2023年12月22日から2024年1月11日に発表されたスタートアップニュース、資金調達情報のうち、JP Startups(ジャパスタ)が注目する案件をピックアップしてお届けいたします。
編集部コメント
早いもので、2024年がスタートして約2週間が経った。今週のスタートアップニュース・資金調達情報は年末年始を挟んだこともあり、昨年の12月22日以降に発表された情報をもとにお届けする。
昨年12月22日から今年の1月11日にかけて資金調達を行ったスタートアップは、昨今のトレンドであるAIを活用し、サービスやプロダクトの提供を行う企業が多かった印象だ。契約書レビュー支援AIクラウド「LeCHECK(リチェック)」を提供するリセや、防犯カメラのAI画像解析を手がけるOpt Fit、AI電話オペレーターの開発を進めるPassionate Geniusなど、多数のスタートアップが資金調達を実施している。
全体としては上述のような傾向にあったが、今回は特に、業界や業務の構造変革に寄与する事業を行うスタートアップをピックアップ。シフト制労働者に着目し、シフト管理や労務管理に資するSaaSを通じて日本の労働環境の多様化を目指すクロスビットや、仲介業者を介さない不動産売買を実現する「すむたす」など、4社の事業概要と資金調達の内容を紹介する。
また、スタートアップニュースでは、老舗VCのニッセイ・キャピタルによるアクセラレーションプログラムの募集情報をお届けする。
スタートアップニュース
ニッセイ・キャピタルがアクセラレーション・プログラム「50M」第5期の開催を発表。参加者の募集を開始(2024年1月10日発表)
国内老舗VCのニッセイ・キャピタルが1月10日、同社の手がけるアクセラレーション・プログラム「50M(フィフティ・エム)」の第5期を開催すると発表した。「50M」は、創業前または創業から間もないスタートアップを発掘・育成する起業家支援プログラムだ。ニッセイ・キャピタルの保有するリソースを存分に生かした支援を受けられる点が特徴で、豊富なノウハウと資金力をもとに、参加者の事業立ち上げと成長を促進する。
特にファイナンスに関しては、参加者が資本政策の自由度を確保できる設計となっている点も特筆すべき特徴である。プログラムに採択されれば、まずは新株予約権付社債で500万円の投資が実行されるほか、事業の進捗に応じて、優先株式で4,500万円の投資も実行される可能性がある(シリーズS、ポストバリュエーション5億円)。また、プログラムを卒業しシリーズAとなった後も、累計35億円までの追加投資とさまざまな支援を継続的に受けることが可能。
「50M」は、不動産エージェントプラットフォーム「SHERPA」を運営するWANDYや家庭料理の配達サービス「つくりおき.jp」を運営するAntwayなどの成長企業を多数輩出している。
プログラムの概要と募集内容は下記の通り。元リリースはこちら。
プログラム概要
- プログラム期間:2024年3月中旬~2024年9月下旬予定
- DemoDay:2024年9月予定
※DemoDayに参加できるのは、シリーズSに到達または到達見込みの企業のみ - 採択企業はニッセイ・キャピタル内の50Mシェアオフィス(千代田区丸の内)に原則入居
- プログラム期間中は担当のベンチャーキャピタリストが日々メンタリングを行う。また、事業開発や拡大、資金調達の戦略などに関するセミナーも週に1回ほど実施される予定。さらに月に数回程度、事業進捗の報告ピッチや他社VCを招いた壁打ちイベントなども開催予定
- AWS、Google Cloud、HubSpot等の各種スタートアッププログラムの優待提供あり
募集概要
資金調達情報
【シリーズB】シフト管理業務のDXを実現、「らくしふ」を運営するクロスビットが約9億円の資金調達を実施(2024年1月10日発表)
シフト管理業務のDXを実現するSaaS「らくしふ」を開発・提供する株式会社クロスビットが、シリーズBで第三者割当増資による約9億円の資金調達を実施した。引受先はEight Roads Ventures Japan、ニッセイ・キャピタル、Salesforce Ventures、三菱UFJキャピタル。
クロスビットは、シフト制を採用する企業や団体、組織とそこで働く労働者に主眼を置き、シフト管理や労務管理、人件費の最適化などに資する複数のクラウドサービスを開発・提供している。具体的には、雇用主のシフト管理を効率化する「らくしふ」、パート・アルバイトに特化した労務管理サービス「らくしふ労務管理」、アルバイトやパート先を探す個人に向けた求人情報サイト「らくしふワーク」を運営。特に「らくしふ」はすでに2万件を超える事業所に導入されており、日本ピザハットや東急レクリエーションなど、大手企業の導入も多い。
同社は今後、「らくしふ」を中心に、シフト管理だけでなく採用や教育、人材評価の領域までサービスの幅を広げ、日本に多様な働き方をもたらすプラットフォームを目指している。その構想の実現に向け、今回調達した資金を新規事業の開発や既存事業の加速、ビジネスサイドの人材採用の強化、M&Aに充てる考えを示している。特に新規事業では、時給で働くシフト制の労働者の給与と評価に関するサービスの開発に着手する予定。また、「らくしふ」については、介護施設や病院など、さらに多くの業界・業種での導入先拡大を目指していくという。元リリースはこちら。
【関連記事】
「シフト」を切り口に日本の労働力不足という課題に挑む。株式会社クロスビット・小久保 孝咲氏インタビュー
飲食店や小売店、医療機関の現場では、パートやアルバイトなど働き手のシフト管理を未だに紙やExcelなどで管理しているとこ…
【シリーズB】LINEを活用したマーケティングプラットフォーム「MicoCloud」を提供するMicoworks、約35億円の資金調達を実施(2023年12月27日発表)
