寄稿:Antler株式会社
Antler Japanによる初開催のDEMO DAY「Antler Japan DEMO DAY 2024」が、2024年3月13日に日本マイクロソフト品川本社 にて開催されました。会場には、国内外の起業家、ベンチャーキャピタル、CVC、個人投資家、Antler Cohort Programの第1期生・第2期生、スタートアップエコシステムを支える人々が一堂に会し、大きなセミナールームは立ち見が出る盛況ぶりでした。Antler Cohort Programを通じて共同創業者を得て創業し、出資を受けたスタートアップ5社によるピッチセッションの様子を写真や映像とともにお届けします。
起業家の“Day Zero”を支援する「Antler Cohort Program」とは
創業前の“Day Zero”から起業家を支援するグローバルベンチャーキャピタル、Antlerが展開する起業支援プログラム「Antler Cohort Program」は2023年、日本に初上陸しました。Antlerの日本法人であるAntler Japanは、社会課題を解決するビジネスアイデアを持つ創業前の起業家に焦点を当て、Antler Cohort Programを通して、起業家のビジョンをスケーラブルなビジネスへと昇華させるためのサポートを提供しています。
Antler Cohort Programは全世界27都市で展開、これまでに280,000人以上が応募し、8,000人以上の起業家と1,000社以上のスタートアップを支援してきました。創業前の“Day Zero”から、共同創業者探し、ビジネスアイディアの創出とつくり込みのサポート、実践に基づく講義、Antler投資チーム‧アドバイザー陣とのメンタリングを実施し、2,000万円のプレシードラウンド出資に向けての約10週間、投資チームは400時間以上の時間を起業家と共に過ごします。
「Antler Cohort Program」についてはこちらの記事もご覧ください。
「Antler Japan DEMO DAY2024」開催概要
- 日時:2024年3月13日(水)
- 会場:日本マイクロソフト品川本社 東京都港区港南 2-16-3 品川グランドセントラルタワー
- 参加費用:無料
- 後援:Microsoft for Startups Founders Hub
「Antler Cohort Program」から選ばれた5社によるピッチセッション
Antler Cohort Programは日本でこれまでに2回開催されており、900人以上の応募の中から選ばれた128人の起業家が参加、56のチームが組成され、最終的に6社への投資が実行されています。
今回のDEMO DAYではPharm Tech、Prop Tech、Market Entry、Agri Tech、HealthCare Techの領域で、豊富な業界経験と深い知見を生かした事業内容が評価され出資を受けたスタートアップ5社がピッチを披露しました。
- Yap株式会社 (第1期Antler Cohort Program)
- Lombard Standard株式会社 (第1期Antler Cohort Program)
- 株式会社Tempo Japan (第2期Antler Cohort Program)
- 株式会社Kukulcan (第2期Antler Cohort Program)
- UpToU株式会社 (第2期Antler Cohort Program)
Yap株式会社 (第1期Antler Cohort Program)
Yap株式会社は、製薬企業の流通管理業務のBPOや各種業務のDX支援をはじめ、海外製薬企業の日本市場参入におけるリサーチ、立ち上げからマーケティング、プロモーション、物流デザインなど製薬会社の業務全般をサポートをしています。
CEOの山本氏は製薬業界で25年以上のキャリアの中で生じた古い商習慣への問題意識から、一念発起して起業の道を選択。Antler Cohort Programを通じて共同創業者を得て、Yap株式会社を創業しました。
ピッチは、「製薬業界のゲームチェンジャーになる」「Yap-cloudで医療用医薬品のamazonを目指す」という力強い表明から始まりました。多段階であるこれまでの医薬品の物流と商流を一元化し、国内外の工場から病院、調剤薬局、患者まで、薬を安心安全に届けることを目指しています。2023年2月にはニッセイ・キャピタル株式会社をリード投資家に、Antler Japanからフォロー投資を受け、シードラウンドの調達をしています。2024年7月にYap-cloudのリリース、来年1月にはファクタリングサービスの開始、2028年には売上55億円を目指すと掲げました。
