップに投資と経営支援を行う、株式会社ジェネシア・ベンチャーズは、実践型講義や個別メンタリングを組み合わせた起業家向けの事業成長支援プログラム 「Entrepreneurs Academy」(アントレプレナーズアカデミー)の実施と応募の受付を2023年2月28日に発表した。今回新たに2023年5月~9月の4ヶ月にわたり実施する実践型講義を担当する講師陣を公開。辻 庸介氏(株式会社マネーフォワード 代表取締役社長 CEO)、堀 ナナ氏(Tensor Energy株式会社 Founder)、我妻 陽一氏(株式会社助太刀 代表取締役社長兼CEO)の3名の講師から応援コメントが寄せられた。
本プログラムは、「産業創造プラットフォーム」の構築をミッションに掲げ、累計130社(※2023年2月時点)を超える創業期のスタートアップに投資・伴走してきた中で得られた実践的な知見や投資先起業家の実体験を共有することで、日本のスタートアップエコシステム全体の底上げを目指すものになっている。
幅広い属性の起業家を対象として、実際のスタートアップ経営者や事業家目線の実践的な座学コンテンツや第一線で活躍するスタートアップ経営者の座談会などを、4ヶ月間で集中的に提供するという。元リリースはこちら。
「Entrepreneurs Academy」スケジュール
募集期間:2023年2月28日(火)9:00 ~ 2023年3月24日(金)23:59
選考期間:2023年3月25日(土) ~ 2023年4月下旬
プログラム期間:2023年5月上旬 ~ 2023年9月下旬
プレシード・シード期に特化した独立系VCのmint、創業準備中/創業期の起業家向けの無料オフィス支援プログラム「FLAP」第20期を募集開始(2023年3月7日発表)
プレシード・シード期に特化した独立系ベンチャーキャピタルのmintは、創業準備中/創業期の起業家向けの無料オフィス支援プログラム「FLAP」の第20期を2023年3月7日より募集を開始した。最大9社の採択企業に対し、6ヶ月間の無料オフィス支援及び各種サポートプログラムを提供する。
本プログラムは、2018年8月の開始以降、91チームがプログラムに参加。過去19期で13社のスタートアップに対して最大5,000万円の出資を行っている。採択企業は、渋谷の「Plug and Play Shibuya powered by 東急不動産」でのオフィス支援プラン、「GUILD SHIBUYA」でのリモート登記プランのいずれかを指定し、利用することが可能なほか、上場企業経営者や各分野のプロフェッショナルによるネットワーキングやアドバイスを受けることができる。元リリースはこちら。
「FLAP」募集概要
①オフィス:Plug and Play Shibuya powered by 東急不動産
②オフィス:GUILD SHIBUYA
入居期間:2023年4月1日(土) 〜 2023年9月30日(土)(第20期)
応募条件:
- 会社を設立して6ヶ月以内、または6ヶ月以内に会社設立を予定している
- IT関連のスタートアップである
- 「FLAP」コミュニティに積極的に関わっていただけること
募集期間:2023年3月7日(火) 〜 2023年3月17日(金)
応募フォーム :https://forms.gle/cHGBxMk89tpNpAoj7
資金調達情報
【シリーズA】超高齢社会を支える介護インフラ実現を目指すイチロウ、シリーズAで2.2億円を調達(2023年3月8日発表)
オーダーメイド介護サービス「イチロウ」を運営するイチロウ株式会社は、三井住友海上キャピタル、Open Network Lab・ESG1号投資事業有限責任組合(通称:Earthshotファンド)、みずほキャピタル、ちゅうぎんキャピタルパートナーズ、セゾン・ベンチャーズ、個人投資家1名を引受先として、2.2億円の資金調達を実施。併せて、社名(商号)を「株式会社LINK」から「イチロウ株式会社」に変更したことを発表した。
同社は2017年4月に設立、「超高齢社会を支える礎を作る」をミッションとして掲げ、様々な課題を抱える日本の介護現場の課題解決に取り組む。「イチロウ」は、公的介護保険では支援が受けられない在宅介護ニーズに対して、オンライン上でケアパートナー(介護士)をマッチングし派遣するサービスで、1回あたり2時間から、最短当日にケアパートナーの派遣を依頼し、介護サービスを受けることが可能。介護技術と相性を考慮した独自のアルゴリズムによる高いマッチングと、被介護者とご家族に寄り添ったサービスを提供している。
