1982年に「サプライチェーン・マネジメント」という言葉がロジスティクス研究の中で初めて使われてから、およそ40年が経った。あれから社会を支える技術は大きく変化したが、原材料から製品製造、最終消費者の手元に届くまで、社会の「モノの流れ」の根本的な構造はそこまで変わっていないように見える。
今回取材した株式会社スマートショッピングは、そのような世の中の「モノの流れ」を180度変える可能性を秘めた在庫管理用のIoTサービス「SmartMat Cloud(スマートマットクラウド)」を手がけているスタートアップだ。必要なものを、必要なときに、必要なだけ、自動で購入できるというこのサービス。事業開発の背景や起業理由、資金調達、今後の展望などについて、代表取締役で共同創業者の一人である林 英俊(はやし・ひでとし)氏に話を聞いた。
在庫管理や発注を自動化するIoTサービス「Smartmat Cloud」が誕生するまで
まずは、スマートショッピングの事業内容を教えてください。
弊社は「モノの流れを超スマートに」というビジョンを掲げ、在庫管理や発注を自動化するIoTサービス「SmartMat Cloud(スマートマットクラウド)」を開発・提供しています。管理したい物品をIoT重量計「スマートマット」の上に置くと、重さをもとに在庫数量を自動で把握するというシンプルな仕組みのサービスです。在庫が一定数を下回った場合には、システムから新たな在庫を自動発注することも可能。ネジやタオルなどの固形物だけでなく、人の目では残量把握が難しい液体や粉状のものも扱うことができ、在庫状況は手元のスマートフォンやパソコンなどから随時確認することが可能です。
「SmartMat Cloud(スマートマットクラウド)」誕生の背景についても、教えていただけますか?
このサービスとプロダクトは、創業時から持つ「ショッピングの未来をつくる」というビジョンを突き詰めた結果、たどり着いたアイデアでした。僕らは買い物の未来から、日用品の購入といった、ワクワク感や喜びの発生しづらい「労働」に近い買い物をなくしたかったんです。
そのためにも、安くて良いものを、消費者にとって最適なタイミングで代理購入できるようなサービスはつくれないものかと、事業アイデアを練っていました。
安いものの購入体験に関しては、価格比較サービスで実現できます。良いものの購入に関しても、当時はECサイトに関するメディアを運営していたため、おすすめ記事を書くことで実現できました。でも、「ベストなタイミングで物を自動購入する」というサービス構築に差し掛かったとき、壁にぶつかってしまったんです。
どのような壁だったのでしょう。
自動購入の仕組みをつくるにあたり、当初は機械学習を用いたソフトウェアの構築を検討していました。ただ、そこで扱うデータに「購買履歴」を使ってしまったために、いくら試しても精度の高いモデルにすることができなかったんです。
僕らは購買履歴というデータの性質を勘違いしていました。実は購買履歴は実際の行動との間に大きな乖離(かいり)のある、とても「汚い」データだった。Aさんという方がいたとして、僕たちが取得できる購買履歴のデータはAさんが日常生活の中で購入したものをすべて記録したものではないのです。例えば、洗濯洗剤をいつもはECサイトで購入しているけれど、立ち寄ったドラッグストアで大幅値引きをしていたからとその場で購入したとすると、それだけで実際の購買行動とECサイトなどから取得できた購買履歴のデータに差が生じます。購買履歴をいくら教師データとして使用しても、必要なものを自動で購入する「ベストタイミング」を正確に割り出すことができないのです。
なるほど。その事実に気がつき、事業開発のアプローチを変えたということなのでしょうか。
