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グローバル投資家から大型資金調達、快進撃を続ける法務DXのLegalOn Technologiesが挑む次の舞台とは

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秘密保持契約に雇用契約……仕事をする上で実は多くの人が関わっている契約。契約というのは、一度締結すると締結前に戻ることができない不可逆性を秘めています。ミスが許されないので、契約締結前にしっかりと契約書を読み込まなければならない。その契約書レビューは弁護士にとっても法務担当者にとっても責任が重い業務の一つ。

業務の効率化と品質を両立して契約書をレビューする方法はないだろうか。そんな思いから、AIを活用し、わずか数秒で契約書レビューを支援するサービスができた。それが「LegalForce」だ。
自らも弁護士であり、株式会社LegalOn Technologiesの代表取締役社長である、角田 望(つのだ・のぞむ)氏に、契約DXの未来について伺った。

伸びないと言われた起業初期、ニーズを信じて乗り越えて

これまでのキャリアと、起業のきっかけを教えてください。

京都大学法学部を卒業した後、2013年に弁護士として森・濱田松本法律事務所に勤務。主な取扱分野は訴訟、企業間紛争解決、M&A、コーポレート・ガバナンス関連業務などでした。どの案件も混沌とした状況を整理し、勝訴に導くまでクライアントをサポートしました。

弁護士として業務に対応していく中で、「一度契約してしまうと戻れない」という不可逆性に責任を大きく感じるようになりました。弁護士が顧問企業の契約を作成したり、レビューするとなるともちろんミスは許されません。ミスを発生させないために、すべての契約書に対して類似の契約書を参照したり、項目ごとに細かい文言チェックをしてきましたが、労力的にもかなりの負担になりました。細心の注意を払っても、弁護士も人間。絶対にミスがないとは言い切れません。

契約書レビューは企業法務の業務の中心であることが多いです。法務部や弁護士の負担を減らすためにテクノロジーを活用してなにかできないかと考え、前職の同期でもあった小笠原と共同で創業しました。同時に弁護士事務所ZeLoも立ち上げ、私は副代表に就任。最初は周囲の弁護士たちにサービスを使ってもらい、フィードバックしてもらいながら、トライ&エラーの中で開発を進めていきました。

特徴や競合優位性はどのあたりにあるのでしょうか。

LegalForceとLegalForceキャビネの機能
credit: LegalOn Technologies

契約業務は、大きく分けると「案件受付」「起案・審査」「締結」「管理」の四つのステップで構成されています。プロダクトの一つである、契約審査プラットフォームの「LegalForce」では「案件受付」~「締結」までの三つのステップをカバーしています。契約類型別のチェックリストと契約書の照合を自然言語処理等の技術により自動的に行い、条文の抜け漏れや、条項内の過不足を瞬時に検出し、抜け漏れや見落としを予防します。「LegalForce」上で表示される参考文例は社内の弁護士が率いる開発チームが監修しています。2019年4月にローンチし、2022年3月時点では2,000社以上の様々な業種・規模の企業様と法律事務所に導入いただいています。

もう一つのプロダクトは、2021年1月にローンチしたAI契約管理システム「LegalForceキャビネ」です。これは最後の「管理」ステップをカバーしています。2022年6月時点で約450社に導入いただいています。契約は、締結してから法的拘束力が生じます。契約書に書かれている義務や権利を遵守しているのか、期限を守ることができているのか、必要のない契約を締結し続けていないか、といった契約書を単に保管するだけではできないリスク制御を可能にします。法務領域は専門性が高く、参入障壁が高い領域です。LegalForceは、弁護士がプロダクト開発に関わっており、法務知見がサービスのクオリティに直結している点に優位性があると考えています。

新型コロナウイルスの影響はありましたか。

新型コロナウイルスが感染拡大する前から、Legal Techを導入して生産性を上げていこうという動きはありましたが、新型コロナウイルスをきっかけに、社会全体でDXが加速し追い風になったところはありました。また、テレワークをする方も増え、契約業務にデジタルを活用する企業も増えましたね。

資金調達でのご苦労は。

LegalOn TechnologiesのシリーズDまでの調達金額
credit:LegalOn Technologies

2018年3月にシードラウンドから調達を重ね、2022年6月の記者会見でシリーズDラウンドにおける調達について発表させていただきましたが、ソフトバンクビジョンファンド、セコイアキャピタルチャイナ、ゴールドマンサックスから合計約137億円を出資いただき、累計調達額は約179億円となりました。

一番大変だったのはやはりシードラウンドですね。開発チームが立ち上がったばかりで、確立されたプロダクトもありませんでした。私自身、事業を立ち上げた経験がなく、投資家と会話をしたこともありません。そもそも、経理や労務のようにニーズが想像しやすい分野ではなく、ニッチなイメージのある法務業務を対象にしていることで、「市場規模に限界があるのではないか」「スケールする可能性は低いのではないか」という意見をいただくこともありました。プロダクトの可能性や理念を信じていただける投資家の方に出会うまでは苦労しました。

LegalForce(現・LegalOn Technologies)の資金調達が厳しいなら、法律事務所ZeLoが先に軌道に載るまで一旦待つという手段もありました。しかし、そうするとプロダクトが市場に浸透していくスピードが落ちてしまう。LegalForce(現・LegalOn Technologies)を起業して3ヶ月経った頃にそう感じ始めました。やはり早くプロダクトを世の中に届けたいという気持ちを大事にし、エクイティ調達することを決断しました。とはいえ、最初は事業計画のつくり方もわからない状態でしたから、2018年にマッキンゼー&カンパニーから当社に入社をした川戸に教えてもらいました。私の周囲にはたくさんのプロがいますから、できないことは相談して、皆さんの力を借りながら進めるように心がけています。