Lombard Standard株式会社 (第1期Antler Cohort Program)
Lombard Standard株式会社のピッチは、日本在住イタリア人CEO Saruggia氏の軽快な日本語での挨拶から始まり、共同創業者の山田氏にバトンタッチされスタートしました。
Lombard Standard株式会社は、最先端のAIアルゴリズムと機械学習を活用し、不動産売買におけるプロセスの最適化・業績の改善・向上を支援する製品「LombardGPT」を開発しSaaSとして提供しています。
元建築エンジニアで商業不動産のコンサルタント業を営んできたCEOのSaruggia氏、日米に渡り商業不動産の投資、開発、仲介とさまざまな経験に携わってきた共同創業者の山田氏、AIエンジニアでありCTOのSingh氏で構成された、豊富な業界経験と多様性に富んだチームです。
2023年の11月末から実用化に至り、翌月には本格的な営業を開始。現在までに8社が有償契約をし、20社が導入を検討中とのこと。商業不動産の買い手を探すプロセスは、日本においては未だに旧態依然の状態が見られます。LombardGPTを活用することで、物件の買い手・売主は仲介手数料の最大65%を削減することができ、仲介業者も同業他社への紹介料の最大7割を削減することができると主張しています。
株式会社Tempo Japan (第2期Antler Cohort Program)
株式会社Tempo Japanは、アスリートのスーパーエージェントして機能するプラットフォームを開発しています。
日本人とフランス人のミックスで、アジアとヨーロッパで育ったグローバルなバックグラウンドを持ち、ヨーロッパのユニコーン企業Back Marketにて日本市場での売上を50億円規模に成長させた実績を持つCEOのBaudin氏と、マッキンゼーでメディア・テクノロジー分野のプロジェクトを担当したCOOのTrubnikova氏によって創業されました。日本市場のポテンシャルを信じ、プログラムを通して25歳で新事業を立ち上げた、スポーツへの飽くなき情熱を持つチームです。
Baudin氏はアシックスをはじめとするトップブランドとランニング関連の動画コンテンツ制作を通して、事業の仮説検証をAntler Cohort Programと並行して3ヶ月間行いました。その中で、資金繰りに苦戦するエリートランナーがいる一方で、ランニングインフルエンサーに資金が集中するブランドの現状を捉えました。
開発を行うプラットフォームでは、アスリートの収入を10倍に増やすSNS管理やスポンサーネットワークを提供するといいます。今後8年後、インフルエンサーマーケティングに支払われる対価は現在の10倍になると言われており、市場拡大とインフルエンサーマーケティングの将来性に着目した彼らは開発中のプラットフォームを通して、アスリートが何百万人もの人々を勇気づけインスピレーションを与える世界の構築を目指すと宣言しました。
株式会社Kukulcan (第2期Antler Cohort Program)
株式会社Kukulcanは、消費者と農園を直結し、安全で持続可能な農産物を提供するサービスを展開しています。
元コンサルタントで現在は博士課程に在籍する難民研究者のCEOホン リナ氏、環境科学博士のCTOの室内良隆氏、ミステリー小説家でありCCOの大久保さいか氏により創業されました。専門性、国籍、性別も異なるユニークな3名はAntler Cohort Programで出会いチームを結成、株式会社Kukulcanを創業しました。ピッチ冒頭でのCEOホン氏は、「誰も何も捨てられない世界、一次産業が見直され多くの人が担い手となっていく、そんな世界を目指していきます」と高らかにビジョンを掲げました。
日本の農産物の厳しい規格と高い流通コストから生ずる価格の高騰は、一般消費者はもちろんのこと、個人飲食店を営む人々に大きな打撃を与えています。株式会社Kukulcanは、廃棄されてしまう規格外野菜を活用し、個人の飲食店が直接農園から安価に仕入れられるプラットフォームを開発しています。プラットフォームの強みは市場価格より安価に購入できること、規格外の取引ができること、AIを使用したレコメンド機能の搭載です。この三つの機能により、食卓への野菜の安定供給を促進し、飲食店のコスト削減にも寄与する見込みです。POCの検証を経て、創業1ヶ月未満にしてすでに全国60店舗から支持を得ているといいいます。2029年までには300億円の売上を目指し、捨てられてしまう1万トンの農産物救済をするインパクトフルな事業の実現を目指しています。
