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「チャレンジする人が尊敬される社会」を作る。PR×マーケティングで企業の成長を支えるシェイプウィンの挑戦

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クライアントの戦略に異を唱え、共に正解を探すパートナーはどれほどいるだろうか。

2011年の設立以来、戦略設計から実行までを一気通貫で支援してきた シェイプウィン株式会社 。同社は、クライアントにとって単なる作業代行の「ツール(手足)」になることを良しとせず、経営ゴールに直結する戦略を描く「パートナー(頭脳)」としての立ち位置を確立している。「必要であれば反論してくれる会社でなければ意味がない」と言い切る代表の 神村 優介(かみむら・ゆうすけ)氏。今回は、今もなお注目を集めるSNS運用を切り口に、自身が考える「マーケティングの失敗しないパートナー選び」の本質、そしてその根底にある経営哲学について詳しく話を伺った。

「パブリックリレーションズ」をベースとして総合PR戦略を提案

はじめに、御社のご紹介と具体的な事業内容について教えていただけますか。

当社は、東日本大震災があった2011年に設立しました。私自身は元々、おもちゃメーカーのセガトイズに在籍しており、PR会社の出身でもWebマーケティング会社の出身でもなく、事業会社の出身なんです。この業界において、こうしたキャリアの方はそこまで多くないのかもしれません。

セガトイズ時代の経験を通じて感じていたのは、おもちゃのようなコンシューマープロダクトは運頼みの要素も強く、「数打ちゃ当たる」という戦い方になりがちということです。一方で、BtoB支援に携わるようになった今、改めて強く感じているのが、一つひとつ信用を積み上げていくことの重要性です。

今の社会では、単純に広告を打って反響を得るような「非サステナブル」なアプローチではなく、ターゲットとなるお客様や周辺の人たちを含めて関係作りをしていくことが重要です。そのコンセプトから事業モデルを作りました。

最初に取り組んだのはPR、つまりメディアリレーションズです。当時はまだ一部の大手企業しか取り組んでいなかった分野でしたが、そこから信用を得ていきました。ただ、進めていくうちにPRだけでは解決できない課題が出てきたため、SEOやSNSも活用すべく、2019年頃から事業を多角化していきました。

事業を行う上で、重要視している点はありますか?

当時、私自身も発注側の立場を経験して実感したことですが、WebマーケティングやSNS運用の支援会社の多くは、短期的な数値を追う「短絡的な広告の発想」に偏っているのが実状です。「フォロワー数、リーチ数、エンゲージメント数」など目に見える数字として成果が出るので、「バズればいい」「コンバージョンが増えればいい」という発想に流れやすい。確かに短期的な成果としては賢い選択かもしれませんが、私はマーケティングにおいて一番重要なのは「LTV(顧客生涯価値)を上げていくこと」だと思っています。

LTVを上げるためには、見ている人にストレスがかかるようなオファーや、焦らせる手法、過剰な炎上商法などは本質的に逆効果なんです。企業と消費者が長く良い関係を続けていくためには、私たちの社名にある「パブリックリレーションズ(関係構築)」の思想がベースであり重要になります。

具体的には、「コミュニケーションする相手を裏切らないこと」「飽きさせずにギブし続けること」「マーケティング活動によっていかに経営のゴールに近づくか」の3つの視点で考えます。例えば教育ソリューションの場合、サービスを受けるのは子供ですが、決定権を持つのは母親です。決定者(母親)の解決すべきペインポイント(悩み)は何なのかにフォーカスしてペルソナを作り、メッセージを発信します。そうすることで、爆発的な即効性はなくとも、ストレスなく徐々にファンが増え、継続的なリーチが可能になります。

私たちはこの流れをよく「漢方薬」に例えています。西洋薬は即効性はあるけれど、切れたらすぐに元の状態に戻ってしまいます。一方で漢方薬は、飲み続けたら体質が変わり、調子が良くなっていく。漢方薬のように「本質を変えて良い状態を持続させていく」というようなコンセプトに共感いただける企業とは、非常に相性が良いと感じています。

本来のマーケティング目標はLTVの向上であり、お客様とサステナブルな関係を構築することですよね。シェイプウィンさんはそれらを大切にされているからこそ、一過性のバズではなく、「本当のターゲットは誰か」「関係構築すべき相手は誰か」という上流の戦略設計から携わっているのだと思いました。神村さんご自身が発注者側を経験し、BtoC、BtoB双方のマーケティングを知っているという経歴があるからこそ実現できているのですね。

ありがとうございます。私だけでなく、取締役やSNS事業責任者の杉本も含め、メンバーは事業会社経験者が多いのです。

なるほど、代理店出身者ばかりではないのですね。

もちろん代理店経験もありますが、事業会社にいたからこそ、信頼や実績を一つひとつ積み重ねることの重要性を知っています。積み上げていくと、次のアライアンスや施策展開が圧倒的に楽になり、成果も出やすくなります。長期目線を持った上で、短期目標に落とし込んでいくことが重要だと考えています。

Credit:シェイプウィン株式会社

SNS運用は「上流」からの設計が重要

具体的な支援内容について伺わせてください。多くのSNS運用代行が「コンテンツ制作」をメインとしているなかで、御社が「戦略」という上流工程から設計されるのはなぜでしょうか?