そうなんです。最適なタイミングで物を自動購入するという発想と、ショッピングの未来をつくるというビジョンは絶対に譲らずに、どうしたらそれらのビジョンやアイデアを世の中に実現できるかを社内で議論し続けました。その中で出てきたのが、「重さを指標として消費データを集める」というアプローチでした。そのアイデアを詰めていく中で、「スマートマット」というハードウェアの開発が決定。「SmartMat Cloud」をローンチしたときには、創業から4年もの歳月が経っていました。
サービス構築に時間はかかったものの、やはり「SmartMat Cloud」のアイデアにたどり着いたときには、確信があったのでしょうか。
自分たちの中での確信というよりも、社外の方の反応を見る中で自信が生まれていきました。創業からかなりの時間が経過していましたから、量産の前段階ですでにさまざまな展示会に試作機で参加していたんです。国内だけでなく、ラスベガスやニューヨークなど海外のイベントにも出展して。他のブースよりも目立っていたのか、立ち止まって話を聞いてくださる方が多く、「こういう発想の製品はありそうでなかったね」といった感想をいただきました。まだ正式なサービスローンチもできていない中、ポジティブなフィードバックを多くいただいたことで、スマートマットならいけるかもしれないと、確信のようなものが出てきました。
そして、この事業に飛び込もうと最終的に腹をくくる覚悟ができたのは、株式会社SHIFTの丹下社長からいただいた言葉がきっかけでした。「君たちのプロダクトは面白いから、絶対にやり切りなよ」と声をかけていただいたことで、Smartmat Cloudに思い切って挑戦することができました。
コンピューターサイエンスを学ぶために京都大学へ
ところで、スマートショッピングは、志賀さんと共同代表という形で創業されていますよね。
そうです。京都大学時代からの友人である志賀とともに起業しました。志賀とはテスト直前に朝まで開いている喫茶店で一夜漬けをしたり、就職活動も情報交換をしながら一緒に乗り切ったりと、戦友のような関係で。卒業してからはそれぞれの道を歩いていたのですが、その中でも定期的に会って話をしていました。
お互いがキャリアの転換期を迎えていた社会人10年目のころに、自分たちで事業をやろうという話になって。そこから2人で毎週金曜日の夜に、ときに知り合いを呼びながら事業アイデアの1000本ノックをやり続けました。その結果、僕の前職であるAmazon Japanで手がけた定期便サービスが本当に必要なタイミングで物を届けられるものになっていなかったことから、「買い物の未来をつくる」という方向性で事業を立ち上げることに決定。それから2014年の11月にスマートショッピングを起業しました。
林さんも志賀さんも、もともと起業志向をお持ちだったのですか?
何が何でも起業したいというわけではなかったのですが、いずれ起業する可能性があるとは思っていました。僕も志賀も大学と大学院でコンピューターサイエンスを学んでいたため、周囲にはインターネットを活用してWebサービスで起業している人が多かったんです。
そんな環境下で、自分だったらどういう起業をしたいかと考えたときに、ただ小銭を稼ぐような小さくまとまった起業はしたくないなと思うようになりました。どうせ人生をかけるのなら、社会を大きく変えるような会社をつくりたい。そのためにも、在学中に起業するのではなく、一度社会に出てビジネスを学ぶべきだと考えていました。
なるほど。起業志向はあったけれども、社会で必要な経験を積んでからと考えていたのですね。ちなみに、大学はなぜ京都大学を選んだのでしょうか。
コンピューターサイエンスを学びたかったからです。僕が大学に進学した1990年代は、まだコンピューターサイエンスを学べる大学が数えるほどしかなくて。その中でも京都大学は学部一回生のころから専門的に学べるカリキュラムだったため、大学時代をコンピューターやインターネット技術に浸って過ごせることに魅力を感じて進学を決めました。
コンピューターサイエンスに興味を持ったのは、なぜですか?
