2023年2月24日から2023年3月2日に発表されたスタートアップニュース、資金調達情報のうち、JP Startups(ジャパスタ)が注目する案件をピックアップしてお届けいたします。
編集部コメント
今週は資金調達の発表が非常に多い週でした。医療や建設系スタートアップの調達が多かったほか、知育玩具のサブスクを行うトラーナや、3Dアバターを活用したパーソナライズ絵本のえほんインクなど、子ども向けサービスを扱うスタートアップの調達が見られたのも特徴でした。
また、今週の目玉は何と言っても、有名スタートアップや注目スタートアップによる大型の資金調達。LayerXやCAMPFIRE、アストロスケールホールディングスがそれぞれ10億円を超える資金調達を実施しています。注目企業では、建設部材調達DXのBALLASと食産業向けのロボットサービスを手がけるコネクテッドロボティクスも10億円超の調達を行い、今後の成長に期待がかかります。
今週はこのほか、ESG領域でシェルパ・アンド・カンパニーとアスエネにも注目し、本稿の中で紹介していきます。
資金調達情報
【シード】ESG情報開示支援クラウド「SmartESG」を提供するシェルパ・アンド・カンパニーが総額2.6億円を調達(2023年3月1日発表)
ESG情報開示支援クラウド「SmartESG」を開発・提供するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社は、第三者割当増資により総額2.6億円の資金調達を実施した。グローバル・ブレインをリード投資家として、農林中金イノベーション投資事業有限責任組合、ジェネシアベンチャーズ、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタルが引受先となる。今回の調達により、同社の累計資金調達額はおよそ3.2億円に達した。
シェルパ・アンド・カンパニーは、2022年5月にESGの情報開示業務を効率化するクラウドサービス「SmartESG」の提供を開始。同サービスは社内のESGデータの収集やワークフローを最適化し、データベースを構築することでESGデータを一元管理できるというもの。
今回調達した資金は、より高度なデータ分析を可能にする新機能への技術投資、幹部候補を含む複数職種での人材採用強化、AI・機械学習をベースとした高度な技術開発を行う「SmartESG AI Labo」の立ち上げに使用する予定だという。元リリースはこちら。
【シリーズA】建設部材調達のDXに挑むBALLAS、11.6億円の資金調達を実施(2023年3月1日発表)
店舗や商業施設、オフィス、ホテル、住宅などの建設で使用する建設部材の調達を、独自システムで効率化する株式会社BALLASは、第三者割当増資により11.6億円を調達した。リード投資家はグローバル・ブレインとSBIインベストメントで、そのほかの引受先にはANOBAKA、mint、SMBCベンチャーキャピタルを含む7社が参加した。
BALLASは2022年2月の創業以来、独自システムを活用した建設部材のオペレーション最適化に取り組み、1〜2ヶ月の工数短縮に成功。強みとする金属部材を中心として、これまで1,500件以上の部材供給を行ってきた。また、建設業界のプレイヤーとのアライアンスにも取り組み、人手不足や調達難などの課題解決に挑戦している。
今回調達した資金は、同社の事業が全国に広がりを見せていることから、体制構築を目的として使用予定。また、協力会社との連携で金融や保険、人材などの支援を行い、建設業全体のサプライチェーン強靭化に取り組むという。元リリースはこちら。
【シリーズA】支出管理サービス「バクラク」などを提供するLayerX、シリーズAの1stクローズで約55億円を調達(2023年2月28日発表)
請求書処理や経費精算、法人カードを中心とした支出管理サービス「バクラク」などを運営するSaaS+Fintechスタートアップの株式会社LayerXは、シリーズAの1stクローズで約55億円の大型調達を実施した。三井物産をリード投資家として、引受先はANRI、GMO VenturePartners、ジャフコ グループ、三菱UFJキャピタルほか5社。
同社の手がける「バクラク」は、支出に関連した業務を効率化する、導入社数3,000社超のサービス。同社はこのほかに、デジタル証券による資産運用サービスを行う三井物産デジタル・アセットマネジメントや、プライバシー保護技術「Anonify」で組織横断のデータ利活用を目指すPrivacy Tech事業なども行っている。
今回の資金調達は、バクラクの事業成長や顧客体験の向上を目的として実施。同社は今後も継続的な新プロダクト・新事業の創出に取り組むという。また、今回の資金調達に合わせ、三井物産の山本 忠太則氏が社外取締役に就任する。元リリースはこちら。
【シリーズB】気候テックのアスエネ、シリーズBの3rdクローズで1.5億円を調達。累計調達額は31億円に(2023年3月1日発表)
クライメートテック(気候テック)領域で企業の脱炭素・ESG経営支援を行うアスエネ株式会社は、シリーズBの3rdクローズで第三者割当増資による1.5億円の資金調達を完了した。引受先は新規投資家としてSony Innovation Fundを迎え、既存投資家はGMO VenturePartners、GLIN Impact Capital、Tybourne Capital Management 持田 昌幸氏の3社。今回の資金調達で、同社は累計31億円を調達したことになる。
アスエネはクラウドサービス「アスゼロ」で、複雑な処理を要するサプライチェーン全体のCO2排出量算出業務を支援。また、国際的なESGフレームワークに準拠したESG評価クラウドサービス「ECR」を運営し、企業のESG評価をサポートしている。さらには脱炭素の戦略策定から実行までを支援する再生エネルギーの調達コンサルティングサービス「アスエネ」も展開。同社全体で脱炭素・ESG経営を包括的に支援することが可能となっている。