どんなに数字上の成果が出ていても、最終的に心を動かして購入するのは「人」だからです。その人たちが今何を考え、何に苦しんでいるのかという根本が分かっていないと、小手先のテクニックを使っても長続きしません。

私たちは分析において、アンケートの集計データだけでなく、「生データ」を非常に重視しています。自由記入欄も含め、100枚、200枚といった回答を細かく見ていくと、数値化できない「肌で感じる違和感」や「みんなが心動かされるポイント」が見えてくるんですね。 データで判断してABテストをするのも正攻法ですが、私たちは「みんながこういうことを言っているから、絶対にこちらが当たる」という確信を持って施策を行います。一見遠回りのようですが、この作業によって最初から精度の高いコピーが作れるようになります。

そのため、私たちのマーケティング支援は、開始して3ヶ月ほどで成果が出てくることが多いんです。「よく分からないからとりあえずテスト」ではなく、「やはりその通りだったね」という答え合わせのためのテストマーケティングになるので、戦略から実行に移した時、成果として見えるのだと思います。

Credit:シェイプウィン株式会社

支援実績を振り返る。炎上回避からCV数No.1まで

事前の準備を上段から行い、勝ち筋の確率を上げた上で実行するからこそ成果につながるのですね。具体的に実績として公開できる事例はありますか?

ある美容外科クリニック様の事例をお話ししますね。 SNS事業責任者の杉本は美容が大好きで、SNS上でこういった美容系に興味がある人たちと会話をしているんです。その中で、「〇〇は怪しい」「ここは面白そう」といった何気ない会話から、ユーザーが何に不信感を持ち、何があれば「買う」と言うのか、というローデータを蓄積していきました。結果、SNS運用担当者が狙っていることに対して「消費者としてそれは響かない」と判断できたのです。

また、ある容器製造メーカー様のBtoB事例もあります。私たちが支援する前は「環境に優しい」と発信すると、「プラスチックを使っているのにおかしい」「そもそも容器メーカーが環境に悪影響を与えているのでは」といったネガティブコメントがついて炎上気味になっていました。 そこで、ネガティブな反応をする層が何を言いたいのか、彼らの「反発するポイント」を徹底的に分析しました。その結果、反発ポイントを避ける表現やコンテンツを徹底したことで、3年ほど運用していますが運用初月からネガティブコメントがつかない投稿を実現させました。AIのように大量のデータで学習するのではなく、人間が一次情報をしっかり読み解くことによって、「これをやったら絶対にいい」と自信を持って提案でき、お客様もついてきてくれるのだと思います。

その美容クリニック様の事例では、具体的にどのくらい事業が伸びたのでしょうか?

昨年2月からの約1年間で、Instagramのフォロワーは0からスタートして3ヶ月で1.6万人を達成しました。 また、SNSとオウンドメディアを並行して運用した結果、大手クリニックの中で運用している複数チャンネルのうち、新規の問い合わせコンバージョン数が1位になりました。また英語教育分野の事例では、ブランド認知が開始時から2倍になりました。フォロワーはオーガニックの投稿だけで約5,000人増加しました。インフルエンサーにお金を払って依頼するのではなく、本当にファンになってくれる人を集めたことで、非常にリーズナブルに、かつ熱量高く協力していただき、1年間で全インプレッションに近いようなリーチを獲得できました。

PR支援企業が教えるSNS運用代行の失敗しない選び方

素晴らしい成果ですね。 「SNS運用代行の本質と失敗しない選び方」についてお伺いしたいのですが、数ある代行会社の中で、自社に合ったサービスや企業を選ぶポイントを教えてください。

選び方はシンプルです。自分たちに明確な戦略がある場合は、コストを抑えつつ、指示した内容を着実に実行してくれる運用会社や広告会社を選んだ方が良い。つまり、「手足となってもらうのか」「頭脳となってもらうのか」を分けて考えます。 すでに戦略が固まり、成果の出し方も見えているのであれば、そこに高い費用をかける必要はないですよね。量をこなし、予算を投下すれば結果は自ずと積み上がっていくはずなので。

私たちが得意としているのは、「これから取り組むけれど正解が分からない」「ある程度やったけれど頭打ちで、どう広げればいいか分からない」というフェーズです。ゼロからイチを立ち上げる時や、成長曲線が停滞した時にブレイクスルーさせるのが私たちの強みです。

「頭脳」と「手足」で分けるというのは分かりやすいですね。それぞれの良い会社を見分けるポイントはありますか?

