2023年12月8日から2023年12月14日に発表されたスタートアップニュース、資金調達情報のうち、JP Startups(ジャパスタ)が注目する案件をピックアップしてお届けいたします。
編集部コメント
今週は、ペットやAI、医療、VR、シニアなど、多様な領域で事業を行うスタートアップが資金調達の情報を発表していた。
その中でも今回は、3社をピックアップ。気球による宇宙遊覧を目指す岩谷技研、テクノロジーを活用したファイナンスの仕組み構築でアフリカの小規模農家の所得向上を目指すDegas、生成AIを活用した検索SaaSを手がけるHelpfeelに注目し、各社の事業概要や資金調達の内容を見ていく。
また、スタートアップニュースは2件の情報をお届けする。一つ目は、マネーフォワードグループのHIRAC FUND2号ファンドが総額90.8億円でファイナルクローズしたというもの。二つ目は、世界最大級のプレシード投資家 Techstarsが、日本で初めてエクイティ方式による出資が付随したアクセラレーションプログラムを開催するという情報だ。国や東京都が力を入れるスタートアップ施策の一環で開催が実現した同プログラムは、世界市場を目指す起業家にとって大きな学びの場となる可能性が高い。ぜひチェックしてみてほしい。
スタートアップニュース
マネーフォワードグループのHIRAC FUND 2号ファンドが、総額90.8億円でファイナルクローズ(2023年12月13日発表)
株式会社マネーフォワードのグループ傘下にあるマネーフォワードベンチャーパートナーズ株式会社が12月13日、同社の手がけるHIRAC FUND2号投資事業有限責任組合(以下、2号ファンド)を総額90.8億円でファイナルクローズしたと発表した。
HIRAC FUNDは、テクノロジーの活用で社会課題の解決を目指すシード・アーリーステージのスタートアップを中心に投資を行うVCファンド。投資対象は国内外のシード・アーリーステージを中心としたIT / テクノロジー領域の未上場企業で、「DX」「Sustainability」「SaaS/Fintech」「Web 3.0」を重点テーマとして設定している。投資先と出資者のマッチングや営業支援など、投資先への一般的な支援も行っているが、「地域DX」をキーワードとした投資先支援も同ファンドの特筆すべき特徴。具体的には、地方の金融機関などと連携しながら地域DXに資する取り組みを行うことで、地域経済の活性化と投資先のバリューアップの両方に貢献している。
同社の発表によれば、2号ファンドには23の出資者が集まった。その顔ぶれは個人の投資家から金融機関、企業まで多様で、特に地方銀行が多い点に特徴がある。
同社は今後、投資方針を踏まえながら、スタートアップと地方を掛け合わせることで「投資先スタートアップの更なるバリューアップ」「地域金融機関にとっての事業機会の創出」「地方創生への貢献」を目指す。また、東南アジアを中心とした海外スタートアップへの投資などにも挑戦し、国内外でのスタートアップ支援に力を入れるという。元リリースはこちら。
世界最大級のプレシード投資家 Techstarsが、東京でエクイティ方式のアクセラレーションプログラム「Techstars Tokyo」を初開催(2023年12月12日発表)
世界13か国・36都市で活動する、世界最大規模のプレシードインベスターであるTechstars。2006年の設立以来、3,800社を超える企業に投資を行って19社のユニコーン企業を輩出してきた同社が、東京でエクイティ方式による出資を確約したアクセラレーションプログラム「Techstars Tokyo」を開催することが発表された。Techstarsがこのようなプログラムを日本で開催するのは、今回が初めて。さらに、アジア地域においては日本が唯一の開催都市となる。
「Techstars Tokyo」の開催が実現できた背景には、グローバルなスタートアップ輩出を目指した官民による活動が実を結んだことがある。具体的には、内閣府と経済産業省、東京都、日本貿易振興機構(以下、ジェトロ)が連携し、海外のVCやアクセラレーターを誘致。ジェトロの誘致活動によって東京への進出を前向きに検討していたTechstarsに対して、三井不動産がパートナーシップを締結し、出資や場の提供、ノウハウ・ネットワークの提供といった側面から支援することで、Techstarsによる日本初のアクセラレータープログラム実施が決定したという。
「Techstars Tokyo」は、日本のスタートアップのグローバル化に加え、外国人起業家による日本での起業を促し、国内におけるグローバル・スタートアップ・エコシステムの構築を目指す。
今回のプログラム概要は下記の通り。元リリースは、東京都によるものがこちら。ジェトロによるものがこちら。
プログラム概要
- 募集開始:2023年12月12日(火)
※2月13日(火)に、募集要項の説明を含むキックオフ・シンポジウムを開催予定。 - 募集対象:日本発で世界をめざす日系スタートアップならびに世界各国のスタートアップ
- 募集社数:12社
- 出資額:Techstarsの組成するファンドから1社あたり約120,000ドル
- プログラム期間:2024年夏(約3ヶ月間)
- 開催場所:東京ミッドタウン八重洲「イノベーションフィールド八重洲」
- プログラム内容:Techstarsのメンターネットワークを活用したビジネスモデルの検証・改善、ピッチトレーニング、デモデイなど
- 応募方法:Techstarsウェブサイトより申込み
資金調達情報
【ラウンド不明】気球による宇宙遊覧を目指す岩谷技研が4億円の資金調達を実施(2023年12月8日発表)