今回調達した資金は、2019年10月のサービス開始以来、ケアパートナー登録数が累計2,200人を超え、2022年の利用額が前年比400%以上とサービスを拡大している中、全国展開に向けたエリア拡大とサービス強化のためのプロダクト開発、人材採用及びマーケティング強化に投資するという。元リリースはこちら。
【シリーズB】相乗MaaSのNearMe、シリーズBで約13億円を調達(2023年3月8日発表)
「シェアによって、お得でスムーズ」な移動体験を提供するスマートシャトル®を展開する株式会社NearMeは、第一生命保険株式会社、株式会社大林組、三井不動産株式会社などを引受先とした第三者割当増資および、株式会社日本政策金融公庫からの借入により、シリーズBセカンドクローズにて総額約7億円の資金調達を実施。シリーズBラウンドとしては約13億円、これまでの累計調達額は約23億円になった。
同社は2017年7月に設立、シェアリングエコノミーのMaaS領域からスタート。社会の様々な「もったいない」をテクノロジーのチカラで解消することを目指して、独自AIでルーティングの最適化技術を開発。少人数かつ誰が乗車したか追跡可能なスマートシャトル®︎として展開し、サービスラインナップとしては、2019年より開始した空港送迎用の「nearMe.Airport(ニアミー エアポート)」(全国13の空港とその周辺都市をドアツードアで結ぶドアツードアサービス)、東京都内および千葉県全域のゴルフ場を送迎する「nearMe.Golf(ニアミー ゴルフ)」、貸切送迎シャトル「nearMe.Limo(ニアミー リモ)」など対象シーンを拡大している。
今回の資金調達は、「nearMe.Airport」を中心としたスマートシャトル事業の更なるマーケティング投資により、サービス認知および利用拡大を図るほか、空港送迎に限らないさまざまなシチュエーションでドアツードアによる快適な移動の提供、エネルギーの有効活用を見据えた街づくりへの貢献、シェアを前提とした新たな送迎車両開発にも着手していきたい考え。元リリースはこちら。
【関連記事】
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「地域の”もったいない”をテクノロジーで解決する」優しいまなざしで移動の問題に取り組む髙原幸一郎(たかはら・こういちろう…
【ラウンド不明】宇宙技術開発のQPS研究所、10億円の追加資金調達を実施(2023年3月9日発表)
宇宙技術開発及び小型SAR(合成開口レーダー)衛星「QPS-SAR」の開発・運用を行う株式会社QPS研究所は、スカパーJ S A T株式会社、日本工営株式会社、三井住友海上キャピタル株式会社が運営するMSIVC2021V投資事業有限責任組合、NAMY株式会社と株式会社アイビス・キャピタル・パートナーズが共同運営するリアルテックグロースファンド1号投資事業有限責任組合の計4社を引受先として、総額約10億円の資金調達を実施。これまでの累計総額は約92億円となった。
同社は2005年6月に設立、九州大学での小型人工衛星開発の技術をベースに、国内外で衛星開発やスペースデブリへの取り組みに携わってきた名誉教授陣と若手技術者・実業家が宇宙技術開発を行い、従来のSAR衛星の20分の1の質量、100分の1のコストで100 kg 台の高精細小型SAR衛星「QPS-SAR」の開発に成功。現在2機の衛星を運用し、夜間や天候不良時でも高分解能・高画質で観測できるSAR画像を提供している。2021年5月にはQPS-SAR 2号機「イザナミ」による70cm分解能という日本の民間SAR衛星として最高精細の画像取得に成功し、衛星データビジネスの構築に向けて活動を本格化させた。
今後は衛星を毎年複数機打ち上げ、2025年以降を目標に36機の小型SAR衛星のコンステレーション(複数の人工衛星によって、高頻度な地球観測を可能とするシステム)を構築し、平均10分ごとの準リアルタイム地上観測データサービスの提供を目指している。今回調達した資金は、コンステレーション構築に向けてより積極的な衛星打上げプラン実施を目的に、衛星の大量生産体制を整えるための新工場の増設、衛星の開発・運用のために使用するという。元リリースはこちら。
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