以前、ある大手企業のクライアントがおっしゃっていた「この会社はオペレーション支援をしてくれる『ツール』なのか、それとも『パートナー』として伴走してくれるのか」という視点が的確だと思います。

単なるオペレーション支援なら、インプットに対して決まったアウトプットが出るシステマチックな会社が良いです。担当者の良し悪しに左右されず、データベースに基づいて安定した成果が出せる会社です。

一方で、新規事業やエリア拡大など、正解がないことに挑戦する場合は「パートナー」が必要です。私たちは、言われたことだけをやる「イエスマン」ではなく、 お客様が「これをやりたい」と言っても、リスクが高い場合は「コストに見合わないため避けた方がいい」とはっきり提言します。摩擦を恐れず、時には異なる視点からの意見も惜しまない。それこそが、「パートナー」の条件です。

「パートナーは反論してくれるかどうか」は非常に刺さる言葉ですね。また、 フリーランスと企業に依頼する場合の違いについてはどうお考えですか?

フリーランスの場合、個人の経験に基づいたコンサルティングは強みですが、「集合知」ではない点が弱点になり得ます。また、作業リソースの面でも、急にボリュームが増えた時に対応できないことがあります。

企業の場合は、スケールできる仕組みを持っているかが重要です。「この担当者じゃないとできない」ではスケールしません。私たちは、考えるプロセスや調査プロセスをすべて言語化し、徹底的に仕組み化しています。個人のセンスに依存せず、会社として再現性のある仕組みを持っているかどうかが、企業に依頼するメリットだと思います。

企業理念「チャレンジする人が尊敬される社会を作る」を掲げた理由

では次に、企業理念についてお伺いします。 「チャレンジする人が尊敬される社会を作る」と掲げていらっしゃいますが、なぜスタートアップや新規事業をサポートしたいと思われたのでしょうか?

まず一つは私の個人的な思いとして、誰かが敷いたレールの上を走ることに興味がなく、自分たちでレールを敷く喜びを共有したいと思っているからです。

もう一つは、日本と海外の文化の違いです。私は今カナダに住んでいますが、 日本ではまだ「大手に勤めて安定した生活を送る」ことが正解とされ、チャレンジする人が応援されにくい文化があると感じています。日本がもっと強くなるためには、チャレンジする人を全力で応援する文化が必要です。だからこそ、私たちはこの理念を掲げています。

「チャレンジする人を応援したい」という強い思いの根源は、どこにあるのでしょうか。神村さんのこれまでの歩みの中で、その価値観を形作った具体的なエピソードがあればぜひ伺いたいです。

高専時代に「ロボコン」に参加していた経験が大きいですね。 競技で勝つだけなら、安全策を取ればいいんです。例えば「ハードルを越える」という課題に対して、多くのチームは転ばないように「またぐ」ロボットを作ります。でも私たちは「ハードルは飛ぶものだ」というこだわりで、ジャンプするロボットを作りました。 結果としてはうまく動かず、飛べなかったんです。でも審査員の方が「飛ぼうとしたコンセプトとチャレンジ精神が素晴らしい」と評価してくれました。 勝敗だけでなく、限界を超えようとチャレンジしたことを誰かが認めてくれる、報いてくれるというのは非常に重要な体験でした。

ビジネスの世界でも、最初は批判されても、チャレンジしたことが成功すれば自ずと人が集まってきます。その最初の苦しい時期を我々が支援できたら面白いなと思っています。

Credit:シェイプウィン株式会社

チャレンジャーである読者へ

最後に、今まさに挑戦している方、これから起業しようとしている方に向けてメッセージをお願いします。

私もまだ成功者だとは思っていませんが、15年間黒字で会社を続けてきた経験から二つお伝えします。

一つ目は、「諦めないこと」です。高いビジョンを持ち、そこに向かって目標を落とし込んでいく。ビジョンに近づけばまた新しい景色が見えてくるので、常に高い視座を持って諦めずに続けることが重要です。弊社も今は北米支援という新しい挑戦に向けて、M&Aなども視野に入れて動いています。

二つ目は、相反するようですが「複数の選択肢を常に用意し、合理的なロスカットに備えておくこと」です。 おもちゃ業界では「千三(せんみつ)」と言われ、1,000個のアイデアから3つ当たれば良い方です。ビジネスも同じで、伸びないものを担当者の思い入れだけによって惰性で続けるのは経営者として失格です。「いつまでにこれだけの数字が出なければ撤退する」というルールを決め、ダメならすぐにピボットする。 「一つのことを信じてやり抜く」というウェットな部分と、「確率論で合理的に判断する」というドライな部分、この両方を持っていないと生き残れません。情熱的かつ合理的に経営していくことが必要だと肝に銘じています。

本日は貴重なお話をありがとうございました。