きっかけは父が与えてくれたワープロやMacintoshでした。大手メーカーに勤めていた父が当時、職場で使わなくなったワープロを持ち帰り、僕に自由に使っていいと渡してくれていたんです。それを面白がって使っているうちに、父が今度は会社の同僚の話を聞きつけて、30万円ほどもするMacintoshを買い与えてくれました。
まだインターネット通信前夜の時代だったので、Macintoshはゲームの攻略本を書き写したり、表計算ソフトをいじってみたりと、本当にごく普通の使い方をしていました。ただ、一日1回は必ずMacintoshに触れる生活をする中で、コンピューターがあればこれからの世の中が大きく変わるかもしれないと、子どもながらに大きな期待を感じていましたね。
子ども時代の経験がきっかけで、コンピューターやインターネット技術に興味を持ったのですね。そんな林さんは、どのような大学生活を送っていたのですか?
典型的な京大生でした(笑)。 大学に行くのは必要最低限で、あとは読書にふけったり、最新のプログラミング言語を学ぶためにWebページ制作のアルバイトをしたりしていました。アルバイトでは、盆栽屋、家具屋に、変わったところでは下着屋のWebサイトまで、ASPやPerlなどの言語を使いながらサイト構築をお手伝いしていました。
あとは、家でサーバを立てることにも挑戦していました。当時住んでいた京阪三条エリアにちなんで、「京阪三条.com」というドメインを取ろうと試したら、簡単に取得できてしまってすごく驚いたのは今でも覚えています。
大学ではコンピューター技術に関する理論を学び、課外活動では実際に社会で役立つスキルを身につける。そんな大学生活を送っていましたね。
ビジネス領域を鍛えた、コンサルティングファームでの7年間
大学を卒業後は、新卒で外資系コンサルティングファームのローランド・ベルガーに入社されたそうですね。コンピューターサイエンスを学んだ後の進路として、なぜコンサルティングファームを選んだのでしょうか。
プログラミング技術と経営の両面が分かる人材を目指していたからです。大学に入学して、プログラムを書く領域には、高い技術を持った天才的な人がたくさんいる事実を目の当たりにしました。僕自身は大学に入ってから本格的にプログラムを書くようになったのですが、同級生の中には中学時代からプログラミングを一日中やってきたような人もいて、そういう人はやはり私が一つコードを書く時間に、いくつものコードを書き上げていくんです。
その姿を見たときに、自分が勝負すべきは技術一本で攻める世界ではなく、別のフィールドだと感じました。さまざまな社会人の話を聞く中で、技術と経営の両方が分かる人材はかなり希少性が高いこと、そしてこれからの時代に求められる人材であることが分かりました。自分としても非常に楽しそうな未来が待っていそうだと感じたことで、大学時代に身につけた技術を生かした就職ではなく、あえてビジネス領域を鍛えようとコンサルティングファームを選びました。
なるほど。一度コンピューターサイエンスから離れて、就職されたのですね。
そうなんです。もちろん、コンサルタントとして、可能であればIT業界のプロジェクトに入りたいと思っていたのですが、その希望は叶いませんでした。というのも、3年単位で経営計画をまとめていくコンサルティング業界の手法と、日進月歩で変わっていくインターネット業界は相反するものがあり、IT業界の案件はそもそも絶対数が少なかったんです。
ただ、ローランド・ベルガーでは、本当にさまざまな業界の案件を担当させてもらいました。製造業、医療、アパレル、海外市場でのビジネスも手がけましたね。MBA留学も含めると合計で7年ほど所属したのですが、世の中の多くのビジネスがどのように回っているのか、実務の中でしっかりと学び取ることができた期間だったように思います。
コンサルティングファーム時代に留学も経験されているのですね。
MBAを取得するために、スペインのIE ビジネススクールで学びました。留学を決めたのは、新しい刺激を受けたくなったからです。ローランド・ベルガーで丸5年働いて、自分の中で燃え尽きた感じがあって。僕自身の人生観としても、遊牧民のように一ヶ所にとどまらずに生きていきたくて、5年ほど働いたら1年は休むような働き方がしたいと思っていました。そのため、ここで一度仕事を休んで学びに徹しようと留学しました。
留学生活はいかがでしたか?
