私たちが健康診断などでよく目にする心電図は、100年以上も前に開発された検査であることをご存知だろうか。
人体の基本的な反応を利用し、シンプルにつくられた検査だからこそ、今もなお医療現場で使われ続けている心電図。しかし、誕生から100年もの時が経ったにも関わらず、検査の方法や使用機器には大きなイノベーションが起きていなかった。
そんな心電図の領域で、特に心臓病の診断時に行われることの多い長時間心電図について、AIを活用したソフトウェアソリューションを開発したスタートアップがある。株式会社カルディオインテリジェンスだ。同社の代表は、自身も難病専門の医師として活躍する田村 雄一(たむら・ゆういち)氏が務めている。今回、田村氏にインタビューを実施した。田村氏が開発した「SmartRobin® AI シリーズ」の仕組みや開発に至るまでの経緯、起業理由、今後の構想について詳しく語っていただいたため、ロングインタビューとしてお届けしたい。
AIで長時間心電図を効率化。「SmartRobin® AI シリーズ」とは
改めて、カルディオインテリジェンスの事業内容を教えてください。
弊社は、医療分野で独自のプロダクトを研究開発し、事業を行うスタートアップです。心臓を意味する「カルディオ(cardio)」と、人工知能を意味する「Artificial Intelligence」という言葉を組み合わせて社名に使っている通り、心臓病の診断精度や診断効率の向上に貢献可能な、AIを活用した「長時間心電図解析ソフトウェア SmartRobin AI シリーズ」を展開しています。
心電図というと、健康診断で行われるような短時間の検査を思い浮かべる方も多いかもしれません。私たちが対象としているのは、そのような短時間の心電図検査ではなく、24時間から2週間の長時間にわたって行われる心電図です。
長時間心電図を実施する際、これまではどのような課題があったのでしょうか。
検査結果を読み解く医師や専門技師に大きな作業負担がかかっていました。
そもそも長時間心電図は、短時間の検査や1回の診察では見極めることが難しい症状を発見するために行う検査です。しかし、例えば24時間の心電図をとったとすると、その結果を紙で印刷した場合、約2~3kmほどの長さに達するような膨大なデータが集まってきます。医師や専門技師は、そうしたデータをすべてチェックして症状の有無を判別しなければなりません。それゆえ、検査結果を読み解くだけでも、最低30分から1時間の時間を要します。さらに、より正確な検査結果を出すためには、専門知識や経験が求められます。
「過去の事例や知見を踏まえて膨大なデータを処理し、結果を導き出す」というのは、AIが得意とする点ですね。AIを活用した長時間心電図の解析ソフトウェアを開発したのは、医療現場の負担を減らすためということでしょうか?
そうです。AIは診断を担うことはできませんが、医師が診断結果を出すためのサポートはできます。長時間心電図においてAIをフル活用し、心電図波形で病気が表れている箇所と正常な箇所を分別、怪しい部分だけを人間がチェックできるようになれば、医師や専門技師にかかっていた大きな負担を減らすことができると考えました。
医師や専門技師に時間的なゆとりができ、検査が行き届いていなかった潜在的な心臓病患者をも救えるようになるはずです。国内の心臓病患者の数を減らし、より多くの方が健康で長生きできる社会の実現につながればという想いを胸に、私たちは「SmartRobin® AI シリーズ」をお届けしています。
ひとくちに心臓病と言っても、不整脈や狭心症など、心臓にまつわる病気はさまざまなものがあるかと思います。「SmartRobin® AI シリーズ」では、具体的にどのような病気を発見できるのですか?
現在は、「心房細動」という不整脈の一種を、95%以上の高精度で検出することが可能です。心房細動は国内で約100万人が罹患していると推定されており、動悸や息切れ、倦怠感などの自覚症状が現れるだけでなく、最悪の場合は脳梗塞を引き起こして死に至る可能性もある、命を脅かす病気の一つです。
ただ、早期に発見して治療することができれば、高い確率で最悪の事態を防げます。しかし、日本では、心房細動の潜在患者数が、罹患者数に加えてさらに100万人いるという試算もあるんです。脳梗塞になって後遺症が残ってしまうと、その後の生活で介護が必要になることもありますから、健康寿命を伸ばすという意味でも潜在患者の発見は大きな課題なのです。
ところで、心電図自体は、かなり昔からある検査方法ですよね。心電図において、これまでAIが使われてこなかったのはどうしてですか?