組織風土や採用について伺えますか。

ミッションは、「全ての契約リスクを制御可能にする」です。このミッションの実現に向けて事業を推進しています。ビジョン、バリューは、まさに策定中です。

社内のカルチャーを一つ挙げるなら「徹底的な議論」でしょうか。入社者は100%中途入社で、それぞれが持つバックグラウンドも様々です。チームとして、きちんと意思疎通ができ、全員が納得していないと事業を進めていけません。発言している内容に疑問を持ったりわからないことが生じたら、チャットでも口頭でもそれぞれが主張する。その主張を受け取ったら、相手の考えを尊重したうえで納得できるまで議論を重ねます。同じ部署だけでなく、部署を超えても活発な議論が生まれており、その結果、経営の意志決定や事業についてもみんなが正確に理解し、プロダクトに落とし込んでいくからこそ、正しく進んでいけるのだと考えています。

面接の時に聞くようにしていることは、「どうなりたいか」「何を目指しているか」。その方の想いと会社の方向性と合致しているか伺っています。合わないこと、やりたくないことをやっていても、うまくはいきませんから。

今後の展開についてはどうお考えでしょうか。

先日の記者発表会でも発表をさせていただきましたが、米国への進出に向けて動いています。2023年3月までに市場調査の完了と初期プロダクトの投入を行う予定でいます。また、海外進出にあたり、グローバル戦略部を設置、責任者としてJP Biardが着任しました。海外では、契約審査支援を担う領域においては、まだ有力企業が不在だと考えています。海外のLegal Techでは契約ライフサイクルマネジメント(CLM)に関するプロダクトが多い印象です。当社はこれらのサービスと差別化を図りつつ、製品連携なども検討していきたいと考えています。

獲得目標とゲーム性のあるタスクが好き、辿り着いた法務と釣り

学生時代はどのように過ごされましたか。

私は徳島出身で、ものすごく平和な環境で育ちました。ごくごく普通の学生でした。地元の公立中学校に通い、部活には入らずトレーディングカードゲームと釣りを中心に3年間を過ごしました。

高校に進学をした後も帰宅部で、放課後はひたすら釣りに熱中していましたね。法学部に決めたきっかけは、高校2年の時の文理選択。文系を選び、その中であれば法学部に行こうと決め、2年生からはひたすら勉強。釣りに向けていた情熱をすべて勉強に注ぎました。

京都大学に入学してからは、サークルやアルバイトをいくつかやり、大学2年生の後半から本格的に司法試験の勉強を開始しました。大学卒業後に、旧司法試験に合格して弁護士になりました。弁護士を目指そうと決意したのは「白い巨塔」という小説がきっかけです。病院や医局の話が中心なのですが、医療事故を巡り患者側についた無名の若手弁護士が大学病院側の著名な弁護士と渡り合い勝利を勝ち取る様を読み、「自分の腕でクライアントの人生を背負って戦える弁護士の仕事は純粋にかっこいいな」と感じ、弁護士を目指すことにしました。

森・濱田松本法律事務所に入所後は、様々なクライアントを担当してきました。大事にしていたことは、どの案件も、公平に、実直に取り組むこと。顧客がどんな方でも助けを求めているクライアントであることに変わりはありませんから、来るもの拒まず対応してきました。とにかく忙しかったので大変ではありましたが、楽しくやりがいのある日々でした。

休日の過ごし方、リフレッシュ方法はありますか。釣りは今でもなさっていますか?

今でも釣りやアウトドアを楽しんでいます。どんなに忙しくても時間をつくって伊豆大島などへ遠出をして、船に乗るようにしています。
個人的に釣りは仕事に通じるところが多いと感じています。魚を釣るという明確な目標に対し、海のコンディションなどの変動条件を考慮して、仮説戦略を立てる。すると、狙った獲物が取れる可能性が高まる。とはいえ、どれだけ準備をしても全く取れないこともあります。そういったゲーム性の高さも面白い。一方で、筋トレなどコツコツ積み上げていくものは性格的に向いてないようで、全然続かないですね(笑)。

プレシード期からシード期のスタートアップへメッセージをいただけますか。

自分が好奇心を掻き立てられることを実行することが、一番良いと思っています。人生は一度きりです。明確にやりたいことがあるなら、そのために何をすればいいかを考えて実行するだけ。

それでも、うまく進まない時はつらいものです。私も必死にもがいて行動しています。起業をした後も色々と悔しい思いをしましたが、軸をぶらさずに目的の達成に向けて、現状の課題に向き合って解決し前に進んで行くしかありません。そうやって一歩一歩、着実に進めていって、気づいたら目的地に着いているものなのだと思います。

最後に、これからつくりたい世界観と、読者へ一言お願いいたします。

当社のミッションである「全ての契約リスクを制御可能にする」という言葉どおり、契約のリスクがマネジメントされている世界をつくりたいと思っています。契約トラブルが減れば、安心して事業を前進させられる企業が増える。私たちの事業は単なるDXではなく、契約リスクを可視化し、コントロール可能な状態へ導くこと。その結果、あるべき権利が適切に守られ、不測の事態を防ぐことで、より豊かで信頼に満ちた経済社会を目指していきたいと考えています。テクノロジーの力で世界を変えていきたいという想いのある方とぜひご一緒できればと思います。