2023年1月13日から2023年1月19日に発表された資金調達ニュースのうち、JP Startups(ジャパスタ)が注目する案件をピックアップしてお届けいたします。
編集部コメント
今週の資金調達は、「宇宙」と「サステナブル」がキーワードとなった印象。宇宙関連では、インターステラテクノロジズが計23社から約38億円の資金調達を完了した。同社は2022年12月末にも10億円を調達しており、ウクライナ情勢によって宇宙利用拡大にブレーキがかかる中、安価な国産ロケットの実現に向けて期待がかかる。サステナブルでは、農業分野でのカーボンクレジット創出に取り組むDegasとフェイガーに注目したい。両社の特徴や詳細については、本稿でピックアップして紹介する。
また、今週は特にシード期のスタートアップによる資金調達が目立った。NFTアートやクイックコマース、フリーランス人材など、成長拡大が見込まれるテーマを扱う企業も多く、今後の事業展開に注目だ。
Seed
コミュニティデザインツールを開発・提供するstation、5社からの第三者割当増資でシードのファーストクローズを実施。累計調達額は1億円超に(2023年1月13日発表)
自律分散型のコミュニティ運営に資するツールの開発・提供を行うstation株式会社は、Setouchi Startups、HOXIN、尾道産業、宇野不動産、DEEPCOREからの第三者割当増資により、シードラウンドにおける資金調達のファーストクローズを実施した。同社は今回、累計調達額が1億円を超えた。
高度な情報化社会の到来や少子高齢化による人口減少を背景として、従来とは異なる場づくりや街づくりが求められている現在。同社はコミュニティ運営で発生する課題に対し、コミュニティの持つ資産などの情報を可視化し、入会手続きや決済といった現場に必要な機能をワンストップで提供可能なシステムの開発・運営を行う。また、プロダクト開発に携わってきたチームにより、コミュニティのコンセプト設計から運用までを伴走可能なデザインコンサルティングも提供。デザインとテクノロジーを組み合わせたサービスで、これまでに株式会社コスモスイニシアや広島県などへの導入・支援実績がある。今後は関西地方や中部地方などへのサービス展開も予定し、2023年春にはシードラウンドでのセカンドクローズを行う見通し。元リリースはこちら。
農家と企業間のカーボンクレジット売買をテーマとするフェイガー、シードラウンドで7,200万円を調達(2023年1月18日発表)
国内農家向けの脱炭素施策の収益化サポートと、カーボンクレジットの流通サポートを手がける株式会社フェイガー。同社はインキュベイトファンドを引受先とする第三者割当増資により、シードラウンドで7,200万円の資金調達を完了した。
日本も含め、世界の125カ国・1地域が2050年までのカーボンニュートラル実現を目指している現在。目標達成に向け削減が欠かせない温室効果ガスは、世界の排出量のうち1割が農業によるものだという。アメリカではそのような状況に着目したスタートアップが中心となり、農家による農法変更などを通じた脱炭素施策の実施と、大企業へのカーボンクレジット販売の仕組み化が進む。対して日本では、脱炭素施策に関心を寄せる農家が一定数存在しているにもかかわらず、手続きの煩雑さなどの理由から農家の脱炭素施策導入やカーボンクレジットの取引が進んでいない現状があった。同社はこの課題と向き合い、農家の脱炭素施策の記録や国際認証機関への申請、企業向け取引など一連の工程を最小限の手間で実現可能な「脱炭素の収益化サポートサービス」を提供。また、国内企業向けのボランタリーカーボンクレジット調達・利用サポートも併せて展開する。
今後は調達した資金をもとに、脱炭素施策の記録・管理を行う農家向けシステムの開発や、ボランタリーカーボンクレジットのマーケットプレイス開発を行い、いずれはアジアへの展開を目指すという。元リリースはこちら。
Series A
AI活用で薬剤耐性菌の根絶を目指すカーブジェンが、第三者割当増資によりシリーズAの資金調達を完了(2023年1月16日発表)
薬剤耐性菌の根絶を目指し、細菌感染症菌種推定アプリ・適正抗菌薬選定支援システム「BiTTE(ビッテ)」や、画像診断に用いるグラム染色の効率化を実現可能なポイント・オブ・ケア自動グラム染色機「PoCGS(ポッグス)」などの開発を行うカーブジェン株式会社。同社は株式会社UB Venturesを引受先とした第三者割当増資により、シリーズAでの資金調達を完了した。