実は、AIが全く使われてこなかったわけではないんですよ。AIは言葉の定義が広く、いわゆる「自動判定」という意味で言えば、1970年代から80年代には、自動判定機能がついた心電図検査は実現していました。ただ、早いうちから自動化がなされていたからこそ、最近までそれ以上のイノベーションは起きていなかったんです。「心電図にディープラーニングを組み合わせて診断に活かす」という研究開発が世界で活発化し出したのは、ここ数年のことです。
貴社製品の強みは、どのような部分にあるのでしょうか。
「SmartRobin® AI シリーズ」は、長時間心電図の解析を高精度で行える点を強みとしています。先ほど世界で「心電図×AI」の研究開発が加速しているとお話しましたが、その多くは短時間心電図を対象としており、データ取得が難しい長時間心電図に取り組んでいるところは限られています。弊社はもともと大学発ベンチャーのため、大学内に蓄積されたデータや技術を用いながら、プロダクトの研究と開発を進めることができました。そういった点は、かなり大きな強みになっていると考えています。
あらゆる病気と検査機器に対応可能なプラットフォームを目指す
「SmartRobin® AI シリーズ」の事業アイデアにたどり着いたきっかけを教えてください。
私自身が心臓の専門医で、長いこと変わらない心電図の仕組みに課題を感じていたことが大きなきっかけです。私は2004年から医師として仕事をしていますが、特に長時間心電図については、この20年間で使用する機材も検査結果の判定の仕方もほとんど変わっていないんです。変わったところと言えば、データの記録媒体がカセットテープからSDカードになったくらいで。イノベーションが全く起きておらず、効率化もできていない。ここにAIを入れることで、もっと長時間心電図にまつわるさまざまな業務を効率化できるのではないかと思ったことが、「SmartRobin® AI シリーズ」を生み出す原体験となりました。
事業アイデアをひらめいてからは、お一人でプロダクトの研究開発を進めていかれたのですか?
いえ、私はあくまでも心臓をはじめとした循環器を専門とする医師で、人工知能についてはそこまで詳しくありません。そのため、中学時代からの友人である立命館大学 情報理工学部の谷口 忠大教授に力を貸してもらいました。谷口教授とともに、まずは「ディープラーニング技術を活用した心電図の自動化」や「ディープラーニング技術による診断精度の向上」について研究を深めていきました。
研究で特に苦労したことは、何かありましたか?
大きな苦労はありませんでしたが、研究の中で得た気づきをもとに、開発するプロダクトの方向性を若干修正したことはありましたね。
研究をスタートさせた当初は、AIを使ってあらゆる心臓病を一気に判別できるシステムがつくれるだろうと思っていたんですよ。でも、AIについて知れば知るほど、学習データの質と量が大切だということがよく分かってきました。それはつまり、学習データの量を確保することが難しい希少な病気については、診断をアシストするAIの実装が困難だということです。
その事実に気がついてからは、100種類を超える心臓病を一気に見つけることが可能なプロダクトの構想を一旦諦め、まずは患者数が多く、患者さんに還元できるものが大きい病気の診断にターゲットを変更しました。数ある心臓病の中でも、潜在患者を合わせれば200万人以上の患者数がいる心房細動が条件に合致すると判断し、まずは心房細動のスクリーニング機能を実装することに決めました。
プロダクトを開発するうえで、大切にしたことを教えてください。
大きく二つのポイントを大切にしてきました。一つ目が、仕組みの中に「AIにしかできないこと」も組み込むという点です。医療従事者の仕事をただAIに置き換えただけのプロダクトにはしたくありませんでした。AIがあるからこそ、人間が見過ごしていた病気の発見につながるようにしたかったんです。また、これまで人間がなんとなく経験で判断していたものを、AIによって根拠づけられるようになれば、医療の発展にも寄与できる可能性が高いと考えていました。そうしたシステムを構築できてこそ、AIを使う意義がある。そのような思想を大切に構築してきました。そして、まさにこの思想を反映したプロダクトを新医療機器として開発し、現在承認申請を進めています。この新医療機器は、心房細動ではない正常(洞調律)の心電図波形から、心房細動の兆候を検出できる、つまり心房細動の発作を起こす可能性がある患者さんのスクリーニングに役立つ機器になっています。
また、現場で本当に役立つプロダクトをつくるという点も重視しました。AIを使ってシステムを組み上げれば、それだけで良い製品ができるかというと、そうではありません。昔から使われてきたアルゴリズムのほうが優れている場合もありますし、AIを使ったほうがより便利な仕組みをつくれる場合もありますから、その見極めと選択が肝心です。弊社はそうした見極めをしっかりと行いながら、なおかつ多くの医療関係者に現場での活用をイメージしていただけるような製品づくりにこだわって開発を進めてきました。
最終的に「SmartRobin」のプラットフォーム化を目指しているのも、現場での活用のしやすさを強く意識してきた結果なんです。
プラットフォーム化について、もう少し詳しく教えていただけますか?