LINEを活用したマーケティングプラットフォーム「MicoCloud(ミコクラウド)」や、飲食店向けLINEミニアプリサービス「ミコミー」を開発・提供するMicoworks株式会社が、総額およそ35億円の資金調達を第三者割当増資にて実施したと発表した。今回のリード投資家はシンガポールの投資会社テマセクの参加にあるVertex Growthで、ジャフコグループ、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、ALL STAR SAAS FUND、Eight Roads Ventures Japanが引受先となった。同社はこれまでに約28億円を調達しており、今回の資金調達によって累計およそ63億円を調達したことになる。
Micoworksが主力事業として位置づける「MicoCloud」は、同社の発表によれば、2023年12月時点で1,000を超えるブランドに導入実績があるという。導入企業はToC向けにサービスを提供するところが多く、東京海上日動火災保険やパソナ、JR東海ツアーズ、アデコ、阪急阪神百貨店といった大手・業界トップ企業の導入も目立つ。
ちなみに、2022年2月時点では、「MicoCloud」の導入ブランド数は600ほどだった。そこから1年10ヶ月で1.6倍の導入ブランド数へと拡大した背景には、コロナ禍やポストクッキー対策の影響を受け、企業が生活者とのオンラインコミュニケーションに注力していることが理由のひとつとして挙げられる。
同社は今回調達した資金を用い、成長投資を実施する。具体的には、生成AI/ML技術のプロダクト実装を進めるほか、「MicoCloud」のマルチチャネル化、高いセキュリティ基盤への対応を進め、サービスの提供価値を高めていくという。また、今回のリード投資家であるVertex Growthの協力を得ながら、アジア地域を中心としたグローバル展開を見据え、プロダクトの機能開発や組織体制の強化を行う考えを示している。元リリースはこちら。
【シリーズC】個人間の不動産直販サービス「すむたす」を開発・提供中のすむたすが、13億円の資金調達を実施(2023年12月27日発表)
ブラックボックス化しやすかった不動産売買を透明化し、シンプルなプロセスで売主・買主の双方にメリットのある不動産売買サービス「すむたす売却」「すむたす直販」を運営する株式会社すむたす。同社が12月27日、シリーズCで第三者割当増資によって総額13億円の資金調達を実施したと発表した。今回の資金調達では、既存投資家のCoral Capitalがリード投資家となり、モバイル・インターネットキャピタル、農林中金イノベーション投資事業有限責任組合、環境エネルギー投資が引受先として参加した。これにより、同社の累計調達額は30億円を突破した。
日本における中古不動産の売買は、未だ不動産会社の存在感が大きい。それゆえ、中古住宅市場の透明性が低くなり、流通量の減少や物件の適切な評価が難しくなっている現状が国土交通省などによって指摘されている。(※)すむたすは、そうした不動産売買の仕組みの変革に挑む。独自の査定アルゴリズムを組み上げた不動産直販サービスを2018年より提供し、すでに物件の査定依頼数は累計で26,000件を突破、査定額も累計5,200億円を超えているという。
同社は今回調達した資金をもとに、関西・東海エリアにサービスを展開し、支社の設立と採用強化を行うと発表している。また、サービスの利便性をさらに高め、不動産売買のすべてのプロセスをオンラインで完結させることも可能にしたほか、買取保証付きの仲介サービスも開始した。これらの取り組みを促進することで、2027年には国内不動産直接売却のNo.1プラットフォームになることを目指すという。元リリースはこちら。
※『国土交通省既存住宅市場の活性化について』令和2年5月7日 より
【シリーズD】家具のサブスクリプションサービスなどを手がけるソーシャルインテリアが約24億円の資金調達を実施(2024年1月11日発表)
「よいものを長く使う、循環社会の実現」をミッションに掲げ、家具のサブスクリプションサービスと、オフプライスマーケット、家具什器受発注プラットフォームを展開する株式会社ソーシャルインテリア。同社は1月11日、シリーズDで第三者割当増資と融資等により総額およそ24億円の資金調達を実施したと発表した。第三者割当増資による調達では、シンプレクス・キャピタル・インベストメントがリード投資家に。さらにシグマクシス・インベストメント、AGキャピタル、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、ロッテベンチャーズ・ジャパン、みずほキャピタルらが引受先に加わっている。
ソーシャルインテリアは現在、三つの事業を展開している。一つ目が「オンライン販売事業」で、二つのサービスを展開。新品の家具や家電を必要なときに必要な分だけ利用できるサブスクリプションサービス「サブスクライフ」と、家具メーカーの遊休在庫や法人のリユース品が出品されているオフプライスマーケット「サブスクライフ オフプライス」をToC向けに提供している。
二つ目は「オフライン販売事業」で、法人向けの家具のサブスクリプションサービスを展開。また、オフィス移転から空間デザイン、家具選定までをワンストップでサポートする。三つ目は「業務管理クラウド事業」で、設計会社・販売店・メーカー向けに家具什器受発注プラットフォーム「ソーシャルインテリア 業務管理クラウド」を提供。設計会社などにとっては家具の選定から見積もり、発注までの工数を大幅に削減でき、家具メーカーにとっては、自社製品のPRやセールスに関連する業務を効率化できるサービスとなっている。
同社は今回調達した資金により、個人向けの家具のサブスクリプションサービス「サブスクライフ」及び、法人向けサービスの「ソーシャルインテリア オフィス構築支援」のシェア拡大に加え、家具業界向けのプラットフォーム「ソーシャルインテリア 業務管理クラウド」による家具業界のDX化に向けた施策を加速するという。元リリースはこちら。
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