コンサルタントの仕事を通じて、本当にさまざまなビジネス経験を積めたのですが、一方で会計や財務の理論など自分自身に足りない部分があることも自覚していました。スペインでは、そのような自分の不足分野を改めてしっかりと学ぶことができたので良かったですね。
また、IE ビジネススクールは世界中からアントレプレナーが多く集まるのですが、授業を通じて成功しているスタートアップの事例を分析できたり、ビジネスプランを本気で考えている人たちと触れ合えたりしたのは、とても楽しく貴重な時間になりました。
世界各地の法人が参考に。新サービス立ち上げで圧倒的な結果を出したAmazon Japan時代
留学を経て、その後のキャリアについても教えてください。
その後は働きながら転職活動をして、Amazon Japanに入社しました。やりたいと思っていたプロダクトマネージャーの仕事に携わり、入社直後からAmazonファミリーの立ち上げを担当して。オンボーディングプログラムを受けながら、新規事業の立ち上げに動くという、なかなかハードな期間を過ごしましたが、結果としてグローバルの中でも圧倒的な実績をつくることに成功しました。
Amazonファミリーは、全くの新サービスを立ち上げたのですか?それとも、アメリカのサービスを日本にローカライズさせる形だったのでしょうか。
形式上はローカライズに当てはまるのですが、本国のサービスが競合に対抗するために徹底的に値引きを行うという赤字前提のビジネスモデルだったこともあり、ユーザーへの提供価値の部分から大きく変更をかけました。そのため、実質は新サービス立ち上げに近い動き方をしていたように思います。
日本版のサービス立ち上げ時には、お客様にサービス継続特典をつけたり、会員限定セールを行ってToBから利益が生まれる構造をつくったりと、本国とは大きく異なるビジネスモデルに構築し直していきました。
また、定期便サービスの国内版も手がけたのですが、こちらも本国のサービス内容に大きく手を加えました。本国ではPCサイトからしか使えなかった定期便サービスをスマホ対応させるなど、国内の実情と将来的な社会の様相を見据えたサービスに仕上げていくことで、実績を大きく伸ばすことができました。
アメリカとは異なる形でのサービス立ち上げは、本国との調整が大変だったのではないでしょうか。
いえ、僕の場合は企画段階でどんなに調整しても本国は動かないだろうと考えていたので、先にサービスに手を加えて結果を出し、実績の数字をもとに本国の承認を得るという少しイレギュラーな進め方で仕事をしていました(笑)。 向こうの人は根拠となる数字があると、非常に素早く意思決定をしてくれます。だからこそ、相手が納得してくれるのを待つよりも、先に自分たちでできることを行って、結果を出してしまったほうが良いと考えていました。
なるほど! そのような仕事の仕方は、やはりコンサルティングファーム時代に鍛えられたものなのでしょうか?