「SmartRobin® AI シリーズ」は、現在は心房細動に特化した解析ソフトウェアとなっていますが、いずれは多様な病気に対して使用できるプロダクトに拡張させていきたいと考えています。
また、検査に使用するデバイスについても、特定のものに限るのではなく、あらゆるデバイスに「SmartRobin® AI シリーズ」を対応させていくつもりです。心電図検査で用いる機器については、すでにさまざまなメーカーの心電図計に対応させています。
どのような検査機器を使っても、多様な病気の診断補助に使うことができる。そんな柔軟性の高いプラットフォームを目指して、今後も研究開発を進めていきたいと考えています。
医療業界では、そうしたプラットフォーム構想を持つソフトウェアは珍しいのですか?
そうですね。医療機器メーカーはどうしてもハードの性能を重視するものですし、ソフトウェアを開発しても、特定のハードにしか仕様が対応していないというものも多いんです。各メーカーのデバイスとソフトウェアの間に互換性がないために、せっかく便利な製品が登場しても、勤め先の病院で使っている医療機器と互換性がないからと、導入を諦めざるを得ないケースも発生します。
そのような課題が業界内に散在しているからこそ、弊社はユニバーサルなソフトウェアソリューションの提供にこだわっている側面もあるのです。
田村さんは、大学での研究成果を踏まえてプロダクトを開発されました。大学で研究した後、どこかの企業とタッグを組んで製品リリースにこぎつけることもできたかと思うのですが、ご自身でスタートアップを立ち上げたのはどうしてですか?
業界の中でソフトウェアソリューションの開発・構築は優先度が低く、力を入れている企業が少なかったという点が大きな理由です。自分たちでどのようなメーカーの製品にも対応したプロダクトをつくったほうが、世の中に広がっていくのではないか。そう思ったことで、自ら起業する道を選択しました。
友人の死をきっかけに医学の道へ。患者目線で課題解決に奔走
田村さんが医師を目指した理由を教えてください。
高校時代、仲の良かった友人が脳腫瘍で亡くなったことが、医学の道を志す大きなきっかけになりました。当時、私は他の友人たちとともに彼が闘病する姿を間近で見ていたのですが、だんだん身体が動かなくなってきても、彼は決して諦めることなく、希望を持って闘病生活を送っていました。友人が前向きに病気に打ち勝とうと頑張る姿を見て、患者さんを支える医師という職業は非常にやりがいのある仕事だと感じるようになりました。
もともと中学生のころから、何か新しいものをつくる仕事に就きたいと思っていたのですが、高校時代のこの経験をきっかけに、医師を目指すことに決めました。
心臓の専門医として、「肺高血圧症」という病気を専門分野に選んだのも、今お話した友人の闘病と死という原体験が影響しています。肺高血圧症は、100万人に1~2人が発症する難病で、男性よりも若年の女性のほうが発症する確率が高いと言われています。最近では良い薬も開発されているため予後は改善してきていますが、治療を行わなければ診断から約3年で死に至ってしまうかもしれない、命の危険の大きい病気です。この先も生きていきたい、夢や日常生活を諦めたくないと切に願う若い患者さんたちを助けたい。肺高血圧症の患者さんの姿が友人の闘病と重なり、この病気を治療できる医師を目指そうと勉学に励みました。
医師になられた後、難病患者の診療に専念するだけでなく、患者の医療アクセスの課題解決に奔走されてきたと伺いました。
そうなんです。肺高血圧症の専門医として診療に携わる中で、専門医の少ない難病の患者さんは、日々の生活の中で何か気になることがあったとしても、こまめに診察を受けることが難しいという事実を目の当たりにしました。例えば私の外来には、わざわざ北海道から診察を受けに来てくださる方がいます。そういう患者さんに対しては、私としても気軽に「また来週来てください」とは言えません。患者さんのほうでも、少し具合が悪くなったとしても、すぐに診察を受けに行くことができないもどかしさがありました。
そうした課題をいつか解決せねばと思っていた矢先、2011年に東日本大震災が発生して。当時、難病の患者さんにとっては、単にひどい地震が起きたというだけでなく、薬などの医療資材が手に入りづらくなったりして、ともすると命の危険が生じる危機的な状況でもありました。患者さんに、医療機関の側からいかに薬や医療アクセスの情報を届けるか。それを考えたときに思い至ったのが、災害発生直後から問題なく使うことができていたTwitter(現・X)などのオンラインツールでした。私たちもすぐさま専門医への相談方法や薬の入手可能経路などをTwitterで広報した結果、ライフラインの一つとしてITを活用する大切さや「医療×IT」の可能性に気がついたんです。
その経験があったうえで、私個人としてもデジタルヘルスに深くかかわるようになっていきました。
デジタルヘルスの領域では、どのような取り組みをされたのですか?