UpToU株式会社 (第2期Antler Cohort Program)
UpToU株式会社は、美容医療・美容整形の「前~後」の段階で、信頼できる情報とサポートを提供し、安心して施術を受けられる環境をつくり出すことを目指し、「美容賢者」プラットフォームを開発。CEO荒木氏の美容クリニック在籍時に培ったキャリアと原体験に基づき、業界の課題に取り組んでいます。
美容医療の需要は増加傾向にありますが、技術や情報のミスマッチが問題となっています。「美容賢者」プラットフォームは、施術前後の情報提供により、消費者が安心して選択できるよう支援します。また、ユーザー、クリニックからの課金によって実現する、中立的な情報提供を通じてユーザーとの信頼関係を築くことに重点を置いています。今後の展開としてユーザー同士のオンラインチャットや通話機能、後払いサービス、施術後のサポート、国内外のメディカルツーリズムの提供など、多角的なサービスを予定しています。2028年には7,000億円が見込まれる美容医療業界の市場規模において、売上100億円を目指し、ユーザー中心の美容サポートサービスを構築していくと宣言しました。
Event Highlight
1. Chatwork株式会社代表取締役CEOの山本正喜氏による基調講演
「Chatworkの軌跡」と題して、学生起業からビジネスチャットサービス「Chatwork」企画背景、事業成長のポイントや今後の展望まで、ここでしか聞けない内容を余すところなく伝えていた山本氏。起業家であり、そして上場企業社長としては最多のエンジェル投資実績を持つ山本氏の講演は、起業家たちのアスピレーションを高めるものでした。
2. Antler株式会社 Executive Adviser・最高顧問 兼 Venture Partner 梅澤亮氏とAntler Co-founder Managing Partner Asia Jussi Salovarra氏によるスピーチ
日本発・グローバル展開を目指すスタートアップ輩出を目指し創業したAntler Japanのこれまでを振り返り、日本における起業のハードルに対しAntlerがもたらすソリューションと累計7社のポートフォリオ企業について説明した梅澤氏。Salovarra氏はAntlerの共同創業者の一人であり、アジアを統括するマネージングパートナーとして、2030年までに期待されるAntlerの創造価値、そして日本市場の魅力と起業家たちへの期待について力強く述べました。
3. Antler Cohort Program 1&2期生起業家との交流会
和やかなムードでスタートした交流会。ダイバーシティに富んだ起業家たちと来場者の会話は、終了時間を過ぎても大いに盛り上がっていました。
4. 後援企業である日本マイクロソフト株式会社 Digital Startups & ISV Japan Regional Sales Director 戸谷仁美氏によるスピーチ
本イベントのために会場を提供した日本マイクロソフト株式会社。戸谷氏は起業家に向けて、大きな声援を送り、マイクロソフト社が提供するスタートアップ支援についても触れました。開演を飾る印象的なスピーチでした。
グローバルな活躍を目指す“Day Zero”からの起業家に、一気通貫のサポートを行うAntler Japanに注目
東京のスタートアップエコシステムは、革新と成長の機運に満ちあふれています。しかし、起業家にとっては依然として資金調達の難しさ、共同創業者やメンターの獲得、グローバル市場への進出の障壁など、克服すべき課題もまだまだ多く存在します。
Antlerでは起業家の障壁を取り除くべく、創業前の“Day Zero”から起業家を支援し、共同創業者探しをはじめ、アイデア段階からビジネスの基盤を築き、グローバルにビジネスをスケールさせるためのネットワークを提供し、一気通貫のサポートを行っています。
“Day Zero”からの起業家の旅は困難と挑戦に満ちています。しかし、Antler Cohort Programが提供するサポートによって、起業までの道のりは実現可能なものになり得ます。これからも卓越した人に投資し、起業家たちがグローバルな舞台で事業展開を実現すべく支援を続けていくAntler Japanに、今後も注目です。
Antler Japanでは起業支援プログラムへの参加に興味のある方に向けて説明会イベントも随時開催中です。詳細はAntler JapanのX、Linkedin、Instagram、Facebookにて発信しています。最新の情報をご確認ください。
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