ある意味「プロ意識」というのでしょうか。どんな状況下でも「なんとかする力」は、コンサル時代にとても鍛えられたように思います。Amazon Japanのメンバーの中でも、新規事業をやりたいのに本国が動いてくれないからダメだと嘆く方は多かったのですが、僕はそれを聞いて「動いてくれないじゃなくて、相手を動かすんだよ!」と思っていました(笑)。 多少イレギュラーな進め方をしたとしても、最悪はクビになるくらいで、命はとられません。このような少し究極的な考え方をしているからこそ、どんな物事もどうにかできると、諦めずにさまざまな方法を模索するのだと思います。
先ほど起業の経緯について伺った際に「キャリア10年目で転換期を迎えて」というお話があったかと思います。この転換期とは、Amazon Japanでの出来事でしょうか。
そうです。Amazonファミリーと定期おトク便の仕事で、Amazon内でもグローバルの成功事例となるような圧倒的な成果を出せたことで、本国シアトルで仕事をしないかと声がかかりました。本社にはとても優秀な方が多いですし、僕としても非常に楽しく働けるだろうなとは感じていたのですが、ちょうどそのころにアメリカで仕事をしていた志賀が日本に帰ってくることになって。それで、先ほどもお話したように「起業」という選択肢も視野に入り始めたことで、シアトル行きは断念して、起業に向けた準備を進めることに決めました。
欲しいときに、欲しいだけ。社会全体のモノの流れをスマートにする
ここからは貴社の資金調達や社風について、お話を聞かせてください。まず、資金調達についてはいかがでしたか?ハードウェアを扱うスタートアップは、資金調達に苦労するという声もよく聞きますが……。
おっしゃる通りで、弊社も資金調達は苦労したほうだと思います。特に創業当時はWebメディア全盛期の頃で、IoTサービスで成功しているスタートアップがほとんどいませんでした。VCなどから僕らの開発するハードウェアやサービス内容への理解を得るのは大変でしたね。
ただ、ひとつ良かったのは、ハードウェアの開発に関しては国からの補助金をいただくことができました。3,000万円ほどの補助金をいただいたり、銀行からの融資を受けたり、事業会社からエクイティ調達をしたりして、一つひとつ着実に今日まで歩みを進めてきた形です。
コアバリューについても、質問させてください。貴社は一つひとつのバリューにロゴマークがついていますよね。他社にはないユニークな点だなと思ったのですが、ロゴマークをつけたのには何か理由があるのでしょうか?
実はこのロゴマーク、2022年11月にできたばかりなんです。弊社の優秀なデザイナーがコアバリューを視覚的に浸透させる目的で、自主的につくってくれたものでした。とても分かりやすいので、そのデザインをそのまま採用して今の形になりました。弊社の中ではこのデザイナーのように、誰かに聞かれる前に率先して行動し、結果を出す人が活躍している印象があります。
率先して動くことを評価、尊重する文化があるのですね。
そうですね。率先して動いた結果が失敗だったとしても、きちんと責任感を持ってその仕事に取り組んだのであれば、何らかの学びもあるはずですし、叱責することはありません。むしろそのような失敗を称賛する文化があります。あれこれ指示されるのを待つ方よりも、ビジョンやミッションを理解して、自分で動いて結果をつかみ取ってくる方のほうが弊社に向いているように思います。
なるほど。とはいえ、率先して動く方が多いと、社内の統率が取れなくなる心配もあるのではないでしょうか。
だからこそ、コアバリューが生きてきます。弊社のコアバリューには、「すごくいいやつ」「インサイドアウト」「大胆チャレンジ」といった非常にシンプルな分かりやすい言葉を散りばめました。特に「すごくいいやつ」と「インサイドアウト」は、弊社の土台として大切にしているバリューです。いくら優秀な方でも、人としての誠実さがなければ、壊れたフェラーリと同じで悪い方向にそのパワーを発揮して暴走してしまう可能性があります。自分のことを客観視しながら、必要に応じて修正していける方。そして、自責思考で自分の動かせる範囲から行動を積み重ねていける方と出会えたら、ぜひ一緒に働きたいなと考えています。
マインドの部分をバリューの中にしっかりと定めているからこそ、社員と会社の見据えるものが一致して、率先した行動をしてもズレが生じることが少ないのですね。
スタートアップらしくない、非常にベーシックなバリューに聞こえると思うのですが、弊社としてはマインドの部分がチームや結果に大きく影響すると考えているんですね。仕事の結果は「マインド×スキル」だと思っていて。ハイスキルで100の能力値を持っていたとしても、マインドがマイナス2だとすると、結果はマイナス200になってしまうんです。だからこそ、人としてのあり方にも通じるベーシックなマインドの部分をとても大切にしています。