具体的には、2015年に難病専門の遠隔医療システムを立ち上げました。今でこそ、コロナ禍をきっかけにオンライン診療が注目されていますが、その少し前から、クラウド上で心電図を患者さんから送ってもらったり、気になる症状を医師とチャットで相談できたりする仕組みを構築していました。
ただ、このシステムを手がける中で、やはり個人の努力に頼ってしまう仕組みの限界にぶち当たってしまって。いくらチャットやクラウドを使って遠方の患者さんに対応しやすくなっても、患者さんの相談に乗り、一つひとつの対応をしなければならないのは医師自身です。医師の負担は大きく増えてしまいます。医師の個人的な努力に依存するのではなく、持続可能な形で救える患者数を増やす仕組みをつくれないものかと考える中でたどり着いたのが、現在の事業にもつながる「AI」の活用だったのです。
海外展開とIPOを目指して、取り組みを加速中
ここからは少し、貴社のことを伺っていければと思います。まず、貴社にはどのようなカルチャーがありますか?
スタートアップというと「若いメンバーがワイワイと元気に運営している会社」というイメージを持たれる方も多いと思いますが、弊社はそうしたスタートアップ像とは少し異なり、わりと落ち着いた雰囲気のある組織だと思います。男女比は1:1で、エンジニアとしてキャリアを重ねてきた方から医療現場の経験者まで、多様な経歴を持つメンバーが活躍中です。
採用活動において重視するポイントはありますか?
採用候補者の皆さんが弊社を志望した理由と、弊社がその方に提供できる環境がマッチしているかという点は、重きを置いて確認をしているかもしれません。志望理由と言っても、別に綺麗にまとまった内容をお話しいただく必要はなくて。弊社のことを深く知っていただく中で、何か一つでも刺さるものがあったかどうか。そこをお聞きしたいと考えています。
例えば、現在営業として活躍中のあるメンバーは、前職で心房細動の治療薬をつくっていた際、そもそも病気の発見が難しいことに大きな課題を感じていたそうです。そのような課題意識があったからこそ、弊社の事業に可能性を見出し、より多くの医療機関に製品を使っていただくべく力を尽くしてくれています。
あるいは、エンジニアとして医療機器に携わってみたいという成長意欲でも構いません。何か一つでも良いので、「なぜカルディオインテリジェンスなのか」という志望動機を強く持って入社してきていただけると、入社後も日々目の前の仕事を楽しみながら、活躍していただけるように思います。
これまでの資金調達については、いかがでしたか?
創業直後からコロナ禍になったこともあり、弊社の資金調達はどのラウンドも大変でした。昨今世界中でスタートアップが「冬の時代」に突入したと言われていますが、日本でも2020年初頭から資金調達が難しい時期が続いていますよね。弊社も資金調達が必要な時期がまさにその時期と被ってしまって、投資決定までもう少しのところで、話がすべて白紙に戻ってしまったこともありました。
そのような経験もあったからこそ、今では自分たちがやるべきことをやり切った後は、「うまくいく時も、いかない時もある」と割り切るようにしています。最終的にはご縁のある投資家さんとつながって、落ち着くべきところに転がっていく。そんな風に捉えながら、これまでの資金調達を乗り越えてきましたね。
今後の展望についても教えてください。
今後は、海外展開とIPOに向けた準備に力を入れていきたいと考えています。
海外展開については、海外メーカーとのタイアップなども検討しながら、近い将来にはグローバル進出を叶えられるよう準備を進めているところです。アメリカやヨーロッパといったAI医療機器のニーズが高い市場はもちろん、インドネシアなど医療の提供に地理的な課題を抱えている地域への展開も見据えています。先進国も発展途上国も関係なく、弊社の製品と親和性の高い国やエリアに対して、「SmartRobin® AI シリーズ」をお届けすることができればと考えています。
また、IPOについては2026年には実現したく、現在は社内のさまざまな体制を整備中です。私もまだまだ勉強中ですが、会計などの体制をしっかりと整えながら、いずれはIPOを実現してパブリックカンパニーへと成長することができればとビジョンを描いています。
事業開発・運営では、「顧客とニーズの明確化」が何よりも大切
プレシード・シード期のスタートアップに、応援メッセージをいただけますか?