今回調達した資金は、人材採用や海外展開の強化、新事業の展開などに活用予定。また、製造業などのサプライチェーンCO2に特化した機能やサービスの拡充も推進するという。元リリースはこちら。
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【シリーズB】食産業向けロボットサービスを手がけるコネクテッドロボティクス、資本業務提携を中心に総額17億円の調達を完了(2023年2月28日発表)
食産業向けロボットサービスの研究開発および販売を行うコネクテッドロボティクス株式会社は、資本業務提携を中心とした資金調達を実施。今回のラウンドでは三菱HCキャピタルなど6社からの出資と、日本政策金融公庫を含む5社からの融資で総額17億円を調達した。
かねてより大手厨房機器メーカーや大学、経済産業省や農林水産省などと産官学の連携を行い、食産業の自動化を推進してきたコネクテッドロボティクス。同社は2017年より飲食店向け調理ロボットシステムの開発をスタートし、これまでにソフトクリームやたこ焼き、そば、フライドポテトなど、さまざまなメニューの調理に役立つロボットを開発・販売してきた。2021年からは食品工場向けのロボットサービスも開始し、AIによる食品検査や盛り付けロボットなどを提供している。
今回の資金調達は、食産業に特化したロボティクスサービスの開発と量産体制の構築、業務提携による事業体制の整備、事業成長のための人材確保を目的として実施。次の成長を見据えながら、食産業のロボティクスサービスの普及を目指していくという。元リリースはこちら。
【シリーズC】未就学児向けの知育玩具サブスクリプション・サービスを行うトラーナ、約9.3億円を調達。新経営体制でガバナンス強化へ(2023年2月28日発表)
2015年11月より、未就学児向けの知育玩具サブスクリプション・サービス「トイサブ!」を運営する株式会社トラーナ。同社はマイナビや日本政策金融公庫など複数の引受先から、総額およそ9.3億円の資金調達を実施した。これにより、同社の累計調達額は約15億円に達する見込み。
「トイサブ!」は、「幸せな親子時間を増やそうぜ」というコーポレートビジョンのもとに運営されているサービス。数多くの知育玩具選定を手がけてきた同社専属のプランナーが、子ども一人ひとりの発達に合った知育玩具を選び、各家庭に送付する。玩具は一定期間で返却・交換が可能。廃棄物の出ないサステナブルな仕組みとなっている。
今回の資金調達により、カスタマーエクスペリエンスの向上を目指したさらなる機能追加を行い、「循環型社会における次世代教育サービス」へと発展させていきたい考え。また、同ビジョンの実現に向け、新たに社外取締役2名を招へい。強固な経営・ガバナンス体制の構築を目指すという。元リリースはこちら。
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【シリーズD】クラウドファンディングサービスを行うCAMPFIRE、10.6億円を調達(2023年3月1日発表)
「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」などクラウドファンディングサービスを手がける株式会社CAMPFIREは第三者割当増資および日本政策金融公庫からの借入により、10.6億円の資金調達を実施した。リード投資家は既存株主のSBIグループで、引受先にはRFIアドバイザーズ、Minerva Growth Partnersのほか、新たにギフティ、みずほ証券、みずほキャピタルを迎えた。今回の資金調達により、累計調達額は87.2億円となる。
同社のクラウドファンディングは、コロナ禍の影響でサービス利用者が急増。プロジェクト掲載数は現在までに累計74,000件以上となり、流通金額は690億円に達している。その影響もあり、直近3年間は組織体制の盤石化を図りながら、クラウドファンディングの一般化に集中してきたという。
今回調達した資金は、今後の事業成長を見込んだ体制強化とクラウドファンディングの利用促進に使用予定。代表取締役の家入 一真氏は「個人やスモールビジネス向けにプロダクトの利便性向上を図りながら、社内外のパートナーネットワークを活用し、地域や産業に根ざしたサポート体制の構築を目指す」とコメントしている。また、今回の資金調達を機に、ギフティおよびみずほ証券と業務提携を実施。両社とともに、クラウドファンディングの普及拡大に向けた新たな取り組みを展開する考えだ。元リリースはこちら。
【シリーズG】持続可能な宇宙環境の創出に挑むアストロスケールが約101億円の資金調達を実施(2023年2月27日発表)
持続可能な宇宙環境を目指し、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の除去サービスなどを行う株式会社アストロスケールホールディングスは、第三者割当増資により三菱電機、三菱UFJ銀行など5社と、日本の民間人として初の宇宙ステーション滞在を経験した実業家の前澤 友作氏から総額約101億円となる大型の資金調達を実施した。同社の資金調達はこれで7回目となり、調達額は累計およそ435億円となる。
同社はスペースデブリの除去サービスのほか、衛星運用終了後のデブリ化を防ぐ除去サービス、衛星の寿命延長に貢献可能なサービスなどを展開。JAXAとの技術実証や英国宇宙庁とのデブリ除去プログラム、米国とイスラエルにおける寿命延長衛星「LEXI(レキシー)」の開発主導など、国内だけでなくグローバルにその事業を広げている。2023年には東京に新拠点を開設。今回調達した資金により、次世代技術の開発やグローバルな事業展開を加速させ、供給能力の向上を図るという。元リリースはこちら。
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