抗菌薬(抗生物質)が適切に使用されなかったことで、薬への耐性を獲得し、効果が弱まってしまう薬剤耐性菌。なかでも「スーパーバグ」と呼ばれる薬剤耐性菌は、広範あるいは完全な薬剤耐性を持つと考えられ、世界的な脅威となっている。米ワシントン大などの国際グループの発表によれば、2019年には薬剤耐性菌によって世界で127万人が死亡したという。2050年にはその死者数がさらに増え、年間で1,000万人にも達するとの試算もある。
このような問題を解決するためには、感染症の原因の正しい診断と、抗菌薬の適切な投与が欠かせない。しかし、現在の医療体制では設備や時間、コストの問題から、すべての医療機関で適切な診断や投薬を行うことが困難となっている。同社は独自開発のAIを応用したプロダクトで、薬剤耐性菌を発生させづらい医療体制の構築に貢献する。今回調達した資金は、サービスの本格提供を前に、人材採用の強化や新規事業開発、海外の研究・医療期間との共同プロジェクト推進を目的としているという。元リリースはこちら。
Series B
サブサハラアフリカの貧困対策事業を行うDegas、第三者割当増資によりシリーズBで総額約10億円の資金調達を実施(2023年1月13日発表)
サブサハラアフリカ(アフリカのサハラ砂漠以南地域)の貧困問題解決に向け、小規模農家への農業知識や技術の支援、DX推進と農業資材のファイナンスなどを行うDegas株式会社は、第三者割当増資によって総額およそ10億円の資金調達を実施した。今回調達した資金をもとに、同社はアフリカ地域での脱炭素事業を新たに手がける予定だという。
世界の貧困層(1日1.9ドル以下で生活している層)は、1990年代から現在までの約30年間で20億人から8億人へと大きく減少した。しかし現在、サブサハラアフリカでは貧困層人口が増加している。2030年には世界の貧困層の9割が同地域に集中するともいわれている。そのような中で同社は、サブサハラアフリカの貧困問題解決を目指し、従事者の多い小規模農家の所得向上に向けた事業を展開する。土地面積に対する生産性の低さを解消するため、テクノロジーを活用した農業パッケージの提供や収穫物の回収・買取、バイヤーへの販売、小規模農家のネットワーク化、独自の与信判断アルゴリズムによるファイナンス支援などを行っている。2019年3月の事業開始以来、各農家の生産性は平均2倍以上に向上しているという。
今回、同社が新たに進出する脱炭素事業では、欧米諸国を中心に進むカーボンニュートラルや温室効果ガス削減の取り組みに対し、CO2削減に効果があるといわれているリジェネラティブ農業やバイオ炭によるCO2の吸収などを行う予定。この施策で出た成果をカーボンクレジット(CO2などの温室効果ガスの排出削減量を売買する仕組み)として企業向けに販売することで、現地農家のさらなる所得向上につなげたい考えだ。元リリースはこちら。
Series D
堀江 貴文氏が創業、ロケット開発を行うインターステラテクノロジズがシリーズDで総額38億円の資金調達を完了(2023年1月16日発表)
安価な宇宙輸送サービスと宇宙利用の実現を目指すインターステラテクノロジズ株式会社は、12月27日に発表した10億円の資金調達完了に引き続き、シリーズDで総額38億円の調達を発表した。今回の引受先はSBIインベストメント株式会社、サツドラホールディングス株式会社、株式会社サイバーエージェント、株式会社KADOKAWAを含む23社。
宇宙関連市場は世界で拡大。その規模は2040年に1兆ドルに達するとの試算もある。近年はインターネット通信やデータ活用の観点から小型サイズの人工衛星の需要が特に伸びているが、国内のロケット打ち上げ回数は世界シェアの約2%で、国内開発の衛星は宇宙への輸送を海外ロケットに依存している状況がある。また、世界の宇宙開発はウクライナ情勢の影響を大きく受け、宇宙利用拡大のボトルネックとなっている。
2013年に設立されたインターステラテクノロジズは、起業家の堀江 貴文氏も創業者に加わり、2005年から宇宙ビジネスを手がける。千葉県や北海道でのロケットエンジンの開発を経て、現在はロケットを開発。同社の観測ロケット「MOMO」は、2019年に民間企業単独としては初の宇宙空間到達に成功。現在開発中のロケット「ZERO」はすべての開発工程を自社で行い、1機あたり6億円以下と低価格を実現させる。今回調達した資金は、「ZERO」の研究開発や設備投資、人材採用、材料費などに充てる予定だという。元リリースはこちら。
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