今後の展望についてもお聞かせください。
弊社は世の中のあらゆる場面のモノの流れを、現在のプッシュ型から、トヨタの「ジャスト・イン・タイム方式」のように無駄のないものにしていくことを目指しています。必要なものを、必要なときに、必要なだけ供給するプル型の世界です。このようなモノの流れの構造変革は、僕らが「スマートマット」を通じて、「モノの流れ」というこれまでにない新しいデータを可視化し、取得できたからこそ実現できるものだと考えています。
その結果どのような世界が生まれるのかというと、生活者は自宅でホテルのような暮らしができるようになります。ホテルに何泊かすると、日中出かけている間に、ホテルのスタッフがタオルやトイレットペーパー、歯ブラシなどの日用品を補充しておいてくれますよね。そのようなイメージで、普段の生活の中でも日用品の補充を自動で行えるようになる。非常に便利な買い物体験をしていただけると思いますし、昨今話題となっている買い物難民の課題解決にもつなげられると思います。
また、消費の動向を正確に把握したデータがあることで、メーカー企業側にとっても、原材料の仕入れから、生産・経営計画まで、より制度の高いものがつくれるようになります。例えば、飲食店で酒類が残りわずかだということが分かれば、いつ注文が入るか予測することもできますし、注文が入る前にメーカーやデリバリー企業側が在庫を補充しに行くということも可能になります。お客様から急ぎの配達注文がくるといったことがなくなり、余裕を持って納品することができるのです。そういった各プレイヤーにとっての変革の結果、無理な働き方を減らすことができ、社会全体で無駄なモノをなくすことができると考えています。社会全体の「モノの流れ」に対して、本当の意味でのDXを起こしていきたいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いいたします!
スタートアップでの日々は、本当に楽しいものです。事業の中でやるべきことに対して、圧倒的に人手が足りていませんから、「一人十役」をこなすことも珍しくありません。社会人として10倍速で成長できる環境が、スタートアップにはあるように思います。私自身もコンサルティングファームやAmazonを経験しましたが、それらのどの企業よりも、今のほうが成長できている実感があります。
また、創立間もないフェーズだからこそ、「自分たちの手で船を漕いでいる」という感覚を持てるのは貴重な経験になると思います。大企業はすでにできあがったミッションやカルチャーの中で仕事をするしかありませんが、スタートアップではミッションやビジョン、バリューをつくり上げるところから携わることも可能です。そういった機会は、会社のライフタイムから考えてもなかなか持てないものですから、もし転職や起業に迷われている方がいたら、人生の中でぜひ一度は経験してみていただきたいなと思います。
注目記事
AIキャラクターが暮らす「第二の世界」は実現できるか。EuphoPia創業者・丹野海氏が目指す未来 Supported by HAKOBUNE
大義と急成長の両立。世界No.1のクライメートテックへ駆け上がるアスエネが創業4年半でシリーズCを達成し、最短で時価総額1兆円を目指す理由と成長戦略 Supported by アスエネ
日本のスタートアップ環境に本当に必要なものとは?スタートアップスタジオ協会・佐々木喜徳氏と考える
SmartHR、CFO交代の裏側を取材。スタートアップ経営層のサクセッションのポイントとは?
数々の挑戦と失敗を経てたどり着いた、腹を据えて向き合える事業ドメイン。メンテモ・若月佑樹氏の創業ストーリー
新着記事
AIキャラクターが暮らす「第二の世界」は実現できるか。EuphoPia創業者・丹野海氏が目指す未来 Supported by HAKOBUNE
防災テックスタートアップカンファレンス2024、注目の登壇者決定
大義と急成長の両立。世界No.1のクライメートテックへ駆け上がるアスエネが創業4年半でシリーズCを達成し、最短で時価総額1兆円を目指す理由と成長戦略 Supported by アスエネ
日本のスタートアップ環境に本当に必要なものとは?スタートアップスタジオ協会・佐々木喜徳氏と考える
Antler Cohort Programで急成長の5社が集結!日本初となる「Antler Japan DEMO DAY 2024」の模様をお届け