独自技術により宇宙遊覧が可能な気球の開発を進める株式会社岩谷技研が、第三者割当増資による4億円の資金調達を実施した。今回の引受先は、インキュベイトファンドやアサヒグループジャパン、横浜キャピタル、トヨタ紡績を含む14社。今回の資金調達により、同社のシードラウンドからの累計調達額は約20億円に達した。
岩谷技研は北海道江別市に本社を置く宇宙開発スタートアップで、「気球を使い、比較的安価なコストで誰もが宇宙の入り口に到達できる世界」の実現を目指し、研究開発や事業運営を行っている。気球による宇宙開発のアイデアは、代表の岩谷 圭介氏が北海道大学工学部在学中に生まれたもの。岩谷氏は在学中から宇宙遊覧用の気球に関する研究開発を進め、2014年頃に気球による宇宙実験や宇宙映像制作で事業化、2016年に岩谷技研を創業した。
同社は現在、宇宙に行くためのプラスチック気球の開発や機密キャビンの開発を行い、「有人宇宙遊覧用気密キャビン(特許第6932408号)」など、多数の特許技術を保有している。今回の資金調達に関する元リリースはこちら。
【ラウンド不明】アフリカの小規模農家の所得向上を目指すDegasが、9.7億円の資金調達を実施(2023年12月13日発表)
テクノロジーを活用し、貧困が深刻化するサブサハラアフリカ(※)の小規模農家の所得向上を目指すDegas(デガス)株式会社は、融資と第三者割当増資により、9.7億円の資金調達を実施したと発表した。
詳細な融資元・引受先は明かしていないが、投資家の一部には、アニマルスピリッツ1号投資事業有限責任組合やGlobal Catalyst Partners Japan2号投資事業有限責任組合、HAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUND (株式会社博報堂DYベンチャーズ)、ナント CVC3号あけぼの投資事業有限責任組合(南都銀行)、プライマルキャピタル3号投資事業有限責任組合らが名を連ねている。
Degasはこれまで、モバイルアプリ等のプロダクトや現地オペレーションを活かしたデータ収集、AIを駆使した与信判断により、従来は一般的な金融機関の融資対象とはならなかったアフリカの小規模農家に対してファイナンスを提供してきた。その規模は累計46,000軒にのぼり、2023年度は27,000軒にファイナンスを実行。アフリカ最大規模の農家ネットワークを築き、インターネット環境が不安定でも動作するシステムの開発やアフリカ圏の人々にも使いやすいUI/UXの設計、衛星データ解析を活用した農地分析手法の確立などを通じて、データドリブンな農家マネジメントプラットフォームの構築を行ってきた。
今回、同社は調達した資金を用い、「脱炭素事業のスケール化」と「マーケットプレイス形成事業」に注力する考えを示している。前者については、2022年より世界最大の食品・飲料会社であるネスレと提携。アフリカでのリジェネラティブ農業の手法確立を目指し、検証実験を実施している。カーボンクレジットやデータ分析の専門家の採用を行うことで、同実験の組織体制を強化し、アフリカの小規模農家の新たな収入源となる質の高いカーボンクレジットの大規模発行を目指していくという。
後者の「マーケットプレイス形成事業」については、同社が独自で形成した与信情報をもとに、アフリカの農家への融資誘致を強化する。第三者からの機会提供やその結果を可視化したプロダクト開発を拡大するとともに、事業のパートナー拡大を行い、アフリカ地域における学業ローンや農業機械のリース、スマートフォン契約などさまざまな商品を扱うマーケットプレイスの形成を目指していくという。元リリースはこちら。
※ サブサハラアフリカ:アフリカ大陸において、サハラ砂漠より南に位置する地域の呼称
【シリーズD】生成AIを活用した検索SaaSを手がけるHelpfeelが総額20億円を調達(2023年12月11日発表)
生成AIを活用した検索SaaS「Helpfeel」の開発・提供を行う株式会社Helpfeel。同社は12月11日、シリーズDで総額20億円の資金調達を行ったと発表した。今回参画した投資家は、グロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社、インベストメントLab株式会社、One Capital株式会社、Salesforce Ventures、トレイダーズホールディングス株式会社の5社。今回の調達を経て、Helpfeelの累計調達額は約33億円に達した。
Helpfeelは、検索SaaS「Helpfeel」を通じて、企業やサービスに関する問い合わせ対応業務の削減や社内情報の検索における業務効率化を実現してきた。同社の発表によれば、2023年11月には「Helpfeel」の導入社数が200社を突破したという。
また、数年前から手がけてきた機械学習の研究成果も功を奏し、3月にはChatGPTを活用したFAQ作成自動化ツール「Helpfeel Generative Writer」をリリース。さらに検索キーワードのデータによるVOC分析やマニュアル検索を可能とする「Helpfeel User Manual Search」も提供し、「情報の検索」という分野で企業の業務効率化に大きく貢献している。
今回調達した資金は、「Helpfeel」の機能拡張やプロダクト開発、人材採用、セールス・マーケティング組織の拡充と体制強化に活用するという。元リリースはこちら。
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