プレシード・シードの時期は、やはり大変ですよね。ですが、それでもなお、スタートアップを自分たちでやる意義は大きいと私は感じています。
というのも、普通に企業の中で働いているだけでは、特定の分野の経験しか積むことができません。しかし起業すれば、自分たちのつくった製品・サービスを世の中に届けるための全てのプロセスを経験することができます。お客様に製品・サービスを届けるための資金を集め、サプライチェーンをつくり、システムをつくっていく。このようにビジネスの全体を動かす経験は、スタートアップを立ち上げなければ得られないものだと思います。
僭越ながら一つだけ、私が大切にしていることをアドバイスとして共有させていただくとすれば、プレシード・シード期のみなさんには特に「最終的な顧客は誰か」「その顧客が喜ぶことは何なのか」ということを深く考えていただきたいです。私も事業を運営する際、医療現場のどのような医師が「SmartRobin」を使い、どんな機能があればさらに先生や患者さんが喜んでくれるのかをいつも考えています。
どこの、どういう人が、どのような機能やサービスに喜んでくれるのかを具体化することは本当に大切です。おそらく、投資家からも似たような話を聞くことが多いと思うのですが、私自身、自分で事業を作り上げてきた数年間を振り返る中で、顧客と顧客ニーズの明確化の大切さを実感しました。目の前に片づけなければならないことが山積みかとは思いますが、事業のスケールを目指すうえで非常に重要なポイントですので、今お話したことをぜひ強く意識していただければなと思います。
最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。
スタートアップでは、本当にさまざまな役割を担うことが可能です。例えば、弊社では営業とマーケティングを分けておらず、一体化した業務を行っています。ある程度の規模や社歴のある企業であれば、きっと営業活動は営業部門で、製品の認知獲得や理解促進に向けた戦略立案と実行はマーケティング部門で、と業務を細分化して担当していくことでしょう。しかし、スタートアップでは一人二役、三役を担うことが当たり前。だからこそ、より多くの経験値を得ることができると思います。それはひいては、より俯瞰した視点からPDCAを回す経験ができるということであり、会社とともに自分自身もかなり速いスピードで成長させることができるということです。
そのような環境に対して、「たくさんの役割を担わなければならない」と後ろ向きに捉えてしまう方は、もしかするとスタートアップへの転職を今一度考え直した方が良いかもしれません。
逆に言えば、多くの役割を担うことにポジティブな気持ちになれる方は、きっとスタートアップで働くことが向いていると思います。顔が見える距離にいるメンバーと、同じ方向を見て協力し合いながら、会社が目指すビジョンの実現に向けて高速で進んでく。そのような経験をしたいと少しでも思っているのなら、ぜひスタートアップの世界に足を踏み入れていただけたらなと思います。
注目記事
AIキャラクターが暮らす「第二の世界」は実現できるか。EuphoPia創業者・丹野海氏が目指す未来 Supported by HAKOBUNE
大義と急成長の両立。世界No.1のクライメートテックへ駆け上がるアスエネが創業4年半でシリーズCを達成し、最短で時価総額1兆円を目指す理由と成長戦略 Supported by アスエネ
日本のスタートアップ環境に本当に必要なものとは?スタートアップスタジオ協会・佐々木喜徳氏と考える
SmartHR、CFO交代の裏側を取材。スタートアップ経営層のサクセッションのポイントとは?
数々の挑戦と失敗を経てたどり着いた、腹を据えて向き合える事業ドメイン。メンテモ・若月佑樹氏の創業ストーリー
新着記事
AIキャラクターが暮らす「第二の世界」は実現できるか。EuphoPia創業者・丹野海氏が目指す未来 Supported by HAKOBUNE
防災テックスタートアップカンファレンス2024、注目の登壇者決定
大義と急成長の両立。世界No.1のクライメートテックへ駆け上がるアスエネが創業4年半でシリーズCを達成し、最短で時価総額1兆円を目指す理由と成長戦略 Supported by アスエネ
日本のスタートアップ環境に本当に必要なものとは?スタートアップスタジオ協会・佐々木喜徳氏と考える
Antler Cohort Programで急成長の5社が集結!日本初となる「Antler Japan DEMO DAY 2024」の模様をお届け